作:しにを
※ 本作品は「Moon Gather」の阿羅本さんの連作シリーズ 通称ショタ志貴物の最終章『Forsan et haec olim meminisse invabit.』の後のお話と して書いております。 未読の方は四編からなる諸作品をまず堪能された上で、お出で下さい。 ただし、あくまでパラレルな話である点(いわゆる俺続編)である事を明記致します。
「なるほどな」 開口一番の言葉だった。 志貴は、その知的な風貌をした女性の視線に絡め取られながら、心細げに立 ちつくしていた。 その女性はまったく未知の存在ではない。 むしろ説明を受けすぎたが故に、志貴の頭の中で恐怖心を起こさせる程の虚 像が出来上がっていた。 そもそも魔術師という言葉の響き自体が、日常と隔離したこなれの悪さを覚 えさせる。 まして、ここは彼女の結界の中。 志貴は厳重な手順を経てただ一人で訪れる事が許されており、もしも何かが あっても外からの助けは来ない。 肉体上は幼さの残る少年である遠野志貴が、怯えを感じても決して無理から ぬ事であっただろう。 この得体の知れぬ廃墟のような建物に。 妖しげな器物と本物と見紛うばかりの精緻な人形のパーツが散財する部屋に。 その主たる魔術師にして稀代の人形師、蒼崎橙子という人物に。 挨拶もそこそこに冷たい、魂まで射抜くような瞳で志貴を見つめていた橙子 は顔を上げ、眼鏡をかけた。 それだけで橙子から漂っていた冷気が消えた。 志貴は初めて蒼崎橙子が、非常に綺麗な女性である事に気がついた。 慌てて志貴が口を開こうとすると、橙子は掌を見せて制した。 「いいわ。全て説明は受けているから。 それよりも見せてくれるかしら。志貴君が本物だという証拠」 「証拠?」 「ええ。君が私の妹と浅からぬ因縁を持っていたという証」 志貴は頷く。 手にしていた鞄からそれを取り出す。 その仕草を橙子はじっと見つめていた。 そっと宝物を取り出すが如き態度、心から大切だと思っているものに触れる 時に無意識に表れる様を。 「これです。これが先生に貰った眼鏡です。 長いことお借りして、その、ありがとうございます。 先生にはこれは姉さんに会った時に返すように、って言われていました」 志貴はそう言うと魔眼封じの眼鏡を橙子に差し出した。 橙子は戻ってきた自分の持ち物を黙って受け取り、しげしげと眺める。 「なるほど、稚拙な工作だこと。実に……らしい。 何か言っていた、妹は?」 「はい、姉さんに会ったら伝えて置いてって」 「ふうん?」 「相変わらず……」 幾分の緊張を込めて言葉を口にしていて、初めてその内容に思い至ったとい うように志貴は言葉を止めた。 「どうした? 相変わらずの続きは何かな?」 「……偏屈なことばっかりやってると、嫁き遅れるわよって」 一気に言って志貴は顔面を蒼白にして立ち竦んだ。 一瞬宿った鬼相、志貴ではなくその奥を睨む顔に震え上がる。 パキッ。 何かが折れる妙に甲高い音がした。 橙子の手が震えている。 その手の中のものが二つに折れている。 しかし、煙草が折れてそんな異音を発するものだろうか。 「そうか、そんな事を言っていたのか、君の先生は……」 たっぷり五分間は経った後、志貴の体感時間としては優にその十倍以上は経 過した後で、橙子は冷静さを取り戻して会話を再開した。 「持っていなさい、まだ」 「……? はい」 何故か再び返還された眼鏡を取り合えず志貴はしまった。 怯えて自分を見る少年に、橙子は苦笑を浮かべた。 「心配するな、受けた仕事はする。 誰一人文句をつけようのない出来でな。 魔術などと言う言葉にはあまり縁は無いかもしれないが、これはこれで極め てリアリズムに貫かれたものだ。その理法が狭い世界でのみ生きているだけで 無闇と怖れる必要は無い。 高度に発達した科学技術は魔法と見分けがつかないという言葉があるが、こ れはどちらがマジョリティかという事にすぎないかもしれん。 要は結果だろう。これでも、仕事自体にはそれなりの誇りも持っている」 折れた煙草を無造作に床に投げ捨て、新しい煙草に火を点ける。 ふぅと煙を吐く。 「何より、報酬が大きい。 単純に人形代としての破格の値段も、0を二つ程多くつけ間違えたのではな いかと眼を疑うほどだ。 タイミングもいい。いい加減に給料を払わんと何をされるかわからんからな」 後半は志貴にはいいささか意味不明であったが、橙子には自分の言葉で感じ 入る何かがあったようで、顔を僅かに顰め、独り言の様にさらに続ける。 給金など貰わずとも生きていけるだろうに、現に私など生まれてから一度も 貰った事は無いぞ、などと彼女の工房の唯一の社員が聞いたら卒倒しそうな事 をぼそぼそと呟く。 そして、脱線したなと視線を志貴に戻した。 「それ以外にもいろいろと裏に手を回して頂けるようだ。 まあ、そちらの因縁はどうでも良いが、必要とあれば使える手段が増えるの はありがたい話だ。 疑わしいほどに。 どう考えても、何かの罠かと思うほどの好条件すぎる。 もちろん、裏はきっちりと調べさせて貰った。 ああ、もちん問題は無し。でなければ、こんな処まで迎え入れんよ。 むしろ仕事の中身を知った事で恐ろしく興味が湧いた。正直、ただでも手を 突っ込みたいと思うくらいにな」 貰うものは貰うがねと言って、また煙を吐く。 どうにもその仕草は志貴に、良く知っている誰かを思い出させた。 期待と不安が半ばした表情の少年に、橙子は真顔で訊ねる。 「それより、聞かされていないか、私の事を? 教会関係者の情報なら相当酷いものだろうが、まあ半分は真実だ。 何を言われているかは知らんが、どのように言われているかは見当がつく。 それでも、一人でこんな処に来て、およそ真っ当でない処置を受けるのは、 不安ではないかね、遠野志貴クン?」 「聞かされました。……正直、怖いです。 でも他に手は無いし、先生にも橙子さんの処へ行くように言われました。 だから……」 「聞いたのなら、妹の事を持ち出すのは、逆効果だと知っていると思うが。 しかし、そんなに君にとって神聖視するような存在かね、あれは?」 「先生がいなければとっくに俺は発狂するか、命を絶っていたか……。 少なくとも先生がいなければ、全然ちがった存在になっていましたから」 「ふん。本性を知らぬから……、いや、それを隠し通した事こそに着目すべき かもしれん。少なくとも、ろくに縁もなかった少年の為に、私から魔眼封じを 強奪していくなど、およそ……、らしくない」 じっと志貴を見つめる眼。 さっきとは違って鋭くは無いが、どこか落ち着かなくさせる視線。 「確かに、こういう部分の嗜好は不本意ながら似ているか。雨に濡れた仔犬の 瞳は、さぞ心打つものだったろうな」 「仔犬?」 「こちらの事だ。 では、裸になってもらおう。何一つ体には身に付けるな」 「はい」 緊張して、しかし志貴は素直に従った。 いよいよ、義体とやらへの移し変えが始まるのかと思うと、ぶるぶると震え そうになる。 「ほう」 橙子が立ったままで次の指示を待つ志貴を眺める。 ゆっくりと周囲を回り、舐めるような眼で見つめる。 視姦という言葉を志貴が連想したほど。 視覚は充分と判断したのか、橙子は今度は志貴の体に触れてきた。 腕を撫でさすり、その筋肉のつき方に頷き、腿のラインを飽く事無く掌で触 れ味わう。 腕や脚とはいえ、そんな処に妙齢の女性の手が触れるのは恥ずかしかったが、 なんとか治療行為と思って志貴は耐え、ともすれば性的な方向に意識が向きそ うなのを必死で押さえていた。 しかし、橙子は屈み込んで体をくっ付くほど近づけ、今度は志貴の胸に白い 手を這わせ始めた。 脇腹を撫で、臍を指で突付き、大胸筋にそって手を動かす。 くすぐったく、そして触れられるだけでぞくぞくする感触。 何とか志貴は、身悶えしそうな体を抑え、口から声が洩れるのを防いだ。 気をそらそうとしても、志貴の周りにはいないタイプである橙子の顔が見え、 香水ではなさそうな、微かな官能を擽る香りに体が熱くなる。 それを知ってか知らずか、橙子の手が志貴の胸の先に触れた。 指が、乳首をかすめ、指の腹が柔らかくその膨らみを潰す。 「ああッッ」 思わず嬌声が洩れる。 驚くほどの快感が走った。 橙子は志貴の声に驚く様子も見せず、手をそこに留めて志貴の敏感な部分を ゆっくり指で弄りつづけた。 「橙子さん」 「何かね?」 「その、そんな処弄らないで下さい」 「何故?」 「何故って……」 弄られると変な気分になるからですとは言えない。 真っ赤になって口ごもる志貴に、橙子は意地悪い眼を向ける。 「言いたい事があるならきちんと言って貰わねば困るな。 まあ、嫌がるのなら止めよう」 「すみません。……ああッッ!!」 志貴は叫び声を上げて身を動かす。 しかし橙子は片手で志貴の肩を押さえて自由を奪う。 もう一方の手は、志貴の胸から離れてはいた。 そしてはるかに下へ動き、今は志貴の生殖器を握っていた。 「騒々しいな、志貴?」 明らかに笑いを含んだ言葉。 掌に、睾丸を乗せて転がしつつ、指で小さな陰茎を弄る。 器用にそんな事を橙子はしていた。 揺られて袋の中の小さい二つの球は触れ合い離れる。 指が幹を這い回るかと思うと、根元から皮だけを下へと引っ張る。 何より、橙子の手の感触が尋常でない刺激となっていた。 必然的に、どれほど志貴が意志の力で制御しようと悪戦苦闘しようとも、そ こは萎えるどころか、硬く大きく、明らかな性衝動の発現の姿を見せた。 それでも橙子は止めない。 いや、むしろより熱心に指を動かす。 少年の可愛い玉袋を軽い痛みが生じるギリギリまで握り締めて離し、その痺 れが残っているうちに、五本の指を志貴の逞しくなった陰茎に絡ませる。 単純なしごくだけの動きではない。 まるで手だけが海洋生物にでも変わったように、指のそれぞれが勝手に這い 回り舐め擦るかのような刺激を志貴に与える。 掌の筋肉が動き、吸いつくように志貴の皮膚に張り付く。 「ああ……、や、だ、こんな……」 「ふふ、どう見ても嫌そうではないぞ」 手の動きはそのままに、橙子の顔が近づき、耳元で囁く。 その息が耳を擽る感触。 そして橙子は志貴の唇を奪った。 甘い、大人の女の人のキス。 喘ぎ声を吸われ、吐息を注ぎ込まれる。 柔らかい舌が志貴の体を中から溶かしていく。 何回、射精したと思っただろうか。 いや、確かに何度も絶頂を迎えている。 それなのに、ペニスの先は先走りの粘液をとろとろと分泌し、鈴口を擦り震 わせる橙子の指を濡らすだけで、一向に精液を放出しようとはしなかった。 橙子が何かをしているからだとは思うが、志貴にはわからない。 ただ、志貴は乱れ、耐え切れぬ声を洩らすだけ。 「可愛いな、志貴」 また、唇が触れ、舌を潜らせる。 志貴には自分の舌がどうなっているのかわからなかった。 こね回され、いたる所をまさぐられ、そして誘い込まれて橙子の唇に挟まれ ねぶられる。 窒息するような甘美な息苦しさの果てに、志貴の唇は解放された。 深く酸素を求め、喘ぐ。 それを見つめ、僅かに橙子の手が捻られた。 「っああ」 硬くなっていた志貴のペニスの皮が根元へと引っ張られる。 先まで被っていた包皮がにゅると捲られ、ピンク色の亀頭が大きく顔を覗か せる。 快感と痛みに志貴は呻き声をあげる。 その声を聞き、橙子の目は明らかな愉悦の色を浮かべる。 「奇麗なものだな。食べてしまいたいくらい可愛いよ」 好ましそうにその大人のものとは違うペニスを見つめる。 その言葉を実行に移すかのように、橙子はしゃがんでいた格好から完全に膝 をつき床に屈みこむ。 志貴のペニスに顔を近づける。 「いい匂い」 ちろと舌先が軽く志貴に触れる。 そして、手をゆっくりと志貴の幹に沿って動かした。 そうしながら、少しずつ亀頭を覆う皮を後ろに後退させていく。 「やだ、痛いよ……」 「もう少し、ふふ、匂いが強くなってきた」 亀頭の雁首の縁が見える。 ぎゅっと橙子の手が後ろへ動く。 「ああああッッッ………」 にゅるんと幼いペニスを守る包皮が完全に捲れ上がる。 同時にびくびくと張ちきれそうなペニスが動き、一瞬膨れ上がった。 ぴゅぐゅくびゅくと、志貴は迸らせた。 勢い良く、触れんばかりに近づいていた橙子の端正な貌に弾ける。 「あ……」 悲鳴と陶酔のミックスされた志貴の声が、悲鳴と怯えのそれに変わる。 橙子はゆっくりと白濁液の付着した眼鏡を外す。 透明なレンズは濁り、粘性を持った雫が垂れ落ちる。 何も言わず橙子はハンカチを取り出し、それを拭った。 冷たい、ほとんど冷気を発しているかと思えるほどの硬い雰囲気。 志貴をちらと見る目付き、その気力を削ぐような兇相振り。 がたがたと志貴を怯えさせるには充分過ぎた。 「舐め取れ」 何をとは告げぬ。 しかし志貴は慌てて跪き、自分が汚した橙子の顔に自分の顔を寄せる。 舌を突き出し、頬に付着した精液に近づける。 全身これ従順といった態度。 震え、嫌悪の表情はあるが、それ以上に怯えが強い。 もう触れたと言っても良い、その瞬間に橙子はすっと後ろへ引いた。 志貴の舌がむなしく空を舐め上げる。 「あれ、なんで?」 「冗談だ」 冷たい物言いながら、そう答えると橙子はハンカチで今度は顔を拭き清めた。 眼鏡を掛けるとまた雰囲気が和らぐ。 人差し指に僅かに付着した志貴のエキスを見て、躊躇い無く口に含む。 まるでケーキでも食べていた時の仕草のように。 志貴はこんな時であるのに、橙子の形の良い唇が細い指を咥えるのを息を呑 んで見つめた。 口がわずかに動き舌が蠢いているのがわかる。 自分の指をしゃぶっている、ただそれだけなのに、その行為は見ている男に 対して堪らなく淫靡さを感じさせた。 ちゅぷと湿った音がして、口から指が現れる。 唾液に塗れたそれを、橙子は前に突き出し、志貴の唇に押し付けた。 何を? 疑問には思ったが、唇の隙間を突付く指に、口を素直に開ける。 橙子の指が志貴の口に潜った。 本能的に、それを受け入れ、志貴はしゃぶっていた。 橙子の唾液だろう、甘い香りがする。 それにまじってわずかに青臭い匂い。 指に残っていたのか、橙子がしゃぶって混ざっていたのか、恐らくは志貴自 身の精液の残臭。 しかし、嫌悪無く志貴は指を舐め、そして強くしゃぶる。 「ふふっ、んん……」 官能的な声を橙子が洩らした。 年端も行かぬ少年の口に己の指を含ませる。 それが橙子の何かを刺激したのだろうか。 眼鏡の奥の瞳がわずかに色を変えているようにも見える。 指を引き抜く。 「本当に可愛いな、志貴……」 つっと立ち上がって、部屋の隅の長椅子に座す。 応接用のソファーと言うよりも、その気になれば仮眠も取れる簡易ベッドと いった風情の大きさ。 浅く腰掛け、志貴を呼ぶ。 「おいで」 「はい」 志貴を見る眼がわずかに潤みを帯び、口元に微かな歪みがある。 「あんなものを舐めようというくらいなら、こちらは文句あるまい?」 ほっそりとした脚が既に志貴の目に晒されてはいる。 しかし、太股を覆っていたタイトスカートの裾を、さらに橙子の両手はたく し上げていく。 ストッキングはつけていない生脚。 黒いレースの下着が、わずかに覗く。 「どうせ我が侭で気分屋だから気を損ねるな、と注意されたのだろう?」 精いっぱい悦ばせた方が無難だぞ、我が侭な人形師をな」 促すまでも無く、志貴の目はそこに張り付き離れなかった。 その視線を、志貴が生唾を呑み込むのを、橙子は確認し、さらに手を動かす。 白い肌に、三角の漆黒が浮かんでいる。 わずかばかり肌を覆うランジェリー。 「これは、取ってくれ。やり方はわかるだろう?」 志貴は黙ったまま頷き、橙子の前に膝を落とす。 震える手が、橙子の秘められた部分に伸びる。 ほとんど紐状になっている両脇に手を掛けた。 問うように橙子の顔を見て、志貴は力を入れた。 「あれ?」 わずかに下へ引っ張られるものの、きつく慮外者の手を拒んでいるのか、そ れ以上は脱がす事が出来ない。コットンなどとは伸縮の幅もまるで違うように 思える。 「知らぬのか? なら憶えておけ。後ろから先に下ろすんだ。こういう処でも たつくと興醒めだ。 大人になってから苦労するぞ」 まして好き好んで年を取るのだしな、そう呟いて何がおかしいのか一人で笑 い、それから志貴を助けるように腰を浮かせた。 橙子の指示に従うと、驚くほどあっさりとなだらかな曲線をレース生地は滑 り落ち、それから前を引っ張る事によって、橙子の下着を剥ぎ取る事に志貴は 成功した。 ほっとしたように、脚から小さくなった布切れを取り去り、改めて今まで隠 されいていた処を見つめ、息を呑む。 はしたなくない程度に橙子は脚を開き、橙子は隠す事無く秘処を志貴の眼に 晒していた。 志貴の周りにはいないタイプの大人の女性。 怖いくらいの落ち着きと、知と理の徒たる硬い雰囲気。 体も秋葉や琥珀達に比べれば、より成熟している。 黒い、大人の下着。 そいういったものから想像していたイメージとは、非常に落差があった。 端的に言えば、そこはもっと未成熟な少女のもののようだった。 恥丘を覆う薄い恥毛。 茂りと呼ぶには足りぬそれは、手入れし刈り込んでいるのかと思わせる。 しかし、触れればちぎれるのではないかと思える細さと短さ、それから判断 するに、自然のままの状態なのだろう。 その下は既に開き、わずかに露を含んでいる。 しかしそこも、自分の指であれ触れた事があるのだろうかと疑わしいほど、 色が薄く、まったく形が崩れていない。 それでいてぬめぬめと濡れる粘膜、その下で薄桃色を通り越して白く見える 小さな触手は、誘うかのように淫らに秋波を送っている。 可憐さと淫靡さの不思議な結実。 汚してはいけないような怖れと、手で触れ舌を差し入れてぐちゃぐちゃに乱 して全てを貪りたくなる欲望を同時に心に湧きたてられる。 結果として何も出来ず、志貴はただ魅入られたように見つめていた。 「どうした? 普段、眼にしているものと比べると、声を失うほど、醜悪かな?」 「凄く、綺麗です。こんなに、誰も触っていないみたいに、綺麗で、それでい てなんていやらしい……」 明らかな賛美が込められた志貴の言葉に、くすぐったそうに橙子は笑い、さ らに脚を開いた。 「では、舐めてくれ。いや、ちょっと待て」 橙子の手に、小さな赤い粒が現れる。 指で摘んで、自分の谷間に近づけ、そして潰した。 一滴、小さな雫が垂れて、橙子の秘処に当たって弾け、霧散した。 ふわっと花の香りにも似た芳香が立ち上り、消えた。 「大人の女の嗜みだよ、さあ、楽しませて貰おうか」 志貴は、橙子から漂う香りが微妙に変わったことに気がついた。 どこがとは言えないが、いっそう心を惑わせ、体を熱くさせるような。 酔ったように、目の前の淫花にむしゃぶりたくなるような。 そんな香り。 媚薬ででもあるのだろうか、ちらと思う意識も薄くなる。 吸い寄せられるように志貴は顔を埋めた。 ぴちゃ、ぴちゃ、と。 飽く事無く志貴は舌を動かし続けた。 単調にただ舐めているだけではない。 小さな膣口の周りを丹念に舐めたと思えば、こぼれ落ちた愛液を追ってその 下にまで舌を伸ばす。 時には太股の付け根に痕が残るほど口づけし、上にいって茂みを唇で咥え、 ぐっしょりと湿らせる。 自分自身で考え、そして橙子のそれとない指示に従い、感じやすい部分に隈 なく舌と唇で奉仕する。 「ああ、いいぞ、うまいぞ」 愉悦の色に、志貴はより熱を入れた。 ちろちろと、膣口の上の窪みを舌先で丹念に舐め、橙子が一番反応するクリ トリスに戻る。 小さく可憐な姿で、強い刺激には耐え切れぬのではないかと思えるそこを指 で剥き出しにする。 真珠に喩えられるそこは、濡れて鈍く輝き、確かにそう見えていた。 舌でこねて、唇で啄ばむ。 「あああッッッ」 秋葉ならばこれでもう達してしまうだろうな。 他の女への行為に没頭している時には、ある意味失礼な事が頭に浮かぶ。 だが、一見未熟そうな外観に反して、感じはすれども、橙子は余裕で志貴を 受け止めていた。 あるいは、そう見せることが出来ていた。 「もういい」 軽く髪を撫ぜながら、橙子は志貴の頭を後ろへと押した。 口の周りを濡らしながら、志貴は素直に顔を離し、「次は?」と目で問い掛 ける。 「こちらからばかりと言うのも申し訳ないからな、お返しはしないと」 志貴の手を引き、ソファーに横たわらせる。 入れ替わって自分は立ち上がり、タイトスカートを脱ぎ捨てる。 上半身はそのままブラウス、一番上までボタンを留めたまま。 そして下半身は何も纏っていない。 「こんな小さな子供にリードして貰うのも楽しそうだが、やはり最初は……」 志貴のペニスに手を掛け、上を向かせる。 やや不安定ながら、志貴をまたぐ。 志貴は息を呑んで見つめた。 この年上の女性が欲情の色を浮かべて、自分のペニスに濡れ光る秘裂を近づ けていくのを。 橙子の体がゆっくりと沈む。 赤い肉襞が、志貴のピンク色のペニスの先に触れ、そのまま包み込む。 じんわりとしたぬくもりが志貴に伝わった。 蕩けるような感触に、志貴は体を震わせた。 「入った」 志貴ではなく、ここにいない誰かに向かい、橙子は言葉を発した。 どこか、勝ち誇ったように。 嬉しそうに。 そしてついに橙子は腰を完全に落とし、志貴のペニスは下から橙子を貫いた。 「えっ?」 橙子の中にペニスを埋めながら、志貴は驚きの声を上げた。 予想外の感触。 いや、期待はずれの感触と言ってもいい。 橙子の中は濡れ、暖かい。 その感触は心地よく、快美だった。 だが、あまりに摩擦が無さすぎた。 緩い。 まるでただぬめりのあるお湯にでも浸かった様に、膣内にある感触が乏し過 ぎた。
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