For All
 “Quartett!”&“Argiano”Freaks!

  /Triangle In The Night/

         作:狂人(クルートー)            




 1/

「じゃ、電気消すよ?」
「オッケー。おやすみ、ユニ」
「おやすみ……なのかな?」
 ユニが悪戯っぽく笑って、次の瞬間には闇
が部屋を満たす。いつもの部屋、いつものお
やすみ。メイだって、いつも通りに一番乗り
で寝息を立てている。
「うーん……」
 目を閉じて、ソファに身体を横たえる。
 一秒後には、闇の中でまた目を開く。
 眠れない。というのも。
 俺とユニとの“いつも通り”が、ここ最近
は微妙に変わってきているからだった。
「あ……」
 闇の中、憚るようにもぞもぞと蠢く気配が
わかる。こっそり、ゆっくり、誰かを起こし
てしまわないように、俺に近づいてくる。
 そいつは毛布をめくると、ソファに寝転ん
だ俺の上にのしかかってきた。
 熱っぽい息が、夜風を押し退けて首筋にか
かる。
「……また、来ちゃった」
「いらっしゃい、ユニ」
 薄手の毛布に包まって、ひっそりと抱き合
う。こうして暗がりの中でユニと再会するの
が、このところのお決まりになっていた。
「メイは大丈夫?」
「うん、今日もぐっすり。言ったでしょ、寝
つきがすごく良いんだって」
「実際、噂以上だよ。ここまで気づかれない
と、こっちが驚く」
「そうだねえ。少しくらい気づいてくれたほ
うが……ドキドキ、するのにね?」
 見えないけど、今、きっとユニは色っぽい
顔をしてる気がする。触れ合った場所から、
お互いに汗が滲んでくる。
「気づかれたら、俺が殺されちゃうって」
「もう、そんなコトないって言ってるのに」
「……でも、本当にドキドキするな」
「……そうだね。二人っきりでするのと、全
然違うよ」
 ユニの小さな身体を抱き寄せる。触れた胸
から、だんだんと早くなる鼓動が伝わる。
「――フィル君。今夜も、しちゃう?」
 囁くように、ユニの誘惑が鼓膜に忍び込ん
でくる。もう何度この魔性に屈しただろう。
 そう、最初はおっかなびっくりだった秘密
の逢瀬に、俺はすっかりハマッてしまってい
た。
「うん。しようか、ユニ」
「えへへ、やったあ」
 もはや暗黙の了解、イヤとは言えない身体
になってしまった。首に両腕を廻してくるユ
ニを抱き締めて、闇の中で唇を探る。
「んっ……そこは、ほっぺただから……もっ
と、下だよ……」
「こっちかな……」
 もぞもぞと衣擦れの音を立てながら、密や
かに求め合う。毛布がソファの下へ零れ落ち
るけど、関係ない。どうせ、この暗さだ。
「うっ……!?」
 前触れなく闇が反転して、鋭い光が瞼を突
き刺す。細めた視界に、頬を染めて俺を見る
ユニが映る。そして――
「――大概にしとけよ、おまえら」
 その後ろに、めちゃくちゃ怒ってる死神―
―いや、メイの姿を確かに見た。
「……メイ、さん?」
 一応、目を擦ってみる。
 消えない。正真正銘のホンモノ。
「人が黙ってればいつもいつもいつもいつも
……」
 ばきばきと拳を鳴らしながら、険悪な顔の
メイが近づいてくる。
 背筋が凍りつく。逃走本能が火を灯す。
 でも、ご満悦のユニはまったく気づいてな
くて、俺を離してくれない。
 メイが来る。拳の射程距離までもう少し。
「――っ」
 死の予感に、生温い唾液を飲み込む。
 ……爺ちゃん、リーナ、後は頼んだっ!?


 2/

 一転して明るくなった部屋。流れているの
は甘い空気じゃなく、絶妙に研ぎ澄まされた
緊張感。その中で、ユニだけがいつも通りだ
った。
「あれ? 電気がついてるよ、フィル君」
「……ユニ、後ろ、うしろ」
「んー?」
「……あたしがつけたんだけど、ユニ」
 振り返ったユニへ、かなり複雑な笑顔でメ
イが答える。
「わわっ、メイちゃんだ!」
「わわっ、じゃないっ! 一体なにやってん
だおまえらっ!」
「なにって……ねえ?」
 邪気のない顔で俺を頼るユニ。
 それを、言えと仰いますかユニさん。
 無理です。絶対殺されます。
 ――こ、ここは誤魔化すしかっ!?
「じ、実はその、ユニが眠れないって言うか
ら、添い寝を……」
「ほーお? 嘘偽りないな? あたしを謀っ
たら、どうなるかわかってるよな?」
「うっ……」
「もう一度聞くぜ、フィル? 答えは変わら
ない?」
 顔は笑ってるけど、漂ってるオーラが怖す
ぎる。刺激しないほうがいい気がする。
 君子危うきに……ってわけで、降参っ!
「じ、実は――」
「……わかってるって。まったく、人の前で
毎晩毎晩飽きもせず……」
 機先を制して、メイが深い溜息を漏らす。
「って、ええっ!? ば、バレてたの!?」
「とっくの昔にバレとるわっ!」
 一閃、メイの平手が避ける間もなく炸裂す
る。
「ぐぼぁっ!」
 勢いよくソファから転がり落ちる。ユニは
というと、見事なジャンプでひらりと俺から
身をかわして難を逃れた。
「いてて……」
「大丈夫、フィル君?」
 180度反転した視界で、怒り心頭のメイ
がびし、と指を俺に突きつける。
「いい薬だっ。ったく、近所迷惑の前に同居
人迷惑だぞ!」
「いや、そもそも原因は、その同居人……」
「うるさいっ! 大体、あんなの他人がいる
前ですることかっ! しかも毎晩!」
「だって、メイちゃんは他人じゃないよ?」
「う……そ、それはそうだけど」
 あっけらかんと返すユニに、少々メイがた
じろぐ。
「とにかく! 少しは人目を気にしろって言
ってるの!」
「人目は、すっごく気にしてるよ。ね、フィ
ル君?」
「あ……うん。そうだな」
 確かに、これほど人の視線に神経を使う作
業もそうはないよな。
「そうじゃなくて……! ええい、今日とい
う今日は勘弁ならんっ! フィル! ユニも
ちょっとそこ座れ!」
「わかったから落ち着けって、メイ」
「ならとっとと座れ!」
「はいはい……」
 刺激するとまずそうなので、要求に従って
みる。でも、ユニは――
「ふっふっふっ」
 なにやら肩を震わせて、自信ありげに含み
笑いなんてしている。怒りのメイも、不審げ
に眉を顰める。
「なんだよ、ユニ?」
 メイがユニを振り仰いだ、その瞬間。
「ぐはははは! こちとらはバレるのを今か
今かと待ってたのだー!」
「えっ……!?」
 ユニがいきなり笑い出して、びしっと力強
くメイを指差した。びくっと反応するメイ。
 い、一体何が……?
「いやー、やっと気づいてくれたんだねっ。
 長い道のりだったねえ、フィル君」
「そ、そうだっけ?」
 ていうか、気づかれないように頑張ってた
んじゃなかったっけ……?
「なんか、早く気づいてほしかったって風に
聞こえるけど?」
 メイの疑問ももっともだ。俺とメイと、二
人分の視線を余裕で受け流して、ユニが続け
る。
「メイちゃんは、いつごろから気づいてたか
な?」
「……半月くらい前。最初は気のせいかって
思ったけど、あんまり続くから……」
「わ、し始めてすぐだよ! もう、激しくし
すぎちゃダメって言ったのに、フィル君」
「お、俺のせいっすか!?」
 むしろ毎晩激しかったのは、ユニさんだっ
たような……
「どっちもだ! おまえらな、自分達が一体
どれくらいの音量でしてるかわかってる?」
「いや、大体いつもそれどころじゃないから
……」
 俺の隣で、ユニもうんうんと頷く。
「ふーん……じゃあ、知ってるのに半月も知
らんぷりしてたんだ」
 俺とする時みたいな悪戯っぽい顔で、ユニ
はくすぐるようにメイを見つめる。
「バカ……あんなの、してるだろなんて言え
るもんか」
「でも、今日は言っちゃったよ? ねえ、メ
イちゃん――知ってたなら、私達、どうだっ
た?」
「え――?」
 さすがのメイも、この質問には硬直した。
「なにしてるか、わかってたんだよね? 私
達、どんなことしてた? どんなだった?」
「あ、う……それは」
 畳み掛けられて、メイはいつもの強気が出
せずにしどろもどろになる。
 でも、ユニは少しも手を緩めない。
「えっちだった? ……メイちゃんも、して
みたくなったかな?」
「そっ、そんなの絶対ないっ!」
 がー、と火を吹きそうな勢いでメイが反論
する。ユニはというと、頬を膨らませて不満
そうだ。
「ヒドイなあ、メイちゃんが早くノッてこな
いかなー、って一生懸命頑張ってたのに」
「なっ……じゃあユニ! あたしが見てるの
知ってて、あんなにしてたのか?」
「もっちろん。二人ともそのつもりだったよ
ね、フィル君?」
 そ、そこで俺に振るのか!?
「え、え? 俺、そんなの全然気づか――」
「いいとこなんだから、ちゃんと頷く!」
「は、はいい!」
 なにやらユニが本気だ。逆らうとメイより
怖そうだった。気を取り直して、余裕を崩さ
ずメイに指差しのお返しをする。
「さて、メイちゃん!」
「な、なんだよっ」
 留まるところを知らないユニに比べて、メ
イは最初の勢いが緩んできている。なんだか
形勢逆転の気配だ。
 そこへ、ユニが追い打ちをかけた。
「……そろそろ、素直になっちゃわない?」
「――あ」
 背中にぞくっと来るユニの微笑み。
 あれは、いつも俺を誘惑してくる時と同じ
顔だ。俺に向けられたわけじゃないけど、見
ただけで胸が跳ねる。
「あ、あたしはいつだって素直だね!」
 メイもただならないものを感じたようで、
気丈にそっぽを向いて抵抗する。
 でも。経験者として言わせてもらうと、あ
の顔をしたユニには誰も勝てないんだ。
「まだそんなコト言っちゃうんだ、メイちゃ
ん……」
「これが素直なあたしだよ、ユニ」
「……そっか、そうなんだ」
 ユニはがっくりと肩を落として、魂が抜け
たように虚ろな目で俺を見る。
 そして、あの顔で笑った。
 それはもう、ニヤリって感じに邪悪に。
「――じゃあ、仕方ないねフィル君?」
「へ? お、俺?」
 やばい、巻き込まれる!?
 っていうかもう逃げられない!?
 やっぱり後を頼む、爺ちゃんとリーナ!
「これからはもっとすごくして、メイちゃん
がじっとしてられなくしないとだよね?」
「な、っ!?」
 息を飲むメイと一緒に、俺まで凍ってしま
う。だって、今よりスゴイなんて、そんなの
は僕想像できません!
「……だ・よ・ね?」
 呆けていると、また怖い顔で睨まれた。
 これまたメイと同じで顔は笑ってるけど、
なんというか殺気を背後に感じる。
 無意識に本能で答えてしまっていた。
「あ――うん、そうだ、その通り!」
「じゃ……続き、しよっか」
 言って、ユニは艶っぽく床の俺にしなだれ
かかってくる。背中をぎゅっと抱かれて、朱
の浮いた顔で見下ろされる。
「あ……」
 胸が高鳴る。瑞々しい唇に、あの子悪魔め
いた目に、釘付けになる。
「今夜はぐっと激しくするよ、フィル君」
「ユ、ユニ……」
 息が触れるほど近くで、ぞっとするような
言葉を聞く。この距離は初めてじゃない。
 でも、今夜は――
 ちらりと、ユニの背の先を見る。
「こ、こらっ! あたしが見てんだぞっ!」
「だからするんだもん……ね?」
 身振り手振りで大慌てのメイを尻目に、ユ
ニは両手でぎゅっと俺の首を抱く。そして、
目は当てつけるようにメイから離さず、その
まま俺に唇を重ねてきた。
「ん、っ……」
 甘ったるい熱を味わいながら、思う。
 ――ああ、さっきの笑顔の意味はこれか。
「んふふっ……」
 くい、くいとリズミカルに唇を寄せて、ユ
ニはそれとわかるくらい露骨にメイを見つめ
る。
「あ、っ、ユニ……」
 これは効いた。あまりにあからさまな見せ
つけに、メイは完全に面食らっている。
 そりゃ、こんなのされたら、俺だっておか
しくなる。
「ん……っ、ねえ、触って……ほら、今日は
よく見えるでしょ……?」
 唇を離すと、ユニは両手でするするとスカ
ートの端を抓んで持ち上げる。
「は、っ……」
 いつもと違って光のある部屋。スカートか
ら覗く白いユニの肌が、遮るものもなく目に
飛び込んでくる。思わず、喉を鳴らす。
「ほら……フィル君」
「うん――きれいだ、ユニ……」
 誘われるまま、柔らかそうな太腿へふらふ
らと手を伸ばす。
「ダメだっ!」
「メイ……?」
 メイの慌てた悲鳴に、指が止まる。
 ユニは、スカートの内側をちらつかせたま
まで背中のメイを振り返る。
「ダメってことないよー? 私達、お付き合
いしてるもん。ね?」
「ん――うん」
 甘えてくるユニを抱きとめて、楽しそうな
笑顔に気づく。ホント、今夜はとびきり意地
悪になってるな。
「で、でもっ……」
 ますます困るメイ。手も足も出なくなって
きて慌てるばかりになってしまう。
「でも、気になる?」
「あたりまえだろっ。双子、なんだし」
「じゃ……どうする?」
 そろそろ勝負ありって感じだけど、ユニは
笑顔のままで攻撃を続行する。
「ううっ……あ、あたしは、ユニがいいから
……フィルは、その……」
 だいぶ揺らいできてるみたいだ。
 ……でもメイ、俺は、なに?
「素直じゃないなあ……ホントは、一緒がい
いんでしょ?」
「違うって――」
 最後の抵抗を試みるメイに、ユニもとうと
う痺れを切らせたみたいだ。子供みたいに頬
を膨らませて、メイをじっと睨む。
「違わない。メイちゃんはすっごく素直。私
は、そういうメイちゃんが好きなんだから」
「……うわあ」
 ユニさん、それはなんというか反則です。
 メイにそれをどう受けろと?
「……でも、今のメイちゃんは素直じゃない
から、キライ」
 機嫌を損ねた女の子のように、ユニはぷい
っとそっぽを向いてしまう。こういう仕草を
する時、ユニは年齢以上に幼く見える。
「あ――」
 メイも、進退窮まったかのように表情を強
張らせる。手を伸ばそうとしたり、ぱっと引
き戻したり、まったく落ち着かない。
「……私もフィル君も、メイちゃんと一緒が
いい。本当だよ。ね?」
「うん、本当だ」
 ユニの問いかけに、本心から答える。俺だ
ってメイのことは大好きだし、さっきから困
った顔ばっかりでちょっと可哀想だ。
 どうせなら、みんなでいい顔になりたいも
んな。
「ユニ、フィル……」
 不安げに俺達を見るメイに、ユニがすっと
手を差し伸べる。
「ねえ――おいでよ、メイちゃん」
「あっ……」
 メイは、伸ばされた手を見て一瞬戸惑う。
 怖いのか、割り切れないのか。その震えの
意味は、わからないけれど。
「……ユニ……」 
 何かを振り切るように、メイは一度だけ首
を振った。近づく指先に、迷いはない。
 そうして、二人の指はようやく絡み合う。
「――ようこそ、メイちゃん」


 3/

 動転してる。下手すると、この中で一番。
 だって、真夜中にユニが近くにいるのはい
つものことで。でも、今夜は。
 メイが一緒。一緒に、夜を過ごす。
 それで、マトモでいられるはずがない。
「ほら、こっちに来てメイちゃん」
「あ……うん」
 ユニに手を引かれて、そわそわと視線を泳
がせながらメイが近づいてくる。俺とメイと
を向かい合わせて、ユニはベッドの傍らにち
ょこんと腰を下ろす。
「メイ……」
「あ、え……なに? フィル」
「落ちつけなんて無理だろうけど、もうちょ
っと肩の力抜いてさ……それじゃ、怪我しち
ゃうよ」
 理性が機能しているうちに、めいっぱいメ
イの世話を焼いとかないと。それこそ、始ま
っちゃったらどうなるかわからない。
「け、怪我っ!? フィル、怪我しちゃうよ
うなことを、いつもユニとしてるのか?」
 ダメだ、完全に動転してる。メイはばたば
たと手を泳がせて、俺に食ってかかる。
「むふふ……そうだねぇ、時々それくらいす
ごいかも……?」
「なぁっ……! フィル、おまえ――!」
「こらユニ! ただでさえメイは混乱してる
んだから、静かにしてなさいっ!」
 暴れるメイをなんとかなだめて、子悪魔に
釘を差す。
「はぁーい。……でも、大丈夫だよメイちゃ
ん。フィル君は、ちゃんと優しいから」
「ん……ぅ、うん……」
 メイは不安げにユニを何度も振り返って、
それからゆっくりと俺に目を合わせた。
「う……」
 普段の勇猛果敢ぶりを知っているだけに、
こう。なにも言わないでじっとこっちを見て
いるメイは、ぞくっとするほど脆く綺麗に感
じられる。
「……できる? メイちゃん」
 ユニが顔を寄せると、
「……うん、やってみる……」
 メイは、瞳の中にいつもの強い光を僅か燈
して、頷いた。
 ……それじゃ、俺も足踏みしてられない。
「じゃ――おいで、メイ」
「うん……」
 小さく深呼吸をして、まっすぐにメイを見
て、胸におさまった小柄な姿を抱き締める。
「あ……」
「う……」
 触れ合った瞬間、俺もメイもぶるりと身を
震わせてしまう。お互いの体温にびっくりす
る。そんな些細なことで、頭が白くなる。
「え、と……」
 慣れないメイをサポートしてあげないとい
けないのに、いきなり躓いた。ユニとなら、
こんなことはないのに。
 そのユニは、もどかしげに腕組みをして俺
を睨む。
「もう、いつもの勢いはどうしたのかな?」
「ははは……やっぱり、ユニとするみたいに
はなかなか無理だって」
「ダメだよ、フィル君がちゃんと導いてあげ
なきゃ。ほら……私とはもうしたから、今度
はメイちゃんにしてあげて――キス」
 言って、ユニは両手で俺とメイの顔を向か
い合わせる。
「わっ……」
 小さく悲鳴を漏らしたメイと目が合う。
 見開かれた瞳に、一瞬吸い込まれそうにな
る。
「フィル……」
 メイの声。少し揺れている。それを聞いて
ようやく足場が固まった。俺、ふらふらして
られないじゃないか。
「大丈夫。肩の力、抜いてて」
 大丈夫、と自分にも言い聞かせるよう強く
口にして、メイの肩に触れる。
「っ……」
 強く抱きすぎたのか、と一瞬焦る。
 でも、触れたところから少しずつ力が抜け
ていくのが分かった。
 溜息のあと、時間をかけて伏せられた瞼を
確かめて、静かに唇を寄せた。
「ん……っ……」
 腕の中で、メイの身体が震える。
 重ねた唇も、時折切なげに揺れている。
 ユニとは違った暖かさ、柔らかさ。
 これが、メイの唇。
「ふぅっ……」
 震えを止めてあげるつもりで、もっと強く
唇を押しつける。胸に触れた手に、きゅっと
力がこもる。
「ん……くぅっ……」
 身体を俺に預け、唇を受け入れていたメイ
が、恐る恐るの仕草で首を持ち上げる。そう
して啄ばむように、確かめるように、自分か
らもキスをしてくる。
 一生懸命で、なんだかとてもメイらしいキ
スだった。
「ふ……っう」
 熱が込み上げて、俺からもメイを求める。
 くすぐるように寄せていた唇を縫って、舌
先で口内に触れる。
「んっ……!?」
 メイが大きく跳ねて、瞼を上げた先に顔だ
けでどぎまぎを表現していた。
 大丈夫、とこっちも目で声にする。
「ぅ……んっ……」
 どうにか受け取ってもらえたのか、メイは
瞬いていた目を伏せてまた口づけてきた。
 俺のほうもどうにか余裕が出てきた。メイ
の熱心なキスを受け止めながら、自分からも
吸いついて柔らかい味に酔う。
「んくっ……」
「ん……むっ……」
 緩急のない穏やかな口づけ。気分に任せて
強弱をつけ、メイの唇から漏れた唾液で唇を
湿らせる。
 二人とも、息苦しくなるまでなかなか止め
るタイミングを掴めなかった。
「ふぁっ……」
 唇を離すと同時に、二人して大きく空気を
吸いこむ。肺の空気が無くなりそうだった。
 心臓が忙しく脈打つ理由は、それだけじゃ
ないけど。
「メイ……大丈夫か?」
「う……んっ。でも、胸、ドキドキいってる
……」
 唇の端に唾液のあとを残したまま、メイは
高鳴りを抑えるようにぎゅっと胸を握る。
「メイもなんだ。俺も……すごいよ。割れそ
うなくらい鳴ってる」
「……フィルも? ユニとあんなにしてるか
ら、慣れっこだと思ってた」
「はは……だから、ユニみたいにはいかない
って。メイとは初めてだもの、ドキドキする
さ」
「そっか……フィルも、おんなじなんだ」
 噛み締めるように呟いて、メイは初めては
にかんだ顔を見せた。少し、緊張がほぐれた
のかもしれない。
「ファーストキッス、だね?」
「わ……ユニ?」
 息をついているメイの背後からユニが忍び
寄って、ぎゅっと抱きついた。
「メイちゃんとフィル君、初めてしちゃった
でしょ――キス」
「う……」
「あ……」
 改めて言われるとその通りで。なにやら妙
に意識してしまって、その、めちゃくちゃ恥
ずかしい。
 ……ホントにしたんだ、メイと。
 なんか、顔が赤くなってそうだ。
「じゃ……今度は、私ともキス、ね……?」
「え? ぁっ……!」
 声に振り向いたメイの唇へ、ユニがおもむ
ろに唇を重ねる。鏡に映したみたいにそっく
りな二人が、俺の前で濃厚なキスをした。
「っ――!」
 今度は、間違いなく赤面した。
 予想外の刺激すぎて。そりゃ、いつも仲良
しの二人は見てるけど、こういうのは違う。
「ん……ふぅ……メイちゃんっ……」
「んぁ、ユニっ……」
 ユニは、メイの細い首に絡みつくようにし
て、熱っぽく唇を吸う。メイは情熱的なキス
を受け止めきれずに、ぶるぶると膝を揺らし
ながらよろめく。
「メイちゃんの唇、あったかい……」
 ふらつく身体を支えて、ユニはとろんとし
た眼でまたメイの唇を味わう。興奮が伝わる
ように、メイの頬にも色っぽい朱が差した。
「あ……ユニだって、すごく……」
「うん……メイちゃんと、してるんだもん。
すごく熱くて、ドキドキするよ……」
「んぅぅっ……!」
 覆い被さるようにユニが顔を寄せて、絡み
合った二人の身体がもぞもぞとくねる。
 目の端に涙を浮かせたメイを、あやすよう
なユニのくちづけが優しく包む。
「ん、ふ、むぅっ……」
 くちゃくちゃと二つの小さな舌が絡みあっ
て、忙しい息遣いが響く。それに合わせて、
強張ったメイの肩が少しずつ脱力してきた。
「っ……ユニ……」
 ぼんやりと背中のユニを見つめるメイ。
 ユニはくすりと微笑んで、
「あ、っ……!」
 次の瞬間、メイのワイシャツのボタンを無
造作に外しはじめる。イタズラな軌跡を描い
て、指先がするすると服の内側に忍び入る。
「怖くないから……じっとしてて」
 耳元で囁いて、ユニは潜らせた両手を動か
していく。ブラの外れる音。
「あ……はぁっ……」
 ユニの手首が潜る裂け目から、ちらちらと
メイの素肌が覗く。
「っ――」
 その、未開の白に目を奪われる。生き物の
ようにくねるユニの腕が、胸の辺りでワイシ
ャツを盛り上げる。
「や……胸、ユニぃっ……!」
 ふくらみの辺りでシャツが波打つようにた
わんで、ユニの指が激しくメイを愛撫する。
「気持ちいいかな……?」
 乳房を攻めながら、ユニは赤みの差したメ
イの頬に自分の頬を寄せる。艶やかな朱に染
まった二人の少女は、淫靡な姿さえ共有して
いた。
「ん……くっ、くすぐったくて、きもち、い
っ……」
「ふふっ……可愛いな、メイちゃん」
 ユニは興奮気味に笑って、さらにボタンを
外していく。亀裂は大きく広がって、内側で
蠢くユニの指と、控え目なメイの乳房を俺の
目に晒す。
「ふぁッ……あ、く、はぅぅっ……」
 へたりこんだメイの足が、耐えかねたよう
にぴくぴくと震える。スカートから覗いた腿
に、さっきのユニの誘惑が甦る。
「メイ……」
 喉を鳴らして、絡み合う姉妹に近づく。
 切なげに蠢くメイの太腿、その先を覆い隠
すスカートに、指を伸ばす。
 あと少し。ソックスを纏った白い足が、誘
うように踊る。
「だぁめ」
 そこへ、ユニの手が割り込む。メイに触れ
ようとした俺の手を遮って、またワイシャツ
へ潜り込む。
「焦っちゃダメだよ、フィル君。ゴチソウは
まだお預け……」
「ユニ、そんな……」
「今までできなかったぶん、メイちゃんをい
っぱい良くしてあげるの。だから、フィル君
も手伝ってね?」
「えっ?」
 返事をする間もなく、ユニはメイを守って
いた最後のボタンを取り払う。
「あ……やだっ……!」
 むずがるメイの肩から、ワイシャツが滑る
ように零れ落ちる。なめらかで眩しい裸体が
目に飛び込んで、思わず息を飲む。
 小さく丸みを帯びた乳房に絡みつくユニの
指が、堪らなく扇情的だ。
「ね……フィル君。メイちゃんは、ここが弱
いんだ……」
「きゃ、うっ……!」
 ユニが触れると、メイは甲高い悲鳴を上げ
て背筋を反らせる。指は、くすぐるように腕
のつけ根の下を弄っている。剥きだしの胸に
汗の粒が伝う。
「だッ……ダメ、そこ、やめて、ユニ……」
 ひくひくと震えるメイは、ユニが軽く指を
使うだけで大袈裟なくらいに痙攣する。
 誰だって多少なりとも脇は弱いけど、メイ
の反応は特別だ。
 弱々しく乱れる姿に、背筋がかっとなる。
「さあ……してあげて?」
「あ……」
 後ろからメイの胸を抱いて、唇を重ねた淫
らな姿でユニが俺を誘う。近づきかけて、さ
っきの反応を思い出して胸が跳ねる。
「だ、ダメ……フィル、タンマっ……」
「……ごめん、メイ」
「えっ……?」
 その慌てた姿が、トドメになった。
 ユニの持ち上げた腕を潜って、くねくねと
逃げるメイの脇の下へ、舌を伸ばす。
 ……俺、サドなのかな?
「んっ……」
 舌先で触れると、少し汗の香りが届いた。
 僅かな刺激を先触れに、メイの肌の感触が
伝わる。
「ひゃぅぅっ……!」
 ユニと絡み合ったまま、メイは電気に打た
れたみたいに激しく身体を揺らした。
 ほんの少し舌が触れただけなのに、予想以
上の反応だ。
「あ……ぁっ、あぁっ……」
「フィル君、もっと……」
 乱れるメイの乳房を両手で揉みながら、ユ
ニがさらなる愛撫を促す。言われるまでもな
く、もう一度メイに舌で触れた。
「ひゃんっ……! や、ッ、ダメ、くぅっ…
…!」
 今度は線を引くように、舌でぞろりと撫で
る。汗の塩辛さに混じって、メイの香りが鼻
腔をくすぐる。
「ん……メイ、すごい……」
 頭の上で絶え間なく震えるメイ。目線のす
ぐ近くで歪む乳房と細い指が、否応なく興奮
を高める。
 舌を伸ばして、唾液にぬめった脇を何度も
小突いてやる。
「うぁ、あっ……! やめ、そ、れっ……!
ホン――トに、ダメぇっ……」
 何度か俺を振り払おうとした腕もすっかり
力を失って、メイはか細く艶やかな嬌声で喉
を震わせる。
 いつもと違う、感極まったメイの声。
 聴いているだけで身体が熱くなる。
「じゃ、私はこっちをするね……」
 後ろからメイの耳朶や首筋を撫でていたユ
ニが、もう一方の脇に指を潜らせる。指先が
箒のように敏感な部分をくすぐる。
「あはっ……! や……ぁぁっ……ヘンに、
な、ちゃ――あぅ、はぁっ……!」
 一際激しく身を捩るメイを、ユニはぎゅっ
と身を寄せて抱き締める。ユニの手が離れ、
火照った乳房が愛撫から解き放たれる。
 そこへ、今度は俺が舌で触れる。
「ん……く、む……」
「ふぁ、あ、フィ、ルぅっ……!」
 ぴんと勃った乳首に舌が滑ると、メイは俺
を呼びながらぞくぞくと背を曲げる。宙を泳
ぐ両手が、ユニのくすぐりでひくん、と硬直
する。
「すごい……熱くなって、汗で光って……メ
イちゃん、すごくキレイ……」
「ん――あぁ、ホントに……」
 こりこりと固くなった乳首を吸いながら、
目の前で繰り広げられるメイの痴態に恍惚と
なる。ほんのりと赤らんだ肌は、愛撫を受け
れば受けるほどに鮮やかさを増す。
 もっと見たくなって、舌を使ってぺろぺろ
と乳房全体を舐めまわす。
「あ……あぁ、あぅっ……そ――んな、何度
も、しないでっ……あたま、しびれて……」
 理性が弱っていて、懇願は聞き取れなかっ
た。そのまま、半開きにした歯の間へ勃起し
た乳首を挟み込む。
「ふぁ、んん……っぁ――!」
 突起の弾力を味わうと同時、メイの裸身が
びくん、と波打つ。震えは腰から下を走り抜
けて、ソックスに包まれた爪先まで届いた。
「あ……メイ?」
 痙攣した後、メイはユニに倒れこんでぐっ
たりと力を失う。ユニと目を合わせて、荒い
息をつくメイを見守る。
「いっちゃったんだ……ね? すごく敏感で
しょ」
「うん……びっくりしたよ」
「少し、休ませてあげようね」
 ユニは脱力したメイをベッドに寄りかから
せて、額を滑る汗の珠を払う。メイは薄く目
を開いて、夢見心地で俺達を見た。
「それじゃ……メイちゃんがお休みしてる間
に、フィル君の準備、しちゃうね」
「え、俺?」
 しがみついたユニの指先が、さっきから息
苦しさを増している股間を包み込む。
「うくっ……」
「メイちゃんのお手本も兼ねて……だよ」
「お手本?」
 お手本ってなんのことだろう?
 なんて考えてる間に、足元にユニがすっと
跪く。
「そこに座って」
「あ……うん」
 促されるままベッドへ腰掛けると、ぺたん
と動物のように手足をついて、ユニが俺の股
間に潜り込む。
 指が艶かしく動いて、慣れた仕草でズボン
からペニスが解放される。半ば反り返った男
根を前に、ユニは悩ましく眉を伏せる。
「じゃ、してあげるね……フィル君」
 可愛らしく囁いて、ユニはいつものように
俺のものへと口付けた。
「く……ぅ」
 何度も夜を重ねたとはいえ、濡れた舌で敏
感な先端を攻められる刺激は強烈だった。
 思わず、熱くなった息を漏らす。
「ん……はっ、今日も、元気だね……」
 ぼんやりと潤んだ瞳で肉棒を眺めて、ユニ
は震える亀頭に何度もキスを浴びせる。
「わわっ!? ユ、ユ……ユニっ!?」
 ユニが股間で蠢き始めて間もなく、ぐった
りとベッドで休んでいたメイが飛び跳ねた。
「ん……? メイちゃん、もう元気になった
……?」
「ち、ちがっ、そうじゃなくてっ……! い
ま、フィルのに……」
 さっきまでの虚脱もどこへやらで、真っ赤
になって大暴れするメイ。
 ……気持ちは分かる。俺だって、あの時は
かなりびっくりした。
 でも、やっぱりユニだけがいつも自分のペ
ースで笑ってる。
「うん。だから、準備……」
「じゅ、準備ってなんのっ!」
「メイちゃんと、フィル君と、三人でする準
備だよ?」
「う――」
 硬直したままかっと赤くなるメイ。
 衝撃続きで、記憶がついたり消えたりして
るんだろう。
「それにしても、なんか新鮮……」
「ん? なにかな、フィル君」
「いや、こうやって慌ててるメイを見てるの
が、なんか楽しいって」
「むっ、浮気は許さないからねっ」
 頬を膨らませたあと、ユニはまたそろそろ
とペニスに唇を寄せていく。
「ん……はっ……」
 舌先が、膨らんだ亀頭を下からくすぐる。
 ぬらり、と唾液がペニスの肌を濡らして、
温かい舌の感触が伝わる。
「く、ユニっ……」
 艶かしい刺激に、男根の中を熱い血が通っ
ていく。緊張した竿が上向いて、ユニを誘う
ように持ち上がる。
「ん、む……ちゅ……」
 斜めに反った亀頭に顔を寄せて、ユニは鈴
口へ唇を触れさせる。柔らかな肉に撫でられ
ると、背筋に痺れるような快感が走る。
「は――ぁむっ……」
 ユニの息遣いとともに、亀頭が唇の中にす
っぽりと包まれる。
「うくぅっ……!」
 くちゅり、と柔らかい熱が男根を襲って、
亀頭を溝まで浸した感触がゆるゆると動き出
す。
「ん……んふ、むぅっ……」
 ユニは喉を鳴らして、キャンディのように
口の中で亀頭を舐め転がす。最近のユニの奔
放さと技巧は鰻昇りで、愛撫をじっくりと楽
しむのにも気力を要する。でも――
「は……ぁふ、んむ――ぅっ……」
「はぁ……っ!」
 亀頭を口の中で撫でながら、ユニは竿を握
って緩やかに扱いてくる。忙しい唇の動きと
穏やかな指の刺激で、ペニスがさらに固さを
増す。
「く……ぁっ、ユニ、なんだか今日は、いつ
もより……」
「んっ……?」
 ちゅる、と唾液を残しながら唇を離して、
ユニは照れたように傍らを見る。
「ふふっ……今日は、メイちゃんが見てるか
ら……」
「あっ……」
 ユニの言葉に気づいて、メイが俺達にじっ
と注目する。ユニは頭を退かして、手に握っ
た俺のものをメイへ見せつける。
「これが、フィル君の」
「わっ……なんだそれ、フィルの、そんなに
なるの……?」
「うん……本とかとは、違うでしょ?」
 メイは唇をむずむずさせて頷き、俺達の行
為に視線を注ぐ。
「じゃ、もう少し見てて――」
 ユニはあ、と開いた口から舌を出して、亀
頭の裏筋から竿にかけてを伝わせる。
「ん……はぁっ、あはぁ――」
「う……っあ!」
 長いストロークの刺激に、背筋がぴんと張
る。舌は竿を根本まで滑り降りて、今度は少
しずつ食むように舐めながら上ってくる。
「うあ……ユニ、それ、すごっ……」
「はぁ……ん、んんッ……フィル、くぅんっ
……」
 ぴちゃ、ぴちゃと舌が固い竿を撫でる。足
の間で、熱っぽく目を潤ませたユニが緩慢に
踊る。
「んくぅ……ぶるっ、て、震えた……」
 情熱的な奉仕で唾液に濡れた肉棒を、さら
にユニの舌がぺろぺろと拭っていく。亀頭の
下まで来ると、膨張した肉の溝を舌先で突い
てくる。
「は……あぁ、くぅっ……」
 細かく行き届いた舌使いに、身体は火がつ
いたみたいに燃え上がる。ユニは、輪を描く
ように溝を丹念に攻めると、やっと亀頭の先
へ顔を上げる。
「はぁ、はぁっ、ユニ……すごい……」
「ふふっ……でも、もう少しいじめるね」
「え――」
 ユニの声に、何故か背筋がぞくっとして。
 次の瞬間、ぬめりを帯びた媚熱が脊髄を駆
け上った。
「は――ぅん、ンむ……むっ……」
 ユニが頭を落として、小さな唇の中にペニ
スを飲み込んでいく。きゅっと窄められた唇
が、敏感になった肌を優しく愛撫する。
「く……はっ――ぁうっ……!」
 思わず、首が仰け反るのを止められない。
 舐められるような、吸いつかれるような、
柔らかく艶かしい刺激。それが一瞬で終わら
ず、亀頭からぬらぬらと竿を滑り降りる。
「んふ……ぅンっ……んんッ……」
 がくがくと震える足の間で、ユニの顔がゆ
っくりと下降していく。その度に、咥えられ
たペニスが口の中に沈んでいく。
「うぁ……あぁぁ……!」
 麻薬のような快楽と、淫靡な少女の姿に刺
激されて、ペニスは破裂しそうに膨れる。
「あ……あ……ユニ、そんなに、いっぱい…
…」
 大胆なディープスロートに、メイは息を飲
んで視線を注いでくる。その視線さえ、快楽
を増幅する刺激になる。
「はむ――んっ、んぁ……あっ……」
「く……ぅっ」
 唇を窄めた形のまま、ユニが時間をかけて
顔を持ち上げる。じわじわと唇にくすぐられ
て、唾液を塗りたくられながら肉棒が露わに
なる。
「ふぁっ……」
 可憐な唇が、グロテスクに膨れた屹立から
離れる。熱い息を零しながら、ユニは色っぽ
い微笑みを俺に投げかける。
「ユ、ユニ……このままは、ちょっと……」
 貪るような攻めで、身体の熱は抑えきれな
くなってきている。ここで止められたら、熱
が退くまでは拷問だ。
「わかってるよ。ね――メイちゃん?」
「えっ? なに、ユニ?」
 含み笑いで近づいてくるユニに、メイはす
っかり動転している。ユニが伸ばした指が、
するりとメイに絡んで――
「もう、大体わかったよね? メイちゃんも
やってみようよ」
「「ええっ!?」」
 またしても、俺とメイは悲鳴でハモった。
「ユ、ユニっ! それは、いくらなんでも…
…」
「だって、今夜は三人で、でしょ? メイち
ゃんだけ仲間外れはダメだよ」
「でも……ちょっとハードル高いんじゃ?」
「……むっ」
 メイが、きつい目つきで俺を睨んだ。
 あれ? 心配したつもりなんだけど……
「こんなこと言ってるよ? どうするの、メ
イちゃん」
 何故かにやにやしているユニに、メイは相
変わらずの険しい顔で答える。
「やる」
「いっ!? で、でもメイ……」
「うるさいっ。やるったら、やるんだ」
 聞く耳持たないという感じで、メイはなん
だか力みながら俺に迫ってくる。
「その調子その調子っ。大丈夫、私がついて
るからね」
 ユニと場所を交替して、今度はメイが俺の
股間に跪く。でも、やっぱり勃起したものを
前にするとかなり戸惑ってる顔だ。
「わ……ぬらぬら光って、大きくて……なん
か、すごい……」
 うろうろと顔を動かして、固く反り返った
男根を観察する。どこから触れていいのかわ
からないんだろう。
「ほら……さっきの私を思い出して、やっち
ゃえ」
「う、うんっ……」
 ユニに促されて、メイは素早く意を決する
とペニスに顔を近づけていく。こういう決断
の早さ、思い切りの良さは、やっぱりメイの
魅力だと思う。
「って、そんな場合じゃないっ……!?」
「あんっ……」
 そろり、と確かめるようにメイの舌先が触
れてくる。ユニの唾液にたっぷりと濡らされ
た亀頭が、新しい快感に反応する。
「あ……うごい、たっ……」
 びっくりしたように瞬きするメイ。
 でも、またすぐに舌使いを再開する。
「んぁ……あっ……濡れ、てるっ……」
 ちろ、ちろとまだおぼつかない動きで舌が
肉棒を撫で擦る。ユニの慣れ親しんだ技巧と
は違った、拙く冒険的な愛撫。
 それが、物足りないどころか酷く新鮮な刺
激になる。
「く……メイ、いいよ……」
「え? そう、なの……? んっ……」
 戸惑ったように俺を見上げながら、メイは
猫のようにちろちろと舌を使う。傍らで見守
りながら、ユニがまた何かを耳元で囁いた。
「今度は、キスしてみて。さきっぽに、そっ
とでいいから」
「ん……こ、こう……?」
 曲線を描くような頭の動きがまっすぐに変
わって、メイは首を傾げるように何度も揺ら
す。その度に、弾力のある唇がひたひたと亀
頭を撫でる。
「はぁ……っ、く、それも……」
 性急さのない、緩やかでくすぐったいよう
な愛撫だけど、その染み込むような淡い快楽
がかえって心地好い。
 メイが、大きく膨れた肉棒へ熱心に奉仕し
ている姿もまた、脳を焼けつかせる。
「んんっ、ちゅ……熱いよ、フィルっ……」
 弱々しい声で、メイが喘ぐ。
 その声と、足の間に触れる感触とが、メイ
との交わりを否応なく意識させる。
「はんっ……ぅ、んっ、んぁっ――」
 小さく、でも断続的に響く唾音。
 次第に自信をつけて動き始める濡れた舌。
 メイが、その舌で、唇で、撫でている。
 意識して、背筋がぞくっとした。
「メイ――」
「うん……?」
 興奮している。メイの姿に。健気な奉仕の
もたらす快楽に。だから、こんなことを言う
んだ。
「今度は口、使って……さっきのユニみたい
に、してくれるかな?」
「さっきの……? あ、っ……」
 メイもすぐに思い当たって、じわりと顔が
赤くなる。でも、嫌がりはしなかった。
「あ……」
 呆けたように開かれるメイの唇へ、弱く躍
動するペニスが飲み込まれていく。
「んっ、く――むぅぅっ……」
 フェラチオに苦心していたせいか、メイの
口内は唾液で濃厚に濡れていた。竿が飲み込
まれるにつれ、張り詰めた表面にたっぷりと
熱い唾液が零れて沁みる。
「くっ……そう、上手……」
「んンっ……」
 頭だけで頷いて、メイはさらに深くペニス
を含む。ずる、ずると唇に擦られると、堪え
がたい痺れが背筋に込み上げる。
「その、まま――動いてっ……」
 絞り出した声に呼応するように、手で支え
たメイの頭が緩やかに上下運動する。
「く……んっ、んむっ、むうぅっ……!」
 唾液が肉棒に絡みつく。かすれた喘ぎ声に
混じって、唇がおっかなびっくりに竿を擦り
つける。
 興奮で、頭が溶けそうになる。
「うあ……! メ、メ――イっ……!」
「むふふっ。それじゃ、そろそろかな」
「ん、ユニ……?」
 しばらく身を引いていたユニが、楽しげに
俺達のほうへ近づく。
「あぁ――むっ……」
「うぁ……!」
 身構える暇もなく、メイに撫でられてひく
つく肉棒へ、もう一つ新たな舌が絡みつく。
「あ……っ、ユニ……?」
「ん、ふっ……今度は、メイちゃんの味方だ
よ……フィル君はね、ここを、こうしてあげ
れば――」
 ちゅくちゅくと、亀頭がメイの唇に撫でら
れる。そのすぐ下、裏筋の部分に甘い刺激が
走る。
「くあっ……!?」
 ちょっとした攻めなのに、身体は思った以
上に快楽を訴える。メイの刺激で張りを取り
戻していた肉棒が、ぶるりと跳ねる。
「あ……ホントだ。なんか、効いてる?」
「ね? 私と一緒に、フィル君をやっつけち
ゃおう」
「――うんっ」
 共通のイタズラを思いついたみたいに、ユ
ニとメイはすごく楽しそうに微笑み合った。
 ……で、でもこれは一大事かっ!?
「ユ、ユニー、裏切ったなーっ!?」
「ふふふ、表返ったのさっ。それじゃ、覚悟
してねー」
「うわわっ……」
 そして、姉妹による夢のような奉仕が始ま
った。メイは相変わらず亀頭にむしゃぶりつ
いて、その下でユニが袋や竿の根本をねっと
りと攻めてくる。
「ふ、二人がかりって、こんなっ……」
 性器を這う二つの柔肉は、さっきまでとは
比べものにならない快感を絶え間なく叩きつ
けてくる。
「あは……すごいよ、ここまでびくびく震え
てる……」
 ユニの舌が陰嚢を撫でると、痛み混じりの
不思議な快楽が電気のように走る。痺れが昇
っていく先で、暴れる亀頭をメイの唇が必死
に包み込んでいる。
「うぁ……んっ、は――む、フィ……ルっ、
んぅっ……」
「うく、あっ!」
 ちゅう、と喉を使われて、亀頭全体が吸い
上げられる。快楽に身体が曲がって、股間に
絡みつく双子の姉妹を見下ろす形になる。
「もう……ハレツしちゃいそうだね。メイち
ゃん、もっと強くしちゃえっ……」
 囁きながら、ユニも陰嚢から竿にかけてを
滑るように舐めてくる。
「もっと、強く……ん、んンっ……!」
 メイが顔を下げて、いっぱいに口へ含んだ
亀頭をじゅぷじゅぷと湯掻く。破裂寸前まで
膨張した性器は、大胆な摩擦で一気に射精を
促進させられる。
「う……あ、は、うぅ……!」
 足の爪先に生まれた大きな震えが、まっす
ぐに何度も身体を駆け上る。身体の奥から、
粘ついた熱が溢れてくる。
「んっ……メイちゃん、一緒に……」
 ペニスのつけ根を熱っぽく攻めていたユニ
が、顔を上げてメイの横に並ぶ。二つの柔肉
が、弾けかけた肉棒を揃って舐めてくる。
「は……ぁむっ、すご……ぃっ、いっぱい、
脈打ってるよ……」
 ユニの舌が、左から撫でるように男根を舐
め上る。濃密な唾液が、亀頭のくびれを伝っ
て零れる。
「んっ、あ……フィ……ルぅっ、どんどん、
こぼれて……あぁっ……」
 メイも、右から舌を筆のように使って肉棒
を上ってくる。時折触れる唇がじわりと熱を
伝えると、思わず達してしまいそうになる。
「は……あっ、メイ、ユニ――も、う、俺っ
っ……!」
 姉妹の舌に昂ぶらされるまま、射精を押し
留める理性が刻一刻と削り取られる。
 痛々しいくらいに膨らんだ亀頭を、二つの
舌がつぅ、と滑ってくる。
「あ……ンむぅっ……」
 最初に、ユニの舌先がとどめとばかりに鈴
口の割れ目をくすぐった。メイは、すぐにそ
れを追いかけてなぞる。
「んく、うぅンっ……」
 二度目の刺激は、とどめの一撃。
 ユニの舌が蠢く狭い場所を、メイの舌がも
う一度艶かしく撫でた時、鎖が千切れた。
「く、うぅぅっ……!」
 ペニスがうねるように震えて、先端から白
い粘りが弾け飛ぶ。
「んっ……きゃ、あ――ぁンっ……!」
 激しい飛沫に眉を顰めて、ユニは顔を汚し
ていく精液に身を震わせる。
 鼻先も頬も汚されて、恍惚としながら、そ
の指が射精を続ける男根をメイへと向ける。
「あ……っ!? んっ、あつ……いっ、うぁ
……はぁぁぁっ……」
 とめどない射精は、メイの顔のあちこちを
白く塗りたくる。
「あ――んっ、ぅっ……」
 頬や唇を滑り落ちる精の熱さに、メイはぼ
んやりと顔を呆けさせた。
「うわ……ご、ごめん、二人ともっ!」
 あまりに淫靡な光景に、射精の気だるさも
忘れて一瞬見惚れる。でも、そんな場合じゃ
ない。慌ててベッドの脇からティッシュを引
っ張る。
「ん……ストップ、フィル君……」
「えっ?」
 まだ幾つもの白い雫を垂らしながら、ユニ
が手でそっと俺を制する。そのまま、気が抜
けたようにへたり込んでいるメイへと近づい
て――
「ふふっ……メイちゃん、フィル君のがいっ
ぱい……」
「ユニ、だって……そうだろ……」
 同じくらい淫らに汚れた姉妹が、くすくす
と微笑み合いながら互いを見つめる。
「キレイにしてあげるね……」
 ユニの赤い舌が虚空に伸びて、メイの頬に
残った精液をすくった。
「ひゃ……ぁぅっ……!」
 弱々しく身を震わせるメイに、ユニはさら
に顎や唇の粘りを啜るように舐め取る。
「ね、メイちゃんは、してくれないのかな…
…?」
 拗ねたように唇を尖らせるユニ。
 そんな顔をされたら、メイがじっとしてら
れるはずなんてない。
「ん……っ、ちゅ……」
 首を傾げるユニに近づいて、垂れ落ちそう
な雫を舌に乗せて拾う。そこから少しずつ唇
へ向かって、ユニの顔を拭っていく。
「ありがと、メイちゃん。じゃ、お返しー…
…んっ」
「ふぁっ……ユニぃっ……」
 メイはユニの、ユニはメイの顔を互いに舌
で洗い始める。時折くぐもった喘ぎを漏らし
ながら続く絡み合いは、心臓を殴りつけられ
るように強烈なエロスに満ちていた。
「〜〜っ!」
 あれだけ射精した後なのに、二人を見てい
るとまた股間に血が集まってくる。しかも、
二人とも俺をそっちのけで、うっとりとキス
に集中しきっていた。
「あのう……俺、もう限界寸前なんだけど…
…」
 控え目に口を挟むと、すっかり白濁を拭わ
れたユニが“待ってました”の笑顔で囁く。
「それじゃ――しちゃおうか。三人で」
 もう、誰も歯止めなんて残ってない。
 俺もメイも、誘惑めいた言葉に食いつくよ
うに頷いた。
「そろそろ、脱いじゃわないとダメだね。ほ
ら、メイちゃんも」
「あ、う、うんっ……」
 示し合わせて、二人は俺の前でするすると
衣服を床に脱ぎ落とし始める。メイはユニの
イタズラでもう半裸だったけど、残ったスカ
ートと下着が引かれていくのにドギマギして
しまう。
「フ、フィル……じろじろ見られると、やり
づらい……」
 下着にかけられた指が迷走して、メイは困
ったように俺を見る。どうやら知らずに見入
っていたみたいだ。
「ご、ごめんっ」
「あー、なんかメイちゃんばっかり見ちゃっ
てるなー?」
「そ、そんなことないですって!」
 ユニは俺の視線を惹きつけるように、殊更
時間をかけて一枚一枚と肌を晒していく。
「うう……」
 何度も見ている姿とはいえ、ブラのホック
を捻り、細い腿を三角の布地が滑り落ちてい
く姿には、思わず喉が鳴ってしまう。
「はい、おまたせしました」
 そして、とうとう一糸纏わぬ姿になった双
子の姉妹が、目の前で寄り添う。眩しいくら
いの白い肌、上気した頬、ぞくぞくするほど
似通った二つの顔。
 改めて、禁忌的なものに触れていることを
意識させられる。
「だからあんまり見るなって……」
 ユニほど俺の視線に慣れていないメイは、
身体を曲げたり手を添えたりして肌を隠そう
とする。
「ちゃんと見ないと、できないよ? メイち
ゃんとフィル君は、これからひとつになっち
ゃうんだから」
「ひ、ひとつにって……」
「もちろん、私も。だから、恥ずかしがらな
いで一緒にしよ」
 さすがお姉さんか、ユニは不慣れなメイを
甲斐甲斐しく導く。メイもやや不安げながら
覚悟を決めたようだった。
「じゃ、フィル君。そこに寝ちゃって」
「あ――うん」
 言われるまま、ベッドに登って身体をシー
ツの海に投げ出す。そこへ、まずメイがつい
てくる。
「メイちゃんは、そっちね。膝立てて、フィ
ル君に乗っかってみて」
「こ、こう……?」
 メイはおっかなびっくりで俺の下肢に跨っ
て、膝を立てたまま見上げてくる。否応なく
開かれた股が気になるのか、頬にはいっそう
の朱が差す。
「大丈夫か? メイ」
「ん……なんとかね」
 顔も肌も赤くしたまま、メイは気丈に微笑
んでみせる。その頑張りがいとおしかった。
「私は……ここかな、フィル君?」
「わ……」
 視界が急に切り替わる。続いてベッドに上
がったユニは、ちょうど俺の頭の上に跨るよ
うにメイと同じく膝立ちになる。
 つまり、一糸纏わないユニの股間を間近で
見上げる形になる。
「……っ」
 卑猥な光景に、脳をかき回される。触れて
こそいないものの、激しすぎるくらいの前戯
で秘裂は淡く潤んで、スリットから蜜を染み
させている。
「ん……フィル君、見てる……」
「のうみそ、溶けそう……」
「あはは、まだ溶けちゃダメだよ。最初は、
メイちゃんをきちんとしてあげてね」
「ん――」
 深く頷く。こんな倒錯的な夜だけど、メイ
にとっては初めての夜だから。ふと、あの夜
に笑顔で俺を受け容れてくれたユニを思い出
して、胸が熱くなる。
「おいで、メイ。俺もユニもついてるから」
「う、うんっ……」
 メイの指が、まっすぐに上向いた男根に触
れる。そこへ、ユニがさらに手を重ねた。
「慌てないでいいよ。最初はきっと痛いから
……ゆっくり、少しずつね」
「うん、やってみる」
 二つの手に包まれたまま、ペニスの切先が
メイの未開の場所へ触れる。そこは、ユニと
同じく思った以上に濡れていた。
 多分、あの脇攻めがかなり効いていたんだ
ろうと思う。
「うぁ……あっ、お――っき、いっ……」
 少しずつ体重がかかって、濡れた肉の中に
亀頭が沈んでいく。絡んだメイの指が、僅か
に震える。
「ゆっくり、ゆっくりね……」
 ユニは俺の上でメイの身体を支えて、挿入
を助ける。触れられているからか、メイも慌
てずに少しずつペニスを受け容れていく。
「あぁ……は、ぁぅぅっ……」
 切なげなメイの声。膣内も拙く収縮して、
初めての侵入者を圧迫する。ずる、ずると肉
棒が擦られ、奥を目指すほどに締めつけが増
してくる。
「もう少し、行けるところまで進めて。ぶつ
かったら、一端止めるの」
「ん……んぅ……っ」
 身体の中を擦られる感触にもじもじと腰を
くねらせながら、メイは挿入を続ける。
 やがて、屹立が僅かな抵抗に突き当たり、
メイもそれに合わせて腰を止めた。
「はぁ、はぁっ……」
「届いた……?」
 汗を指ですくうユニに、メイは息をついた
ままで小さく頷く。
「ここからは、ちょっとだけガマンが必要だ
から。でも、少し頑張ればちゃんと良くなれ
るよ。フィル君と、一緒にね」
「うん……ユニとも、だろ?」
「もちろんだよ、メイちゃん」
「じゃ、できるよ。二人に待ち惚けなんか、
させないから」
 そして、姉妹は触れるような軽いくちづけ
を交わす。唇が離れると、メイは大きく息を
吸ってから俺に囁いた。
「いくよ、フィル……」
「うん。がんばれ、メイ」
「ぅ……んっ……!」
 メイの身体が沈んで、ペニスがぐいぐいと
聖域を進んでいく。頑なな抵抗が、少しずつ
押し開かれる。
「く――あぁっ……!」
 苦しさがあるはずなのに、メイは強く身体
を落として一気に奥までを貫かせる。
「メイ! そんな、一気にしたら……」
「いい、からっ……んっ、あたしに、させて
――」
 メイはさらに腰を落としていく。俺は息を
飲んで、じっと身を任せる。
「ん、っ――!」
 なにかの途切れる感触とともに、抵抗が嘘
のように消え去る。瞬間、メイの身体がびく
びくと大きく痙攣した。
「うぁっ……! あ、あく、あぅっ……」
 メイは懸命に破瓜を受け容れようと、くぐ
もった悲鳴を漏らす。きつく閉じられた瞼に
涙が滲んだ。
「メイ……!」
 思わず、呼びかけた。メイは、俺やユニと
繋がろうって、こんなにも頑張ってくれたん
だから。
「バカ、なんて、声出すんだ……だい、じょ
ぶ――だって……」
 いくらメイが気丈だとはいっても、破瓜の
痛みはそう耐えられるものじゃない。ペニス
を受け容れきると、メイは荒い息をつきなが
らしばらく震えつづける。
「メイちゃん……」
 たまらなくなったのか、ユニは目尻に涙を
溜めたメイをそっと抱き寄せる。裸の胸と胸
を寄せて擦りつけ、何度もキスをして、破瓜
の痛みを愛撫で癒す。
「んぁ、ユ、ニっ……くすぐったいよ」
「よくがんばったね……」
「へへ……」
 震えた声で、それでもメイは笑った。
「ご苦労様、メイ。あとは、ちゃんと俺達で
良くするからな」
「あ……フィル?」
 やっと身体を動かしはじめたメイに手を伸
ばして、開かれた腿や丸いお尻を撫でる。
「ひゃっ……! こ、こら、フィルっ! そ
んなあちこち、撫で……あっ、うんっ……」
 くすぐったそうに、メイが色っぽい声を上
げながら俺の上で暴れる。
「ユニのお手伝いだ。ほら、動かないで」
「ば、バカっ! こんなの……うぁっ、じっ
と、してられる、わけあるかぁ……!」
 足の間で暴れるメイのお尻が、腿に当たっ
て心地好い。少しずつ元気を取り戻していく
声に、なんだか嬉しくなる。
「じゃ、そろそろ私もお願いしちゃうよ、フ
ィル君……」
 不意に、頭の上でユニが身を捩る。
 見上げると、密接したユニの股間へ指が伸
びてくる。二本の指が、濡れた亀裂をぱっく
りと割り開いて、俺に見せつける。
「ユ、ユニ……」
「ね、しよう……三人で」
 甘えるように、ユニが俺を見下ろす。メイ
も、促すように腰へ重みをかけてきた。
「うん――じゃ、いくよ。メイ、ユニ」
 頷くのに合わせて、ユニが顔の上で膝を折
る。甘く潤った秘裂が、唇を圧迫する。
「ん……むっ」
 ここまできたら、遠慮なくその花弁にむし
ゃぶりついた。舌をくゆらせ、さっきのお返
しと言わんばかりに膣を舐る。
「あっ……ん、くっ、ふぁぁんっ……!」
 俺の胸に手をついて、ユニがそわそわと足
を泳がせる。広げられたいりぐちの周りを丹
念に舐め、垂れてくる蜜を味わう。
「あ……はぅぅっ……! ねっ、メイちゃん
も、ちゃんと、だよっ……」
「わかってる……」
 息苦しいくらいにユニの股間を吸って、い
よいよメイとの繋がりを楽しみ始める。
「あっ、フィ――ルっ……!」
 メイの腰に両手を添えて、下からゆっくり
と腰を突き上げる。長いストロークで、膣内
を満遍なく撫でる。
「もう、大丈夫か?」
「うん。ちょっとひりひりするけど、なんと
か……」
「じゃ、行くからな」
「いいよ、来て……ユニと一緒に、して」
 ペニスが、再びメイの奥に到達する。
 メイの反応を確かめた後、俺はリズムをつ
けて腰を使い始める。
「あぅっ……! ふぁ、あっ……なか、で、
うごいてっ……」
 とん、とんと肉棒がメイの膣を上る。溢れ
た蜜が律動を助けて、勢いをつけてくれる。
「んくっ、あ、あぁっ! フィ、ル、フィル
ぅっ……!」
「キレイだよ、メイちゃんっ……」
 乱れるメイに呼応するように、顔の上のユ
ニも上下に腰を揺らす。重なる時のように、
舌の上で膣が艶かしく蠢く。
「む……ふっ……ユ――ニ、メイっ……」
 音を立ててユニの膣を吸いながら、次第に
腰へ勢いをつけていく。メイは腰の上でユニ
の動きを真似ているらしく、俺の律動に合わ
せてくい、くいとお尻が下がってくる。
 身体の上下で、卑猥に肉がぶつかる音が響
く。
「ひぁ、あンっ、も――っと、フィル、くぅ
ん……!」
「あ……っぁ、んんっ、くぅっ……とど、く
っ……!」
 ただでさえ魅惑的な喘ぎ声を、ユニとメイ
は二人で揃って浴びせてくる。鼻にかかった
ユニの声、息を切らせたメイの喘ぎが、頭を
真っ白にしてしまう。
 ホントに、おかしくなりそうだ。
「くっ……」
 荒々しく、二度、三度とメイの中を突き上
げる。
「あっ、あぁ、あっ……! フィル、つよ、
いよぉっ……!」
 メイが上体をふらつかせて、股間を俺に押
しつけるユニにもたれかかる。
 ユニは優しくメイを抱き止めて、そのまま
濃厚にキスをする。
「は……んんッ、ユ、ニぃ……」
「メイ……ちゃぁん……んっ……」
 俺の上で瓜二つの姉妹が裸を弄り、唇を寄
せ合う。ちゅくちゅくとくちづけの音が響い
て、甘い吐息が漏れる。
「ふぁぁっ……」
 二人は絡み合いながら、次第に息を合わせ
て俺の上で踊る。突き出した舌に押し付けら
れるユニの膣と、張り詰めた男根を締め付け
るメイの膣が、刺激のリズムを合わせる。
「う……っく、くあ、そんな、一緒に……」
 二人同時の淫靡な攻めは、蕩けるような快
楽と興奮を絶え間なく与えてくる。
 意識が霞みそうになるのを堪えて、悩まし
く踊る姉妹の姿を目で楽しむ。
「んン……した、はい、ってるっ……!」
 膣奥を舌に突かれると、ユニが背をくの字
に反らせて跳ねる。その身体に縋って、メイ
は伏せた瞼を堪えきれないように震わせる。
「あ……あたし、もっ……フィルのが、なか
で、暴れて、るっ……うぅんっ……!」
 絡み合い、もつれ合って乱れる二人から目
が離せない。甘い声が漏れ、汗に濡れた肢体
が躍るたびに、肉棒が熱く緊張する。
 やっぱり、同じ顔をした女の子が二人で絡
みあっている姿というのは、くらくらする。
 しかもそれが、誰より見知ったユニとメイ
なんだから。
「ん……うごいて、フィル君っ……もうすこ
し、だからぁっ……!」
「あ……」
 思わず律動も忘れて二人に見入っていた。
 ユニの声で我に返って、二人の動きに合わ
せるように律動を再開する。
「あ……んんんっ……!」
 しとどに濡れたメイの中を、忙しく往復す
る。熱く潤んだ肉壁が、射精感を抑えきれな
くなってきたペニスを心地好く締めつける。
「私も……ちゃんとしてっ……」
 開いた口に、潤った秘裂がぐっと押しつけ
られる。誘われるまま、ひくつく内壁をこれ
でもかというくらいに舌で撫でる。
「ん……あっ、フィル、くっ……わたし、弾
け、そうっ……!」
「うぅんっ……!」
 ユニに続いて、大胆に腰をくねらせるメイ
も耐えかねたようにぶるりと震える。
 俺も、これ以上は耐えられる自信がない。
 このまま、一気に――
「ふぁっ、あ――! フィルが、なかで、お
お、きくっ……」
 息を詰めると、ペニスがさらに一回り膨張
する。杭めいた太さの性器で、理性の続く限
りにメイの中を掻き回す。
「あ……や……あつ、いっ……! ダメ、フ
ィ、ルっ、もうっ……!」
 甘い悲鳴を上げるメイに、さらに深いスト
ロークで肉棒を突き入れる。身体が反り、ユ
ニが指で開いた秘裂へとどめのキスを浴びせ
る。
「あ……っ! や、あうぅぅっ……!」
 ユニが大きく震えて、柔らかい太腿で俺の
顔を挟み込む。痙攣とともに、熱い蜜が口の
中へいっぱいに降り注ぐ。
 同時に、俺も限界を迎えた。
「く……メイっ……!」
 圧倒的な白が、意識を押し流す。
 下腹で感覚が弾けて、俺はメイの膣へ大量
の精液を吐き出した。
「あ……あぁぁぁっ……! や……ぁっ、い
っぱい、でて――るっ……!」
 どくん、どくんと肉棒が脈打ち、濃厚な粘
りがメイの膣内を浸していく。メイの裸身が
震えて、射精を続けるペニスを肉襞が淡く締
めつける。
「うぁ……あっ、まだっ……んンっ……」
 メイは脱力したユニを抱き締めながら、射
精の感触に身悶える。有りっ丈を放出し尽く
して、俺も止めていた息をようやく吐き出せ
た。
「あ……うっ……」
 すべてを受け止めると、メイは力尽きてユ
ニにくずおれる。ユニも受け止めきれず、二
人はもつれ合うように俺の上へ倒れこんだ。
「大丈夫か、二人とも……?」
 脱力した身体を支えてやると、ユニとメイ
は俺の上で抱き合ったまま静かに頷く。
 ユニが、ふらつく頭を揺らしてこつん、と
メイに額で触れる。
「えへへ……メイちゃんと二人でしちゃった
……」
「うん、ユニと……フィルと、三人で……」
 メイも照れ臭そうに額を寄せて、目を伏せ
る。唇が、幸せそうにほころんでいる。
「ね、フィル」
「うん?」
 不意に、メイが上から覗き込んでくる。
「フィルは、良かった……?」
「あたりまえだろ。クセになりそうだよ」
 手を伸ばして、メイの頭をくしゃくしゃ撫
でてやる。また恥ずかしそうに、でも嬉しそ
うにメイの顔が輝いた。
「私は、もっと早くこうしたかったなあ」
 ユニが感慨深く呟くと、メイはばつが悪そ
うに俺の上で身体を縮める。
「同感だけどさ、やっぱり今夜みたいなきっ
かけが無いと難しかったんじゃないかな」
「そ、そうだよっ。あたしだって、恋人同士
のことだから、ってそれなりに遠慮してたん
だぞ……」
 唇を尖らせるメイに、ユニは無邪気に笑っ
てほっぺたにキスをする。
「でも、これからはずっと一緒だよ」
「……うん、ユニ」
「おいおい、俺だけ置いてけぼりにしないで
くれよー」
「「わぁっ!?」」
 寂しくなって、野暮とは思いつつ下から二
人を両手で抱え込む。ユニもメイも、鏡に映
したみたいな驚きの顔の後、しょうがないな
って風に笑った。
「しないよ。私と、メイちゃんと――」
「それにフィル。三人で、いつも一緒だ」
「ありがと。じゃ、このまま三人でおやすみ
しようか?」
「うん――する」
 ユニがころりと胸板を転がって、俺の傍ら
に寝転がる。メイもそれを真似て、反対側に
横たわった。
 手を伸ばして、照明のスイッチを消す。
 部屋が闇に包まれる中、メイの声だけがは
っきりと耳に届いた。
「おやすみ、フィル、ユニ……今日は、楽し
かった」
「明日からも、楽しいさ。おやすみ、メイ」
 心地好い疲れの中、二人の少女を腕に抱き
締めて、俺も眠りに落ちていった。


 4/

 メイを加えた本格的な三人での暮らしが始
まって、早いもので一月が過ぎた。今日も、
皆で街に出て楽しい買い物の真っ最中だ。
 ユニとメイは大はしゃぎで靴を見たり、新
しい服を選びあったりして大いに散財。
 で、荷物運びは僕。いいんだけどねっ!
「ふう……」
 両手いっぱいに箱や袋を抱えながら、街頭
のウインドウを眺める。でも、心はまったく
別のところへ飛んでいってしまっていた。
「なにやってんだフィル、ぼーっとして?」
「あ……メイ」
 いつも通りにユニとおそろいの服で、メイ
がちょこんと俺の小脇に顔を出す。
「考え事か? それとも、疲れた? どっか
で休んでく?」
「ああ、いや、違うよ。――なんというかこ
う、最近夜が前よりぐっと刺激的になったな
あって……」
 頭を呆けさせる原因は、メイを引き入れた
ことで二倍も三倍も濃密さを増した夜のあれ
これだ。
 それこそ、こんなふうに日の高いうちから
思いを馳せてしまうくらい、姉妹と過ごす夜
はいつも淫らに愉しい。
 アリストテレス然り、俺も今や完全にドツ
ボに嵌まってしまっている。
「誰のせいだと思ってんだ。……今更だぞ、
あそこまでしといて」
 頬を少し赤くして、メイは責めるように俺
を見上げる。
「ははは……すいません」
「そうだよー、メイちゃんをえっちにした責
任、ちゃあんと取ってね?」
 先を歩いていたユニも兎みたいに跳ね戻っ
てきて、メイに加勢する。
 ……でも、ちょっと待ってくれ?
「いや、えっちにしたって、あれは概ねユニ
さんが原因では……」
「あー、ひっどーい! あそこまでしておい
て白を切るんだよメイちゃん!」
「へーえ、このメイさんを遊びで抱いたって
いうんだ、フィルは?」
 腕組みをして、メイは挑戦的な瞳で俺を睨
みつける。
 ……あ、なんかすごくいつものメイだ。
「きっと飽きたら私もまとめて捨てるんだよ
ー、それでそれで、先輩の無垢な身体やスー
ファさんのむちむちボディを……」
 ユニはメイの首に手を回して、いかにもこ
いつ(つまり俺)がワルモノだー、と言わん
ばかりに指差してくる。
「ほほー、白を切るだけじゃなくて浮気まで
するんだ。いーい度胸じゃん?」
「そ、そんなこと言ってないだろっ!」
 慌てて反論すると、メイは固めた握り拳を
おさめて、ぴ、と俺を指差す。
 そして、とうとうユニの子悪魔スマイルま
で身につけて、俺を笑顔で射抜く。
「じゃ……取ってくれるんだよね、責任?」
 これはダメだ。ユニ一人でもたじたじだっ
たのに、こんな笑顔に二つも並ばれたら、も
う打つ手なんてない。
 覚悟を決めて、心ゆくまで楽しもう。
「――はい」
「そうこなくっちゃ! じゃ、帰ろうぜ」
「あ、メイちゃんは右ねっ。私は左ー」
 ぴったりと息を合わせて、ユニとメイが左
右から腕を絡めてくる。荷物が落ちないよう
に気をつけて、二人に歩幅を合わせる。腕を
引いて先導するユニが、感心したように荷物
の山から俺を覗きこむ。
「フィル君身軽ー、荷物、重くない?」
「実はとっても重いんですが……」
「あはは、男の子はファイトファイト! そ
のかわり、帰ったらおいしいゴハンが待って
るよ。それに――ね?」
 ユニが、何かを言いたげに反対側のメイへ
アイコンタクトする。
「ん……そうだな。こき使ったお礼、してあ
げる」
「が、がんばるっす!」
 なんだか途端に足の爪先まで元気が漲って
きた。待ち遠しい。ゴハンも、それ以外も。
 だから、急いで帰ろう。
 俺と、ユニと、メイ。三人で一つの、楽し
い我が家へ。
 ――爺ちゃん、リーナ。
 俺、しばらく帰れそうにないです――

               【Fin】


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