〜好きということ〜













  「こんばんは、志貴くん。」

  「こんばんは。さつき。」




  何度、このやりとりをしたのだろう。

 今日は、聖なる夜。クリスマス。

  私は志貴くんの隣にいる。

 多分、中学校に居た頃の私からは想像も出来ないだろう。

 そして、今日は二人で過ごす夜。

 いつも以上に鏡に向かって、いつも以上にリップの色を考える。









 「じゃ、さつき。父さんと母さんは三日間旅行だから。」

 そう言って、二人は出かけてしまった。

 世間を甘く見てるのかな?最近のカップルとか・・・。

 って私もそうじゃない?!なんて考えたり、あたふたしてる。

 それでも、何よりも、今日は志貴くんと過ごせるのが嬉しかった。

 だって、

 「さつき、明日、会えないかな?二人だけだけどさ、パーティーをしよう。」

 そんなこと言われたんだから。

 私たちは付き合っているけれど、そういう冷やかしに弱い。

 乾くんなんかは、よく冷やかしてくるし、それのせいか、クラスのコにまで

 冷やかされるようになった。

 そういうときは、志貴くんも私も教室では小さくなっている。

 でも、帰りに一緒にいるときに思い出して、二人とも言葉を出せなくなったり。









  「よし。完璧!」

 鏡の前に格闘し始めて38分29秒。

 やっと満足いった。

 ふと、時計を見る。

 待ち合わせは、6時に大通りの映画館・・・だから、今は5時48分?!

 「わ〜、デートなのに遅れちゃう!」

 そう言って私は急いで靴を履いて玄関を出た。

 両親が出かけてるのを忘れて鍵を閉めに戻ったり・・・。

 「あぁ・・・志貴くんを待たせちゃったな。」

 急ぎながら呟く。

 そうやって、大通りについたのが6時10分。

 10分も遅刻。

 志貴くん、怒ってるかなぁ・・・。なんて考えながら、映画館の前に

 着いた。

 「志貴くん、ごめん。」

 開口一番に言う私。

 志貴くんは笑って

 「いいよ。俺も少し遅れてたんだ。秋葉のやつがうるさくてさ。」

 頬を軽く掻きながら言う。

 「じゃ、チケット買っていたし、入ろうか?」

 そう言って、志貴くんは私の手を取って映画館の中に入った。

 私は、少しビックリしちゃったけれど、それが嬉しくて、その手を

 握り返した。

 「・・・えっと、さつき。あそこにしようか?」

 照れながら言う志貴くんはなぜか可愛い。

 こんなこと、前は思う余裕すらなかったのに。

 座席を指差して、志貴くんが言う。

 私は別のことを考えていたなんて言えずに、ただ頷いた。












  「あぁ・・・面白かった。」

 私は映画館を出た瞬間に言う。

 でも、本当はただ、志貴くんと過ごせたのが嬉しいだけ。

 同じ時間を過ごすのが・・・。










  「ねぇ、志貴くん?これから、家に来ない?パーティーしよ?」

 私はいつもの3倍の笑顔で言った。

 恥ずかしさも3倍で、顔が真っ赤かもしれない。

 それを聞いた志貴くんは

 「そうだな・・・。秋葉には連絡しないとな・・・。」

 と苦笑いしながら言う。

 私は秋葉さんとはそんなに話したことはないけれど、綺麗なコだったし、

 ちょっと、凛とした厳しさみたいなのがあるけれど、優しいから、志貴くんの

 苦笑いがわからなかった。

 そう言って、志貴くんは、近くの公衆電話に走っていった。











 「あぁ、OK取れたよ。じゃ、いこうか?さつきの家に。」

 そう言って、志貴くんと歩き始めた瞬間、

  












    ―――ふわり、と私の肩に雪が当たった。











  「あ・・・雪・・・。」

  発作のように出た私の言葉に、

  「そうだね。ほら・・・。」










  ―――見上げれば、白い雪が沢山・・・。











  「遠野くん?」

  「ん?」











   「メリー・クリスマス」















  そう言って、私は志貴くんの手を、ぎゅっと握った。






















    〜〜〜Fin〜〜〜




















  あとがき   メリークリスマスです。   しにをさん、ぎりぎりに送って申し訳ないです。      それに25万HITおめでとうございます。   ・・・あれ?   15万、書いたのが・・・確か、二ヶ月くらい前でしたね・・・。   カウンターの回転、すごいですね。   それも、しにをさんの筆力なのでしょう。   最近、顔出せてなくてすいません。   本当におめでとうです。                            TAMAKI                         
                              二次創作頁へ TOPへ