いや、まだマシなんだと思う。
 最初は生きた心地がしなかったから。
 徐々に近づきつつある崩壊の極限を目の前に、どうする事も出来ずに頭の中
でタスケテと叫ぶしか出来なかった。

 対峙する二人の間に挟まれて、胃にキリキリした痛みを感じるのなんてもう
慣れっこだったのに……、不本意ながら。
 アルクェイドとシエル先輩とか。
 シエル先輩と秋葉とか。
 秋葉とアルクェイドとか。
 ……。
 思えば不憫な日常だな、我ながら。

 でも、そんなものとは次元が異なっていた。
 多大な破壊を伴う乱闘でも、
 拳が舞う肉弾戦でも、
 いやそれどころか、声を荒げたり、聞くに堪えない罵詈雑言が飛び交ったり
するわけでもなかったけれども、
 それは恐ろしい緊張感に満ちた戦いだった。
 間違いなく。

 イチゴさん、いや乾一子と、
 先生、いや蒼崎青子による、
 凍てつくような殲滅戦。

 ……なんだって、こんな事に。 
 なんだろう、ずっとこんな修羅場に居合わせているような気がする。

 互いに、互いを見つめて、何か心に感じるものがあったらしく、俺が紹介す
ると、ふーんと頷きながら、じっと目に嫌な光を宿していた。
 そこから始まった、悪意の込められたそれでいて礼節を保った質問。
 一見関係なさそうな自分の話。
 遠野家のさまざまな話。
 それぞれはそんなにたいした事ではないのに、言葉は刃のように閃き、その
度に二人の間に険悪な空気が生じた。
 その余波を受けて、俺は一人がたがたと震えていた。

 そんな状況を救ってくれたのは、アルコールだった。
 次々と空けられる杯、転がる酒瓶。
 二、三時間経っただろうか。
 だいぶ、様相は変化を生じた。
 

 

「初めて会った時に、ガツンとやられたのよ」
「ふうん」
「捨てられた犬みたいな顔でこっちを見てるの。
 正直、やばいものと目があっちゃったなあと思ったわ。
 だいたい、魔法使いとか魔術師なんてのはね、嫌われて憎まれて、皆から謂
われない中傷受けて、悪名買ってなんぼのものなのよ。
 そういうのには、否応無しに慣れるし、心の防御壁も厚くはなるわよ」
「なるほどね、青子ちゃんも大変みたいね」

 空いているビールグラスに瓶の残りを注ぎ込む一子さん。
 先生はぐっとそれを一息で呷る。

「それなのにね、可愛い男の子にすがるような目で見られるなんて、反則行為
だわ。私が帰ろうとした時の顔なんて、どうにかなりそうだったし。
 そうね、あれは今でも夢に見て幸せな気分になるわ」

 何故か泣きそうな顔でそう言うと、先生はバーボンの瓶を掴んだ。
 手酌で注ごうとしたのを、一子さんが瓶を奪って注ぐ。
 ありがとうと言いながらそのグラスを一子さんのグラスと、カチンとやる。

「先生って呼ぶのよ、先生よ、せ・ん・せ・い。
 ああ、何て甘美な響き。
 これは、教えてあげなきゃいけないでしょう。ねえ、一子ちゃん」
「うん、うん。わかる、わかる」
「わかるでしょ、あなたも同類だものね、私と。
 でも、さすがに……、その年で、ねえ?
 それでね、しばらく後で再会してからと思っていたのよ」

 さすがに、小学生に手は出せないよね、と先生は真顔で一子さんに訊ねた。
 一子さんは、自分のグラスを傾けながらしばらく熟考。
 迷いつつ、そうだよね……、多分、いけないよねと答えた。
 
 そんなに真剣に考えないと出て来ないんですか、答えは?

 しばらく無言でいる二人。
 何本目になるのだろうという空のビール瓶をぽいと背後に投げ捨て、今度は
一子さんが口を開いた。
 何か大事なものを思い出すような、半分夢を見ているような表情で。

「あたしもね、世の中全てに捨てられた少年の唯一の心を許せる友人、そして
その優しい姉というシチュエーションに酔ったわ」
「いいわね、それ。美味しい、美味しいわ」
「いろんなパターンを考えて、ああもしよう、こうもしてあげようって何度も
頭の中で予行演習したものよ。
 頭で考えるだけですまない事もあったけどね」
「わかるなあ。状況もいろいろ考えてアクセントつけて。いいわねえ」
「でしょう。だいたいね、ときどき有間って私のことも何とも言えない目で見
つめるのよ、これが」

 ドンとテーブルを叩く。
 うっとりとしている瞳。

「あー、いいなあ」
「唯一心配だったのが、あたしの弟なんだけどね。
 有間とは大違いで可愛げないのよ、まったくね。馬鹿だし」
 これが、他人への執着が無い癖に、有間とだけはべたべたとしててねえ」
「ああ、危ないわね、それ。ちょっと心惹かれるけど……」
「そっち方面行かないかって、これは本気で心配した。
 まあ、弟はノーマルだったし、だんだんと子供から少年それから大人の一歩
手前って処まで美味しく成長してくれたのに」

 一子さんがわなわなと震える。
 ぴきっと厚手のグラスにヒビが入る。

「横から現れた女に、初めてを盗られちゃったのよ」
「そうなんだってねえ」
「なあ、有間」
「志貴?」

 凍りついた。
 いきなりこういう話の進みをするとは思ってもみなかった。
 ひたすら二人のボーイ役を務めて慎ましくしていたのに、いきなり中央舞台
に引きずり出されてしまった。

 走って走って、どこまでも逃げていきたかった。
 だけど、先生と一子さんの視線が絡んだ瞬間に、足をあげる事すら出来なく
なった。
 足ががくがくと笑っていいる。

「そんな隅っこにいないでこっち来なさい」
「そうよ、お話しましょう、ねえ、志貴」
「…………はい」

 死刑囚の最後の歩行といった気分。
 一子さんと先生の間に隙間が空けられ、クッションが置かれた。
 はい、わかりました。
 座った。
 
 しかし、予想した尋問は始まらなかった。
 相変わらず、軽快に多種多様なお酒を呑んでいる二人が、俺にも勧めながら
乾杯を何度もしたり、どこから出たのかわからない突飛な質問で俺の悩ませて
くれる……、といった事が続くだけ。
 わずかにほっと安堵した時、さりげなく一子さんが訊ねた。

「ええと看護婦だったっけ」
「ええと、朱鷺恵さんはあの時はまだ大学生だったよ」

 地雷を踏んだ。
 ああ、危険だと知っていたのに。
 呆然としているうちに、二人は座っていた場所をずらした。
 並んだ二人の前に俺が座っている、そんな形に。

「朱鷺恵さん、ね」
「ふうん。綺麗な名前ねえ」
「名は体を表す、なんて無責任な言葉があったけど、きっと凄く素敵な人なん
でしょうねえ」
「あたしなんか、誕生日絡みでからかわれた名前だし」
「あおあお、とかいう渾名がどんなに腹立たしかった事か」
「朱鷺恵、ああ、美しい名前」

 なんだろう、この訳のわからない二人の反応は。
 そんなに名前がコンプレックスだったのか、二人とも。

「なんで、そんな女と」
「襲われたの?
 無理やり力づくで青い蕾を奪われて、そうなの?」

 何か答えようとしても舌が動かない。
 でも、何か答えないと殺されかねない迫力に、首を横に振る。
 かろうじて否定の意を示せた。

「そう、和姦なんだ」
「同級生とかには関心ないみたいだから、安心していたのに」

 あの、なんで急にしんみりとなりますか。
 一子さん、涙ぐんで。
 なんで、先生まで。

「せっかく育つまで待っていたのに、かわいそうな青子ちゃん」
「ううん、私より近くにいて見守っていた一子ちゃんの方がかわいそう」

 どうしよう。
 とりあえず、涙を拭うか何かした方がいいのか?
 でも、入り込めないよ、この雰囲気。

 でも、俺があたふたとしているうちに、その詠嘆の雰囲気はぴたりと消えた。

「これは、ねえ」
「かわいそうな私たちは慰められないといけないわよね」
「うん、一緒でいい?」
「水臭いわね、もちろんよ」
「話がわかるわね。じゃあ独り占めは無しでね」
「あの……、先生、イチゴさん?」

 ぼそぼそと相談する二人に、さっきまでとは違う恐怖を感じていた。
 ゆっくりと先生と一子さんはこちらを向いた。
 異様な目。
 
 あ、あ、あ、
 声が出ない。
 動く事も出来ない。
 ただ、二人が立て膝でにじり寄るのを見ている事しか出来ない。

 押し倒された。

「いいわね、その表情」
「そそるわ、その怯えた顔」

 シャツに手が掛かった。
 ベルトに手が伸びた。

「やめてよ、お願い」
「いいでしょ、気持ちいいことしてあげる」
「ええ、志貴にたっぷりと楽しい思いをさせてあげるわ」

 上気した顔で、二人は俺の抵抗を封じながら服を脱がせていく。
 前がはだけ、ズボンが膝まで下ろされる。
 このままだと、本当に脱がされて、二人に?

 じたばたと暴れた。
 信じられない恐怖を感じていた。
 先生とに奪われてしまう?
 一子さんとセックスする?
 ダメだ。
 そんなのダメだ。
 禁忌に触れるような、激しい拒絶意識。
 
 でも、ダメだ。
 何をどうやられているのだろう。
 いくら二人掛かりとは言っても、体格も力もこちらが勝っているのに、ほと
んど身動きすらままならなかった。 

 身悶えして訴える。
 知らず、涙が出てきた。
 声にも震えが混じる。

「や、だよ。先生と、一子さんが、こんな、こんな事するなんて……。
 先生のことずっと子供の頃から俺、なのに……。
 一子さんだって家族みたいに、お姉さんだて、それを……」

 言っているうちにどんどん涙が溢れた。
 自分でもわからない悲しさで嗚咽が混じる。
 もう、意味ある言葉すら口から出なかった。
 一子さん、先生、とただ繰り返し断片的に口からこぼすだけ。

 でも、いつの間にか。
 先生と一子さんは動きを止めていた。

「これは、さすがに……」
「できないね」

 二人で俺を宥める。

「わかったわ、無理やりなんてしない」
「うん、有間が嫌がることは止める」
「……本当?」

 二人で頷く。
 しゃくりあげながら、それを見る。
 ハンカチでぐしゃぐしゃな顔を拭きながら、一子さんが言った。

「しかし、よっぽど神聖視されてるのね、青子先生?」
「いえいえ、身内同然で愛されていて羨ましいわ、一子お姉さん」

 二人が苦笑を浮かべている。
 どこか、嬉しそうな悲しそうな顔で俺を見る。

「でも、確かめさせて」
「なにをですか、先生?」
「有間が大人になったってこと」
「そう、志貴がこういう事を受け入れられるようになったって事を」
「最後まで無理やりするような事はしない。だから……」
「ダメ?」

 返事を怖がる顔。
 一子さんも、先生も。
 それを無碍にする真似は、俺には出来なかった。

「いいよ、どうすればいいの?」
「志貴はそのままでいいの。ただ、寝ていてくれれば」

 頷いて、今度は自分から仰向けに横たわった。
 右に、先生が、左に一子さんが寄り添う。
 柔らかい体。
 しばらく二人ともじっとしていた。
 息をする音だけが聞こえる。
 くっついている処から体温が交じり合う。

「脱がすね」
「うん」

 先生が、囁いた。
 返事を待ってから、半ば脱がされていたズボンが引き抜かれた。
 先生と一子さんの視線をパンツだけになった股間に感じる。
 それも、脱がされた。
 
 黒々とした恥毛と、生殖器が露わになる。
 覗きこむ二人が息を呑んだ。
 縮こまっている。
 でも、二人の熱い視線を受け、それがゆっくりと頭をもたげた。

「可愛い」
「大きくなっていく……」

 二人で息が掛かるほど近くに顔を寄せる。
 それが恥ずかしくて顔を背けた。

「かわいがってあげる」

 そんな声がした。
 体に柔らかい頬と手の感触。
 鎖骨の辺りに触れた唇。
 あくまで優しく体を這う手。
 胸に伸びて、傷痕をそっと指で触れる。
 さわさわとした手がくすぐったい。
 一子さんの手がペニスに伸びる。
 根本を軽く握ってゆっくりと感触を確かめる様に、先まで動かした。
 震えるような快感。
 二度、三度と手がペニスを弄び、離れてしまった。
 思わず、あっと失望の声を洩らす。
 一子さんはくすっと笑い、頬に唇を寄せた。
 柔らかく暖かい感触。

 え?
 また、ペニスに手が伸びてきた。
 さっきと違い、さらに下の陰嚢を軽く握り、そこから手の平全体でペニスを
押さえるようにしながらさわさわと上下に動かしている。
 握られるのとは違った感触。
 それに手の感じが……、見ると今度は一子さんでなく先生だった。

「あたたかい」

 目を合わせると、そう言ってまた手を動かしてくれた。
 
 不思議だ。
 先生の手による快感にも震えているけれど、それより、
 触れられているという事実が胸の中に何かを生み出している。
 性的なものでなくて、もっと胸の奥が疼くような何か。

「ふぅっ……、あ…」

 声が洩れる。
 溜息のような胸からこぼれる声。
 先生の手が離れた。
 切ない。

 でも、その飢餓感を埋めるように、今度は一子さん。
 一子さんの手は俺に違ったものを与えてくれる。
 痛みにも似た先生の手から受けるものとは違った、暖かいもの。
 
「凄く大きくなっているよ、有間」

 一子さんの声に頷く。

「女の人の手でこんなに感じるようになったんだ」

 手つきが変わる。
 軽く握って感触を味わっていた手が、その握りを甘くする。
 ほとんど触れているか触れていないかわからないほど軽く。
 その羽毛のような柔らかい感触が動いた。
 しごくという言葉がふさわしくないような上下の動き。
 微かにペニスの幹に触れるだけの上下運動。
 それなのに、そんな摩擦もほとんどないのに、一子さんの手で俺は、呻き声
をあげた。
 信じられないむずがゆさ、快感、くすぐったさ。
 その混合は、未知の感覚を俺に与え、それ故に耐える術を知らず、受け止め
られない俺はほとんど逃げるように腰を動かしていた。

「あ、一子ちゃん、志貴のこと苛めちゃいけないわね」
「可愛いんだもの」

 一子さんは、ぎゅっとペニスを強く握った。
 そして、ちゅっとまだ息を荒げている俺にキスしてくれた。

「ごめんね、刺激が強すぎたかな」
「ちょっと……、でも……」
「でも?」
「凄く気持ち良かった。一子さんて凄い」

 一子さんは少し顔を赤らめて、もう一度ちゅってしてくれた。

「ずるいなあ、一子ちゃんばっかり」
「はいはい。じゃあ、いいわよ代わってあげる」

 先生がまた、俺のペニスに手を伸ばした。
 左手に睾丸を乗せて転がすようにしながら、右手のしなやかな指で、ペニス
の筋やカリ首をなぞり、鈴口からこぼれる先触れを亀頭の先に広げる。

「いい匂い。男の匂い……」

 呟くように言って鼻を近づけている。
 それに興奮して、また新たな腺液が分泌され、露のように現れる。
 先生は舌でそれをすくった。
 そのまま口に入れ、味わっている。
 また、ちろりと亀頭の先を舌で触れ、今度は唇を寄せた。
 軽い口づけ。
 びくんと脈打つペニスを唇で押さえる。

「ねえ、志貴。
 一子ちゃんと二人で、もっと志貴のここを可愛がってもいい?
 もっと涎を流して、最後にいっぱい気持ち良くなるまで」
「うん。あたしも見たいし、有間を気持ち良くさせたい。
 ダメなら我慢する。嫌なことはしないって約束したから」
「して下さい。嫌じゃないです」

 二人の手が伸びた。
 もっと激しく弄られるのかと思ったら、むしろさっきよりもおとなしい動き。
 俺の睾丸や幹や亀頭の感触を手に憶えさせるような、ゆっくりとした動き。
 でも、二人の手が、二十本の指が触れて、動いていて。
 それは味わったことのない刺激を脳に伝える。
 弱くやわやわと揉みたてる指。
 睾丸を転がす掌の温かさ。
 ペニスのくびれをそっとそっと羽よりも軽く擽る指先。
 鈴口の周りを這い回る爪先。
 
 一子さんが張り裂けそうなほど膨張している亀頭のつるつるな表面に露を塗
りたくり、先生が裏筋を絶妙な強さで擦り上げる。
 先生の指が信じられないほど滑らかに幹をマッサージすると、一子さんが睾
丸を転がし、擦り合わせ、握りつぶすような圧力さえ加えてくれる。
 息のあった動き。

 そこに新たな感触が加わった。
 濡れた感触。
 唇と舌。
 さっき軽く先生がペニスの先端を少し舐めてくれたけど、そんな程度でない。
 競うように根本か先端までくまなく舌を滑らせ、唾液を塗りたくる。
 ペニスがすっかり濡れ光っても、飽く事なく舌を、唇を使う。
 それだけでは飽き足らず、陰嚢を舐め、しゃぶり、ついには二人で一つずつ
睾丸を口に含み、俺を悶絶させた。
 ちゅぽんと音を立ててべとべとになった睾丸が現れた時には、おかしくなる
一歩手前だった。

 声が洩れる。
 女の子みたいに、耐えがたくて意味のない喘ぎ声を洩らしてしまう。
 でも、我慢できない。
 それに、一子さんか先生が、じっと顔を覗き込んでいて、二人の指や唇や舌
で感じて、息を詰まらせ、言葉にならない声をこぼすのを見ている。
 こんな……、恥ずかしい。
 でも、先生の顔は、一子さんの目は、とても優しくて、俺が気持ち良くなっ
ているのを確認して、本当に嬉しそうになる。
 ぴくぴくと体を痙攣させるのを、
 体を身悶えさせるのを、
 息を荒げるのを、
 自分の喜びであるように。

「気持ちいい?」

 どちらに訊かれたのだろう?
 わからない。
 でも、素直に答えた。

「気持ちいいです」
「良かった。……もっとして欲しい?」
「もっとして。我慢できなくなるくらい」
「うん、いいわ。可愛いからもっともっと気持ち良くしてあげる」

 何をすればいいのか。
 どこが俺の弱点で、どうすれば一番俺を喜ばすのか。
 そんな事は何もかもお見通しだった。
 自分すら知らなかった性感帯を責められ、俺は声を上げ続けた。

 限界だった。
 こみあげて腰ががくがくしている。
 これ以上我慢したら、どこかが先に破裂してしまいそうだった。

「もう、我慢できない」
「我慢なんてしなくていいの」
「出して。私たちに見せて」

 凄い勢いで、射精した。
 途切れる事無く、全て出し尽くすかのように迸った。
 体中がペニスになったような圧倒的な放出感。

 先生の長い髪を、
 一子さんの顔を、
 先生の両の胸を、
 一子さんの腕を、
 白く染め上げた。

 そんな無惨な姿になりながらも、二人とも嬉しそうだった。
 精臭に包まれながら、うっとりとした表情で俺を見ている。

 二人で手を伸ばす。
 まだ衰えないペニスに。
 愛撫ではなく、最後に何かを確認するように、そっと触れた。
 

「ありがとう、志貴」
「うん、嬉しかったよ、有間」

 射精に導いた事が本当に嬉しそうだった。
 どうしたら、いいのかわからなくて、俺はただ二人を見つめていた。
 目に出来るだけの感謝の心を込めて。

 伝わったかどうかはわからなかったけれど。
 二人のおかげで、こうして成長できたのだと。
 いつかこんな夢の中でなくて、きちんと言葉で伝えなければと思って。

 ……夢?

 ああ、そうか。
 一子さんはともかく、先生と再会して、それを当たり前のように受け止めて
いるなんて、ありえない。
 そうか、そうなんだな。


 気づいてしまったら、醒めるのだろうな。
 体が動いた。
 まだ俺のでどろどろになっている、先生と一子さんにキスをした。
 そっと、触れるだけの軽いキスを。
 ありったけの感謝と愛情を込めて。

 驚いている二人の顔。
 そして、残り時間はそれで終りと言うかのように、二人の姿がぼやけ、
 俺自身の体も意識もぼやけていき、
 そして―――――
 

                           ……つづく

 

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