社説・暴行3米兵の公判始まる
暴行事件の米兵3人の公判が始まった。事件は復帰後最大といってもいい大きな政治問
題に発展したが、原点の人権問題を忘れてはならない。
この事件の最も憎むべき点は、少女に対する人権蹂躪を犯したことだ。世界的に少女の
人権が問題になっている。女性が人間として自由と平等を得る第一歩として、少女が持っ
ている可能性を十分に伸ばし、成長する機会を与えられなくてはならない。
その行く手を阻むどんな障害からも守られなくてはならない。北京の国際女性会議でも
世界中の参加者が確認し合った。
戦争があり、基地に取り囲まれた沖縄では、どれほど女性の人権が性暴力によって踏み
にじられたか。幼女、少女にも及んだ。地位協定で容疑者がすぐには日本側に引き渡され
ないことへの怒りも、あまりに残忍な人権侵害が耐えられない思いをしたからだった。
裁判は、日本の法律にしたがって公正に行われなくてはならない。事件発生当時、米国
の法律の方が婦女暴行(レイプ)に対して厳しい、日本側に引き渡すよりもむしろ米国法
にしたがって厳罰に処した方がいいという声すらあった。だが、日本の中でのことは日本
の法に従うのが筋である。
不審に思うのは、容疑者が、ジュラルミンの盾に囲まれて法廷に入った異様な姿である。
県民感情が高ぶっているから、不心得な者が銃などで危害を加える懸念があるとでもいう
のだろうか。これも日本人並みでいい。
私たちは、米占領下、幼女暴行殺害事件に憤激して、初めて刑事事件をめぐって軍政に
対する激しい抵抗運動を展開した。裁判権もなく米軍法による裁きを憎しみを込めて見守
るしかなかった。当時と今は違う。
平和な現在、見えない敵を仮定して訓練をする貧しい米兵に対する感情にも、同情的な
ものが混じる。しかし、凶悪な犯罪は許し難い。若く、世間を知らずに抑圧された軍隊生
活をしているがために起こした犯罪であろうからこそ、基地を憎まざるをえない。
[沖縄タイムス1995-11-08付]
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