主要三ヶ国軍人階級の対応表および、各軍の階級構造に関する考察



アストラント

国民主権国家連合

平和戦略軍

ダルデキューア

民主共和国

自己防衛軍

クリスバルト

義勇憲章軍

将官

元帥

統将

(元帥)

総将

監将

監将

大将

大将

上将

中将

列将

中将

少将

次将

少将

准将

将輔

准将

士官

(将官を除く)

大佐

監士

大佐

中佐

上士

中佐

少佐

先士

少佐

大尉

列士

大尉

中尉

後士

中尉

少尉

次士

少尉

准士官

士官候補生

士輔

士官候補生

下士官

曹長

卒長

曹長

上級曹

修卒

軍曹

中級曹

次級曹

上卒

伍長

初級曹

兵長

先卒

兵長

上等兵

一等兵

列卒

一等兵

二等兵

次卒

二等兵

※対応関係はあくまで目安であり、指揮する部隊の規模や内容、個人の待遇等の詳細についてはそれぞれの軍ごと、また所属部隊ごとに異なる。

将官について
 平和戦略軍における元帥の階級は、原則として戦時またはそれに準ずる場合にのみ授与される。対象者は戦争指導に功績のあった監将、または二階級特進に値する戦果を上げて戦死した大将などである。制服軍人の最高位である戦略参謀本部総長を務めても、平時であればその他の最高幹部と同様の監将に留まる。戦時には極少数の元帥に権威を集中させ、平時にはそれよりは数的に多い監将による実質的な集団指導体制を取らせる慣習である。
 また、「監将」の階級は自己防衛軍を参考にして設けられた階級である。中規模国の総兵力にも相当する一個連合艦隊を統括する必要上、その司令官には原則として大将が充てられている。ただ、戦域司令官である各連合艦隊の司令官と、それを指揮する中枢の最高司令官が同格の大将では不都合が多く、かといって権威ある元帥号を事務的な必要から与えることもできず、その中間の階級が設けられることとなったのである。
 一方自己防衛軍における統将、総将の階級については特に明文の定めも慣習もない。その時々の政治的な動向によって決定される。十年前には有力な家柄の当主が集う統将会議が実質的な国家の最高意志決定機関であったが、総将オスカー=バルファリスが実験を掌握して以来、この会議は「老人クラブ」等と陰口を叩かれるような、形式的な存在となっている。オスカー=バルファリス自身を含めて、それ以後統将に昇進した者はいない。そもそも元帥に相当する階級が二つもあり、将官階級が他に類を見ないほど多いのも、かつての政治的妥協の遺産である。
 また、「将補」はかつての海軍の「代将」に相当する、艦隊を指揮する必要のある監士に与えられる臨時の呼称であったが、現在では常設のものとなっている。これは中堅幹部クラスとの妥協の産物である。
 義勇憲章軍の「元帥」階級が括弧つきであるのは、形式的な性格が強いためである。軍事法制上その階級の存在が明記されているが、これまで生きてそれを授与されたものはいない。国家に対して大きな貢献をした大将の死後、または二階級特進に値する殉職した中将に対してのみ与えられる。言わば名誉称号であるが、原則として国葬が執り行われ、遺族年金の額が大将より多いなど、死後一定の優遇がある。
 また、同じ「大将」の名称を用いているものの、平和戦略軍のそれとは権威も実質的な地位も異なるため、義勇憲章軍の大将がアストラントを公式訪問する場合には特殊な儀礼上の配慮が必要になる。特に義勇憲章軍の最高幹部に対しては、大将であっても監将相当の待遇をするのが慣例となっている。逆に平和戦略軍の元帥または監将がクリスバルトを公式訪問する場合は、原則として一律に大将待遇である。

士官、下士官の区別について
 平和戦略軍および義勇憲章軍の「士官候補生」と、自己防衛軍の「士補」は、士官に準ずる待遇を受けるため「准士官」と概括されるが、この両者の意味は本質的には異なる。
「士官候補生」は、所定の期間を大過なく終了すれば少尉に昇進することが予定されている。士官学校の卒業生や士官養成過程を修了した下士官が、現場で士官教育の最終段階を受けるとともに、その適正を確認するためのものである。
 一方「士補」は、特に従軍期間が長いなどの下士官に士官に準じる待遇を与えるためのもので、士官への昇進は予定されていない。それを望むならば、また別に適正試験や資格審査を受けなければならない。卒長や修卒であっても、同様の過程を経れば士補を経験せずに士官になることができる。
 この相異は優秀な人材を積極的に幹部に取り入れようとする平和戦略軍、義勇憲章軍と、階層的な秩序を重んじる自己防衛軍の、人事についての基本方針の相違を反映しているといわれる。一見すると前者の方が効率的なように思われるが、昇進させて実際にその任務に当たらせてみると地位が低かったときには表れなかった欠点が露呈する、という場合も少なくない。性格適性検査等ももちろん行われるが、それでも完全には不適格者を排除はしきれないのが実情である。自己防衛軍の方が登用に関しては慎重である、との評価もできる。

ディーフパイロットの階級について
 ディーフは個人で操縦できる兵器としては最大級の戦闘力、機動力を有しており、街区の一つ程度なら簡単に、単独で壊滅させることができる。隙を突けば艦船を撃沈することも可能である。
 この操縦については、平和戦略軍、自己防衛軍においては下士官以上、義勇憲章軍においては士官以上がその任に当たるもの、とされている。平和戦略軍も自己防衛軍も、安全や秩序維持などの観点からすればこのような兵器の操縦者には、相応の教育を受けて慎重に取り扱うことのできる士官が望ましいと理解している。
 しかし士官教育には長い年月と多大な費用を必要とし、多数に上る機体の全てにこれを配置するのは過大な負担となる。また、操縦系を中枢神経に直結させるその機体の特性上、士官にしにくいほどの若年者の方が、純粋な操縦技量の観点からすれば概して成長が速い。かといってさすがに最下級の一兵卒にこのような強力な兵器を扱わせることもできないので、早期に集中的な教育を施し、下士官として前線に送り込むのが平和戦略軍、自己防衛軍両軍のパイロットに関する基本的な運営となっている。ただし、これら下士官を監視し、場合によってはその暴走を未然に防ぐべく、一個小隊を編成するに当っては必ず士官を配置し、小隊長とするのも両軍に共通である。
 一方義勇憲章軍の場合、互いに激しい干戈を交えた平和戦略軍や自己防衛軍とは異なり、ここしばらく大規模な戦役は経験していないため、人的資源の損耗は少なく、その養成には比較的余裕がある。そのため、ディーフパイロットは全員が士官となっている。もっとも、実戦で得られた戦訓には一定の評価を与えており、若年者をパイロットとすることも例外的に行われている。志願兵の中からパイロット適性と士官適性を兼ね備えた少数の人間を選抜し、士官とするという特任士官制である。適性を認められた若年の志願兵は、まず平和戦略軍等と同様のパイロット養成課程と並行して簡易の士官教育を受け、一年未満で士官候補生となり、所定の期間を経て少尉に任官する。その後現場と中枢を往復しながら正規の士官養成過程とほぼ同様の教育を受け、修了後に中尉となる。結果として中尉となる時期は通常の士官学校卒業生とほぼ変わりないが、少尉任官の時期が早く、またその期間が長くなる。以後の昇進考課などには、原則として区別がない。ただし、若年の時期から士官としての適性である指導力を評価される人間が多いため、その後順調に昇進する人間が多く、この特任士官はある種のエリート的な評価を受けている。

兵卒について
 旧世紀の軍隊とは異なり、一兵卒といえども一定の技術的な知識が必要とされるのが現状である。労役などの単純作業等は基本的に自動化されているし、そもそも人力で左右されるような軽量の軍事資材が最早あまり多くない。兵員に要求されるのは基本的に自動化機器を操作、管理する能力および、それらが損傷した際に補修を行う能力である。危機に直面して屈しないだけの体力、精神力が必要であることは旧世紀と同様だが、同時にある程度の技術者としての知識がなければならない。最も基礎体力を必要とされる陸戦兵でも、個人用の自動化兵装、通信機器等を操作、管理する必要がある。
 そのため、単なる兵士よりは広義に軍事に関する技術者であると言える下士官の方が、むしろ需要がある。兵士より下士官の方が多い、などということも珍しくはない。兵士は実質的に、主戦力というより下士官候補として位置づけられている。また、兵士を経由せずに直接下士官として任官させる経路も複数ある。平和戦略軍、自己防衛軍におけるディーフパイロットがその典型だが、それ以外にも機械工学、情報処理などについて一定の技術を有する人間を下士官として任官することも広く行われている。
 義勇憲章軍のみは兵に相当する階級を四つ設けるなどこれを重視する制度となっている。これは志願兵が多く、後に下士官とならないまま現役を退いて予備役に編入される人間も多いため、この人員を整理し、秩序立てるためのものである。
 なお、医師、学者などの高度な学識、技術の保有者を技術系士官として直接登用するのは、旧世紀と同様、各国軍で行われている。


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