そらのやま「旅行記」Yukito Shimizu

旅行記1『窓越しのヨーロッパ』
(西欧ハイライトの旅)

1 飛行機にて

 成田を飛び立ってJL419便は北に向かう。富士山、日本アルプスの山々が冬化粧をして見送ってくれる。例年に比べて雪の量は少ないのかもしれないが、それでも頂上付近は真っ白だ。この日本の景色ともしばらくお別れだ。

 前回私がヨーロッパに行ったときはアンカレッジを経由して北極上空を飛んだ。あのときのアンカレッジの雪景色や北極付近の日没(日の出だったのかもしれない)、北極付近の凍った海のようすが頭に浮かぶ。今回のヨーロッパ行は地図で見ると、ユーラシア大陸の北部を横断してバルト海からヨーロッパ、ミラノへと南下するようだ。

 日本海に出て曇り空、何も見えない。それから何時間かして、眼下に見えた。シベリアの山々だ。雪をいただいた姿は厳しさそのものだ。
「見えますねえ。」「すごい。」思わず機内で声が上がる。5年前、北極の凍った海は、あらゆる文明や科学を拒絶するかのような厳しさがあった。今、この冬のシベリア山脈からは、人間の力を拒みながらも、地球の内部から滲み出てくる暖かさも感じる。

 ときおり白い帯の蛇行が見える。北極海に注ぐシベリアの凍った河だ。オビ、レナ、エニセイなど昔習った河川の名を思いだす。私は何千キロものシベリアの山々に見入っていた。

 機はドイツ上空を通過してアルプスへ。8千メートルの上空から見るアルプスは、ひょっとしたら飛び降りることができるのではないかと思うほどに近く見えた。山には雪、雲が綿のように山腹を取り巻いている。