そらのやま「旅行記」Yukito Shimizu

旅行記1『窓越しのヨーロッパ』
(西欧ハイライトの旅)

10 寒いヨーロッパ

 出発の半月も前から、ヨーロッパの天気は気にしていた。ガイドブックを見ても、パリやロンドンは日本より寒いらしい。これまでこの時期にヨーロッパを旅行した人の話では、イタリアは日本より暖かいという。出発が迫るにつれてラジオ、テレビからはマイナス一度とかマイナス3度などとパリなどヨーロッパの気温を伝えるようになった。まあ少し寒さ対策はしておくかと考え、コート、手袋、厚めの衣類などを整えた。

 最初の寄港地ミラノ。機中に空港の天候が放送される。「気温は0度。」「えっ、寒い。」乗客から声が上がる。

 出発したときの日本(鳥取)の気温は7〜8度以上あったから、ずいぶん寒い。でも、イタリアでも北のミラノだからなあ、と思った。しかし、甘い判断であった。翌日、ローマから南部のナポリへの道路端の水たまりは全部凍っていた。

 日を追って寒さは厳しくなり、ロンドンではマイナス5〜6度(推定)、パリではマイナス10度にもなった。「クリスマスのシベリア寒波」と報じている。刺すような寒さである。もっとも、例年はこんなに寒くはないらしい。現地のテレビでもニュースになっていたし、だれに聞いてもこんな寒さは珍しいとのことであった。

 ロンドンからの英仏海峡横断鉄道新幹線「ユーロスター」ものろのろ運転、車窓に見える川や池も凍って、雪が数センチ積もっている。そんな中、羊の群れが寒そうにあちこち草場を求めている。パリでは、エッフェル塔からながめるセーヌ川の向こうの池で(広場なのかも知れない)スケートを楽しむ子どもたちがあり、結晶で降ってくる雪を見ることもできた。町の噴水も凍っていた。

 こんな寒さには耐えきれない。ミラノで買い損なったマフラーをローマ・トレビの泉で、パリ・ノートルダム寺院で帽子を買い求め、次第に防寒の体制を整えながら、身を縮めてせかせかと町を歩いた。

 10年ぶりのヨーロッパの極寒を、2度目の観光で体験することになった。