そらのやま「旅行記」Yukito Shimizu

旅行記1『窓越しのヨーロッパ』
(西欧ハイライトの旅)

14 日本食レストラン

 ヨーロッパ最終日、パリでの2日目は自由行動。朝、渡辺さんから部屋に電話があった。
「今日はどうなさいますか。」
「2人でぶらぶらしようと思っています。皆さんはどうされますか。」
「オルセーの美術館に行こうという人が16人いますので、ごいっしょしようと思っています。」
「あっ、私たちもまずオルセーに行こうと思っていましたから、それじゃいっしょにお願いします。」
というわけで、自由行動の午前はオルセー美術館で鑑賞。ここは、ドガ、モネ、ルノワール、ゴッホなどの印象派の作品が集められている。私は、前回ルーブルをみているので、今回はこちらの方に興味があった。しかし、初めての人にはやはりルーブルの方が魅力かもしれない。自由行動が二つに分かれたのはそのあたりに理由があり、これはこれでいい。もっとも、私たちは初めからまずオルセーと思っていたのではあったが。

 美術館でも宮殿でも、ヨーロッパの入場者へのチェックは厳しい。オルセーでは百メートルくらい並んで入場。持ち物検査を通って館内へ。しかし、中に入ればかなり自由である。フラッシュ撮影は許されないが、絵画は無防備に等しい。柵はあるが絵にガラスがはめてあるわけではない。警備員も少ない。「こんな警備でいいの。これほんとに本物?」とまで疑いたくなる。

 印象派の作品がある3階を中心に見てかなり疲れる。美術館というところはどこでも、歩きながら止まりながら、立ったままの鑑賞である。ロダンを見て昼どき。そろそろ出ることにした。グループの計画では「1時半に集合して集まった人だけホテルに帰って食事をします」ということだったが、個人行動をすることにした。

 歩いてコンコルド広場方面へ。寒いが、観光地図を頼りに歩く。広場を抜けてまっすぐ行けばオペラ座の近くに出るはずだ。その近くの日本食の店の地図をもらっていたので、それを訪ねて久し振りの和食にしようと思った。道のりもそれほどでなく、地図も分かりやすくできていて、ほどなく日本食堂「竹」に行き着いた。

 昼食時を少し過ぎていたので席もあいている。何より日本人の板さんが「いらっしゃい。何にしましょう。」と迎えてくれたのにほっとする。

 煮物定食と焼き魚定食を注文。板さんは岡山の人だという。煮物は鯖の煮付け、焼き魚は鯵の塩焼き、吸い物は正月らしく雑煮(もちは輸入するのだそうだ)。米はアメリカからの輸入だということだったが。久々のご飯でなかなかうまかった。

 何となく満足した気分でもう少し歩くと。カフェがある。ガイドブックによると。「パリの名物は何といってもカフェ」とある。まあ何ごとも経験。入ってみようと中に入ると、席ありカウンターあり。客はかなり多い。カウンターでコーヒーを注文すると小さなカップでマスターがだしてくれた。いわゆるエスプレッソという濃いコーヒー。苦さを味わって値段を聞くと「6フラン」(138円位)という。なんと安い。カウンター、テーブル、テラスと場所によって値段が違い、カウンターでの値段はもっとも安いのだそうだ。

 そのあとタクシーでホテルへ(44フラン=千円位)。チップの計算に頭を使う町の散策だったが、なかなか充実したパリの午後であった。