そらのやま「旅行記」Yukito Shimizu

旅行記1『窓越しのヨーロッパ』
(西欧ハイライトの旅)

8 クリスマスとお正月

 日本では年末年始、ヨーロッパではクリスマス。でもクリスマスが中心のヨーロッパでは、正月には何もしないのではないかと思っていた。ところがどうして、ホテルにも店にも通りにもクリスマスの飾りがいっぱいだ。クリスマスツリーもそれぞれの趣向をこらしてある。やはりヨーロッパでも正月を祝う習慣はあって、クリスマス飾りを一月上旬までは残しておくのだそうだ。クリスマス飾りをして、終わればすぐに片付けて正月飾りに衣替えする日本より合理的ではあるが、新年を迎える気持ちは同じらしい。バチカンのサン・ピエトロ寺院では、寺院前の広場にキリスト生誕のようすを造形化して飾ってあった。馬小屋と聖母マリアとキリスト、この時期でなければ見られない風景なのだそうだ。

 大晦日、パリのシャンゼリゼの街路樹の1本1本にたくさんの明かりが灯され、実に美しい。ガイドのイノウエさんの説明では、このあたりは夜中まで大変なにぎわいになるという。日本に盆と正月が一度にやってくることはないが、ヨーロッパではクリスマスと正月が一度にやってくるのだ。

 明けて元旦、パリ市内観光。前回私がパリに来たのは11月だった。そのとき凱旋門の回りはものすごい車の渦だった記憶がある。ところがなんと、車は一台もない。「えっ、ほんと。」と目を疑った。コンコルド広場も人影はまばら。パリの人たちの寝正月か。町は割合きれいになっていて、ゆうべの騒ぎはどこにもその痕跡がなかった。