そらのやま「旅行記」Yukito Shimizu

旅行記1『窓越しのヨーロッパ』
(西欧ハイライトの旅)

9 ガイドさん

 今回のヨーロッパ旅行、イタリアではジュンコさん、イギリスではイツコさん、フランスではイノウエさんがそれぞれガイドをつとめてくれた。

 ジュンコさん。渡辺さんに言わせれば萬田久子に似たなかなかの美人。第一日目はジャガーのコートでやって来た。NHKの海外放送レポーターのような口調で、イタリアの案内、説明をする。ただの観光案内でなく歴史から国民性、マフィアのことまでなかなか詳しい。私たちのグループは、小・中・高校の先生が多く、中には社会科の先生もいて質問も飛び出すが、ジュンコさんはよどみなく答える。とうとう社会科の先生も黙ってしまった。こちらのガイド7・8年のベテランという。

 イツコさんは、イギリス人と結婚してこちらに住んで18年。でもなんとなく大和撫子という感じのガイドさん。イノウエさん、いかにもフランス風ファッションで登場。ベルサイユでは満員の観光客の中、うまくさばいて我々をいい席においてくれた。

 いずれもガイドのベテランで、よく勉強していてそれぞれの国のようす、歴史など大変詳しく説明してくれた。以前の中国・桂林の旅行で、ガイドは国家公務員だと聞いたことがある。確かにその国を紹介する立場の人なのだから、そのくらいの資格を持たせ、それなりの待遇をする必要があろうし、ガイド自身ガイドとしてのプライドがあってもいいと思う。

 ところで、アシスタントガイドというのがある。ホテルや空港までの案内、チェックインのお手伝いなどをするアシスタントはどこの国でもあるが、イタリアでは現地のガイドを観光バスに同乗させなければならないという法律があるのだそうだ。

 それでは、アシスタントガイドはどんなことをするのか。はっきり言って何もしない。ポンペイの近くからわれわれのバスに乗ってきたガイドは、ポンペイ遺跡の入場券を配ってくれただけだった。あとはあちこちでおしゃべりをしながら歩いていた。ナポリ観光が終わって、彼がバスから降りるとジュンコさんはいみじくも言った。
「彼の仕事、気楽なもんです。」

 2日目のアシスタントガイドは予定の乗り場にはいないで、かなり遅れて乗り込んできた。やはりガイドらしいことは何もしなかった。

 イタリアの失業率は12%にもなっており、この法律は失業対策らしい。目に見えないところでどんな仕事をしているのかしれないが、私たちが見たところでは、失業対策に甘えて仕事のまねをしているに過ぎない人たち、としか映らない。