そらのやま「旅行記」Yukito Shimizu

旅行記2『オーストラリアに咲く花は』
6.山火事は地震より怖い

 さて、一路ハンターヴァレーへ向かう。幹線道路は岩盤を削ってできた道路である。これだけの道路建設はたいへんだっだろうと思われる。岩盤がしっかりしているから、地震による災害は心配ないそうだが、この大陸の開拓の困難さを感じる。また、長く孤立に近い大陸であったのも、海を隔てていたということだけでなく、そのあたりにも原因があったのかも知れない。

 幹線道路からはなれて田舎の道に入る。オーストラリアでは山火事を恐れるという。湿度が低く乾燥した気候、陽射しも強く、火の不始末だけでなく自然発火もあるのだそうだ。しかもいったん火事が発生するとなかなか消火活動ができない。広大な面積の山林が何日にもわたって燃えてしまうという。そんなときいちばんの犠牲者はコアラなのだそうだ。餌も住家も火に奪われ死滅する。
「しかし、」とガイドは続けた。
「火事で焼けて新しい芽を吹き、育ってくる樹木もあるのです。」
そんな植物にとっては山火事も必要な現象なのか。自然の摂理とも言えよう。ともかくそういうわけで、最も火事をおそれ、パトロールの人たちは道路の途中に火災発生情報(「本日の発生指数50%」という具合)が掲示され、警戒を呼び掛けている。

 なにしろ広い土地だから、家は道路に面してあるのではなく、かなり離れたところにある。畑でとれたトマトなどを道路べりに並べておいて、「1箱5ドル」と書いて売っている。田舎らしい風景だ。道路から離れて集落を作っているところは、わき道の入り口にそれぞれの家の郵便受けが並べてあった。郵便屋さんは手紙の宛先の家の郵便受けに入れておくのだそうだ