そらのやま「旅行記」Yukito Shimizu

旅行記5『赤い土・赤い水』
(アンコールワットの旅)
11.サンセット見学は象に乗って

 1日の遺跡観光を終えて、最後はサンセット(日没)を見に行く。山の上の遺跡から地平線の向こうに沈む夕日が美しいとガイドは言う。1日中の観光で、しかも同じような寺院を歩くばかりで、かなり疲れていた。

 そんなに高い山でもなさそうだが、この疲れた体には相当響きそうだ。登り口には象が何頭かいた。象で行けば1人15ドルで頂上まで乗せてくれるという。そう距離はなさそうだが、明日の観光もある。乗ってみるか、これも経験だ。30ドル支払って乗り場に上がる。

 象の背中の高さは1メートル80センチはあるから、2メートルくらいの台に上り、象の肩口に足を乗せ、座席として置いてある箱に乗る。
 象使いは象の肩のあたりに乗って象を動かす。足で象の耳を蹴るようにこすり、「ヒン、ヒン(ハイシッのようなものか)」と命令する。象はゆったりと動きだす。鞭を使ったりはしないが、さかんに「ヒン、ヒン」と左右の耳の下のやわらかいところをこすっている。私はちょっと緊張して乗っているが、乗り心地は悪くない。
 途中象は細い木の枝を鼻でもぎ取り、遊びながら歩く。15分も登ったか。遺跡の下まで到着した。
 それから遺跡を登って頂上へ。何十人かの観光客がすでにいる。物売りの子ども達もたくさんいる。
「6時頃までここにいます。もし雨が降ってきたら傘を持ってきています
 ので。私のところまできてください。」
と、ガイドは少し離れた場所で待つ。

 空は雲が広がり、遠くにスコールの動きがあった。そんなに広くない頂上に人がだんだん集まっていた。みんな西の空に目をやっていたが、ついに日を見ることはなかった。