そらのやま「旅行記」Yukito Shimizu

旅行記5『赤い土・赤い水』
(アンコールワットの旅)
16.市場にて

 遺跡見学ばかりで、観光とは言えない感じだ。いささか歩き疲れた。その様子をみてとったか、市場にでも案内します、と言う。ああ、それがいい。

 初めに土産物屋に1軒立ち寄った。店の外では木を斧で切って民芸品の細工物を作っている。あまり客はないけれど、こんなんでやっていけるだろうか。観光シーズンがちょっと過ぎたところのようだから、少ないのかもしれないが。少しだけ買い物をして出た。

 今度は市場。食料品、布製品などなど、多くの品物が並んでいる。値段が分からないので、聞いてみる。
「この缶ビールはいくらですか。」
ガイドが答える。
「地ビールで2ドルくらいです。」
 ずいぶん高いじゃないかな。だってホテルでは瓶ビールが3ドルなんだ。市場の方が高いなんて考えられない。

 魚の燻製がものすごい匂いだ。妻は香辛料やこんなにおいに弱いからだめだろう。外に出ると市場の周りにはたくさんの屋台店が並んでいた。こんな所で自由に買い物ができないかな、と思ったが、それは予定に入っていなかった。

 輪タクのおじさんと並んで写真を撮る。車に乗ると横で私たちに手を合わせている女の人があった。そばに車椅子の男の人がいる。地雷の被害者なのか。お恵みを、ということなのだろう。やりきれない気持ちでその場を去る。