そらのやま「旅行記」Yukito Shimizu

旅行記5『赤い土・赤い水』
(アンコールワットの旅)
4.シェムリアップ空港

 バンコク空港発8時30分。ずいぶん朝が早い。ガイドはとても親切に空港の中まで送ってくれた。70人乗りくらいの小さなプロペラ機でカンボジア・シェムリアップまで飛ぶ。日本人スチュワーデスが1人いるということで少しホッとするが、軽い食事の後出てきた入国手続きの書類作成に困ってしまった。旅行会社任せでいた私たちは、書いたことがなかったのだ。しかも3枚もある。

 日本人スチュワーデスは、1回全体を教えてくれただけで行ってしまった。幸い日本からずっと一緒に来た2人の姉妹が隣の席で、英語がかなりできるらしく、着陸ぎりぎりまで教えてくれたので、なんとか仕上げることができた。やっぱりこんなことは、自分でしておかなくてはだめだ、と反省する。もっとも、そのうち本当に必要なのは1枚で、そのあたりの説明がしてほしかったなと、自分ができないことを棚に上げて後で思った。

 小さな飛行場で、入国審査、スーツケースの受け取りも狭い1つの部屋で行っている。
 私たちのスーツケースが出てきたので(ベルトで流れてくるのではない。車で運ばれてきたのが木の枠の中に積み上げられる。それを女性職員が1つずつ荷物のタグを確かめながら手渡していく。)自分で取ろうとしたら叱られた。半券を見せろと言う。(そう言っているのだろうと思う。以下のやり取りは全て私の想像。)実はバンコクでもらった半券は、先ほどの姉妹のもの2つも一緒にホッチキスで止められ私が預かっていた。私がそれを見せると女性職員は半券を全部取ってしまい、私の荷物を持って行けと言う。「後2つある」、と言うが、全然聞きもしないで他の荷物に取りかかっている。「半券を返してほしい」、と言っても知らん顔。これは弱ったことになった、と思っていたら姉妹が審査を終えて出てきた。そのことを説明しようとしたら2人の荷物が枠の中に入ってきた。2人はすぐ手に取ろうとする。私たちが職員に説明しようとしたら、職員はさっきの半券を出してきた。なんだ、分かっていたのだ。それならそんな反応をすればいいのに。こっちはひやひやドキドキの時間を過ごしていたのに。
 外に出ると熱い空気が取り囲む。バンコクから飛行機で僅か40分くらいの距離なのに、椰子の木があちこちに高く背伸びし、南国を主張している。

 アンコールワット観光の四人は、ここでホテル毎の2人ずつに分けられた。