そらのやま「旅行記」Yukito Shimizu

旅行記5『赤い土・赤い水』
(アンコールワットの旅)
5.カンボジア1

 内戦、難民、ポル・ポトとかシアヌークとか、つい最近までそんな言葉が行き交っていたように思う。そのような名前や事柄を意識してこの度の旅行を計画したわけではなかったけれど、意識せざるを得ない旅行ではあった。

 バンコク空港の両替所で尋ねる。
「ドルをカンボジア・リエルに替えてください。」
 両替所職員は手を振って×印「できない」。じゃあどうすればいいのか。

 旅行案内書「地球の歩き方・東南アジア編」(ダイアモンドビッグ社)によると、100リエル=32円となっている。しかし、旅行業者の案内書では「両替の必要はない、どの国の通貨も使える」とある。つまり、カンボジアの通貨は弱く、自立していないということなのか。ドルを中心に考えていけばよかろうと考える。

 かなり日本語の怪しいシェムリアップのガイドの説明から、世界遺産の指定(1992)とともに観光客が急激に増えていること、ホテルなどの施設が不足していて、今建設中のものが相当あること、ガイドも足りないことなどが分かる。以前の欧米の観光客中心から、現在は日本人観光客が圧倒的に多くなっているという。道路に沿って建設中のホテルなどが多い。新しいガソリンスタンドもあった。そう言えば、ガソリンスタンドは郊外にはほとんど見あたらない。
「屋台にペットボトルを並べてあるのがガソリンです。ジュースと間違えて飲んではいけません。」
 屋台のガソリンスタンドだ。
「観光開発が進んできて」とガイドは言う。
「土地が値上がりしました。」5年前に1u5〜8(米)ドルだった土地が現在300ドルから400ドルという。

 空港から町までの距離は近いが、道路は悪い。舗装はしてあったのかもしれないが、まさにガタガタ道。穴ぼこだらけ。道路の補修については、日本が申し出ているとか。もしそれが本当だとしたらいいことだ。できるだけ早くしてほしいものだ、と言ってもこの旅行には間に合わないが。ここも車は日本車が多い。バンコクと違うのは自転車が多いこと。この悪路を観光の車が走り、接触するのではないかと思うほどのところを自転車やバイクが走り、まあ器用なもんだ。昔私たちのところもこんな道だったなあと、懐かしいような、そんな思いにふける。