そらのやま「旅行記」Yukito Shimizu

旅行記5『赤い土・赤い水』
(アンコールワットの旅)
6.カンボジア2

 カンボジアは現在シアヌーク国王のもとに治められている(実際には現在国王はアメリカにいるらしい)が、その前の苦難の歴史は、新聞、テレビでもよく報じられたものだ。

 19世紀後半から20世紀前半はフランスの植民地。ガイドの言葉にはこの時代は悪くは聞こえない。ガイド自身分からない時代だからなのだろうか。

 私自身で考えれば、比較的記憶に新しいところでは、1992年から93年にかけて行われた国連平和維持活動(PKO)がある。ようやくそのあたりから平和の兆しが見え始めたということだ。その前の親ベトナム政府軍(79年成立)と反ベトナム三派の内戦は10年以上も続いたし、さらにその前のポル・ポト政権の恐怖政治(75〜79年)は国民の3分の1の人命を奪ったといわれる。

 ポル・ポトについては、ガイドもたびたび口にした。知識人、技術者の多くが粛正の嵐に遭ったと。
 さらに、さらにその前のロン・ノル将軍のクーデター(70年)は、このカンボジアをもベトナム戦争に巻き込んだ。
 およそ30年間に及ぶこの国に繰り広げられていた戦争状態がようやく終わりを告げたとはいえ、まだまだこれからたいへんな時代が続くであろう。

 観光の面でも開発途上、開発途中としか言いようがない。やたら新しいホテルが建ちつつあるが、日本の旅行会社J社の支店もなく、J社が現地の観光会社に依頼したガイドが私たち2人を案内する。飛行機で一緒に来た2人の日本人姉妹はホテルが違うということで、別のガイドが案内するらしい。日本人相手のガイドが足りないと言いながら、なんだか無駄をしている感じだ。でも、それは私達の言い分で、彼らの立場で考えれば、できるだけ多くの人が仕事にありつければいいわけだ。
「地雷がまだたくさん残っていると聞きましたが。」
ちょっと気になっていたことを尋ねてみると、ガイドは答える。
「そんな心配はありません。とても安全です。」
 走る道々警備の人が立ったり座ったりしている。観光を安全にという考えの表れであろうが、裏を返せばそれだけ危険があるということではないのか。道路わきに大きな何台かの車両が見えた。ガイドが説明する。
「地雷除去の機械です。」
 気温は日本とそれほど違わないと思うが、時折カッと照りつける日差しは肌がピリッとするほど熱い。