そらのやま「旅行記」Yukito Shimizu

旅行記5『赤い土・赤い水』
(アンコールワットの旅)
9.アンコール遺跡3

 アンコール遺跡の中には,観光の人だけでなくその土地の人達も多い。子ども達もたくさんいる。遺跡の中をはだしでかけ回っている子ども達もあれば,小さな石ころでお手玉遊びをしている子もある。日本のお手玉と同じようなやり方のようだ。

 子ども達の多くはみやげ物を売っていた。私達観光客に何人もの子ども達が,おもちゃやTシャツや絵葉書などの品物を持ってやってくる。
「お兄さん,1個1ドル」「お姉さん,2枚1ドル」(お兄さん=私 お姉さん=妻)
 4・5才の子が「ワンダーラ(一ドル),ワンダーラ」ずっとついてくる。買ってもらえないとお母さんのところにひき返す。お母さんは手で合図をする。「もう一度行きなさい。」
「ワンダーラ、ワンダーラ」

 どの遺跡でもそんなことが繰り返された。私はガイドに尋ねる。
「この子達は学校に行っていますか。」
「田舎の多くの子どもたちは学校に行っていません。学校に行くより農業の手伝い、商売の手伝いのほうが大切だと,また、農業に学問はいらないと多くの人が考えています。」
何十年か前の日本と同じだ。
 長い間の戦争状態は終わったが,貧しい暮らしはずっと続いている。働き手の男性は戦死し、あるいはポル・ポトの粛正で失った。子ども達を学校にやるだけの余裕はない。
 でも,子ども達の顔に悲しい感じはなかった。今の暮らしを一生懸命に,からだ全体でしている,かれらの笑顔にそんな感じを持つ。

 テレビを自由に見,ゲームを好きなだけ楽しむことができ,学校で分かりたいことが分かり,すばらしい家族や先生に囲まれている(と言えるかな)日本の子ども達にも、こんなカンボジアの子ども達の姿は知らせたいと思う。