11.サニーさん
シンガポールで迎えてくれたのはガイドのサニーさんだった。
「マレーシアはどうでしたか。」
「クアラルンプールとマラッカを観光しましたが、シンガポールは大都会です。
よ。」
「私はマレーシアに住みたいと思っています。」
医療保険制度、年金制度、日本のように整っていない、というより国が十分に国民の生活や医療を保障していく仕組みになっていない。社会主義的な要素が強く、国は損せず、国民にその負担がのしかかっているのだと言う。
これはおもしろいガイドだ。言葉もよくわかる。観光地の説明だけでなく、国を語ってくれるガイドなどあまりいない。
「自分の家はなかなか持てず物価は高い。老後も不安です。」
まだ四十才くらいかな、と見えるサニーさんは自分のことを語るガイドだった。
話は帰国後に飛ぶ。
9月1日朝日新聞朝刊「国際面」にシンガポールの最近情報として次の記事が掲載されている。
『面積の割に人口が多いため住宅供給は政府の重要政策。国民の8割が住む中低所得者向け高層住宅は全て政府が計画的に建設し、販売する。』
この住宅について購入制限をしてきた政府がそれを緩和する、というのが記事の内容であった。サニーさんが言っていたことを思い出し、改めて「なるほど」と思いながら読んだ。
このやりとりは後に残して、とりあえずホテルへ。NHK日本語放送復活。学校に電話。台風は進路を変えたため被害は皆無とわかり安心する。
なんとなく余裕を持って夜はナイトサファリに出かける。ナイトサファリはシンガポール動物園の隣にある。世界初の夜間専用動物園とのふれこみ。夕食もここでバイキング。オランウータンと写真が撮れるというコーナーもあったが、オランウータンのストレスを考えると気の毒で、とてもそんな気にはなれない。
100種1200頭の動物がいるという。檻を使わず、濠や垣根を利用してできるだけ自然に近い状態で、夜間の活動が多い動物を見学できるようにしてある。フラッシュ禁止なので、カメラの使用に気を使う。私のデジカメは切り替えできるようになっている。と思っていたら、ピカッ。
「あれっ、光ってしまった。ごめん、ごめん。」
そんな気持ちが動物たちに通じたかどうか。 |