そらのやま「旅行記」Yukito Shimizu

旅行記6『輝きは驟雨(スコール)の後に』(マレー半島の旅)
2.クアラルンプール空港

 シンガポールを経由してクアラルンプールへ近づく。シンガポールを経由せず、適当な直行便があればずいぶん時間が少なくてすむのに、と思うのだが。そう言えば、ローマに行ったときもミラノでいったん降りたし、シドニーのときもブリスベーンで降りた。よくわからないが何か決まりがあるのか。
 クアラルンプール上空。確か機内放送で「現地の天気は晴れ」と言っていたが、なにも見えない。一体どうなっているのか。機がもう少し高度を下げ、やがて畑が見えてきた。あちこちで煙が上がっている。
「ひょっとして焼畑?」
「それほどの煙には見えないけど。」
 クアラルンプールは田園の中の空港である。入国審査はすぐ終わったのだが、スーツケースが出てこない。同じ荷物が何度もまわっているのに私たちのものが出てこない。見ると、私たちも含めて30人位が待っている。関空で早く手続きをすませた分が、後回しになって残されたらしい。
「あと15分はかかるらしい。」
そんな声も聞こえる。空港の外ではガイドが待っているだろう。いろいろ気にしていたところへ、荷物を積んだ空港内の運搬車がやってきた。その中に私たちのトランクが、あるある。そんな技ができるならもっと早くやればいいじゃないか。
 着陸して一時間、空港を出たのは午後8時にもなっていた。確かに空は晴れていて、天頂あたりに星が輝く。あれが南十字星かな、などと勝手に決めて見る。スコール(驟雨)のあとらしくそう暑さは感じない。あの着陸のころの曇った状態は、スコールを降らせた雲が残っていたのかもしれない。