そらのやま「旅行記」Yukito Shimizu

旅行記6『輝きは驟雨(スコール)の後に』(マレー半島の旅)
5.クアラルンプール 2

 
バティックと呼ばれる更紗の染め物の工場見学。染め物実演はショー的なもので売場の方が本業のようだ。マレーシアは物価が安いから買ってもいいんだけど、まだこれからいろんなところを見るのじゃないかな。そう思うとちょっと控えてしまう。
 インドネシアでも更紗の染め物の実演を見た。多分同じ文化の流れだろう。インドネシアは海峡の向こうだ。
 錫の工場も見た。マレーシアは世界一の錫の生産地である。工場といっても、ここはほとんどが手作りで容器や置物を作っている。値段はそう高くなく、錫の感触、冷たい飲み物の舌ざわりはなかなかいいが、旅はまだ始まったばかり、重いものは荷物になるという意識の方が働く。
 世界四番目の規模を誇るブルー・モスクが月曜日で見られないため、国立回教寺院を見ることになった。1965年に1000万ドルを投じて造られたという。青い屋根の星型のドームと73メートルの塔が、遠くからでもすぐわかる。
 ドーム内の観光は信者でなくともできるが、女性は肌をさらすことが許されずローブなどをつけなければならない。入り口でローブなどを貸し出している。もちろん無料だがこの暑いのに大変だ。しかし、この国この地方の女性が顔を隠し、肌を見せずにいる姿もまた美しい。女性はどんな格好をしていてもきれいだということか。美しさを否定しているのか、隠しているのか回教の考えそのものがわからない。
 朝のうち曇っていた空も次第に晴れて、南国の太陽が照りつけて暑い。
「昨日はもっと暑かったんですよ。1日でこんなに焼けてしまいました。」と、昨日から来ている日本人観光客が言う。
 メルディカ広場は市の中心部にある。芝と花が鮮やかに目にしみる。池のまわりではテレビドラマのロケをしていた。勝手にやっているロケだから、こっちも勝手に視野に入るように動いてみたりする。暑い真昼時何度も繰り返していた。
 王宮に少しだけ寄る。王宮はヨーロッパ風。王様は普段はここにはいない。9つの州に王があって、5年ごとに国王を交代するのだそうだ。門番の騎馬衛兵が写真のモデルになっているのも、ヨーロッパの王宮と同じだ。スルタン博物館が月曜休館ということで国立博物館を見学する。東南アジアの影絵芝居が集めてあったり、民族衣裳、生活様式などが展示されている。
 マレーシアは中国系、マレー系、インド・パキスタン系など多民族国家である。そして、オランダ、イギリス、日本などの支配下に置かれた長い歴史を持つ。宗教は、イスラム教がもっとも多く、仏教、ヒンドゥー教もある。
「マレーシアの歴史と文化を分かりやすく紹介している。伝統的な衣装、工芸品などが展示されている」というふれこみだが、この博物館に今1つまとまりが感じられないのは、そのような多民族、多文化、多宗教という複雑な事情が反映しているのかもしれない。
 昼食は飲茶料理。
 KL(クアラルンプール)タワーは高さ421メートル、世界第4位の高さを誇る。マレーシア国内の人たちもたくさん観光に訪れている。高層エレベーターで約一分、クアラルンプールの街を360度見られるのだが、方角がわからないので街の全体が何となく分かりにくい。
 街にツイン・タワーが見える。89階建ての2つのビルが並び建つ世界最高のタワー。もっとも観光できるのは6階まで、あとはオフィスなのだそうだ。