そらのやま「旅行記」Yukito Shimizu

海外旅行二人連れ『アルプスの山々の語らい』

 アルプスの山々の語らい
    〜スイスハイライト8日間の旅〜
     2003.8.25〜9.1 清水行人 清水稔子

1. ローマの休息
 行ってみたいとずっと思っていたところがあった。
「機はドイツ上空を通過してアルプスへ。八千メートルの上空から見るアルプスは,ひょっとしたら飛び降りることができるのではないかと思うほどに近く見えた。山には雪,雲が綿のように山腹を取り巻いている。」(海外旅行記「窓越しのヨーロッパ」より)
 1996年のこのときのアルプスの姿を私は忘れることができない。そして,今度はこの山々を下から仰いで見たいとずっと思っていた。しかし,勤めの関係もあって,それはなかなか実現しなかった。   (写真:ユングフラウヨッホよりアレッチ氷河を望む)

 ヨーロッパの猛暑がニュースに盛んに取り上げられ,一体どんな服装をすればよいのかと迷う。高山の寒冷対策も必要で荷物も多め。さらに,事前の電話連絡で添乗員の吉村さんは,「もしものことを考えて1回分の着替えは手で持ってほしい」「アリタリア航空ですから」と言う。そういえば96年の旅行の際,一人のスーツケースが出てこなかったということがあった。どこの航空会社か前述の旅行記を読み返してみると「アリタリア」。時々こんなことがあるのかもしれない。
 そんなわけで手に持つものも多くなる。

 海外旅行で初めて会った人達(関西の人達)によくたずねられる。
「鳥取からですか。どんな方法で来られたのですか。」
 まさに奇異の目で見られるのである。
「新幹線どころか,高速道路だってつながってないのですから。急行バスですか。飛行機が午前出発だと間に合いません。前泊すると高くついてしまいます。自家用車です。」
 グループの人はさらに驚きの目で見る。
「駐車料金が高いでしょう。」
「高速,駐車などを合わせると,前泊と似たようなものになるかもしれませんが,時間をいくらかでも自由に使おうと思ったら,これが最善ですね。」

 朝3時起床,3時半出発。通勤時間帯を避けたため,予想以上に早く走れ,8時には関西空港着。9時40分集合となっているからずいぶん早く着いてしまった。荷物を旅行社の窓口に預け,コーヒーを1杯,その後本屋で旅行中に読む本を漁る。こんなとき私は,旅行に関係ある本をもとめることが多い。今回は,スイスについてあまり調べてこなかったので,JTB発行『ワールドガイド・スイス』を買った。

 9時40分窓口前集合。参加者は夫婦9組+女性4人組+女性ペア1組の合計24人。予想以上に多い人数だ。それでも,添乗員の吉村さんは,
「コンパクトなグループですから,まとまって行動できるでしょう。」
と,明るい。
 搭乗手続きを済ませて機内へ。去年に続いてビジネスクラスだから,足を延ばして寝られるくらいのゆったりシート。これからローマまで約13時間の空の旅である。スイスまでの直行便は成田発しかないらしく,イタリアの航空会社なのでローマで乗り継ぎということになる。

 順調に飛行して中央ヨーロッパからアドリア海へ抜ける辺りは雲がたちこめている。この辺りは山岳地帯で,晴れていれば山々が見下ろせるだろうにと思う。程なくローマ着陸。
「予定より20分早く到着しました。」
とアナウンス。
「おう,アリタリヤもやるじゃない。」

 しかし,ここで2時間半待たねばならない。乗り継ぎ時間が無駄なような気がしてならない。
 空港内はかなり蒸し暑い。免税店など少し見て歩いたが,疲れるだけだからベンチで休む。いろんな国の人が通るのをぼんやり眺めている。若い女性は,へそ見せ,腹見せ,背中見せ,腿見せして通りすぎる。なんでそんなに見せたいのだろう。ま,なにもないよりいいか。

 搭乗時間になった。移動のバスに乗ろうとして
「雨だ。」
 激しい雨。雷をともなっている。飛行機の後部入り口を開けてもらって乗りこんだ。乗客は乗りこんだが,出発の気配はない。雷が走って空港は停止状態。飛行機は飛ぶのだろうか。
「出発便が溜まっていて順番がこない」と吉村さんが連絡してきたが,その後なんの連絡もなかった。機内では,簡単な機内食を配ってなんの動きもない。
 1時間ばかりたって離陸する飛行機の光が2・3機見えた。しかし,その後も動かない。結局2時間遅れて出発した。出発便だけでなく,到着便も着陸できなかったようだ。次々着陸するのを待って離陸。なんとか今日のうちにジュネーブに行けそうだ。
 ホテル着,夜の12時。朝3時に起きて,時差の7時間を足して,長い長い1日であった。それでも明日は6時起床。バスでツェルマットに向かわねばならない。

 なお,この雨騒動には後日談がある。ホテルに着いてスーツケースを開けていた妻が,
「少しぬれている。」
と言う。スーツケースの閉じた隙間から雨が入ったのだろうか。たいしたこともないのでそのままにした。ところが,翌日グループの人に聞くと,中のものがぬれていて乾かすのが大変だったというのだ。まだ乾かないけれど仕方がないので持ち歩いているという。
 あの激しい雷雨のため,機内に入れる荷物は外に置かれっぱなしだったらしい。
「シートくらい掛けてくれたらいいのに。」
と,憤懣やる方ないといった口ぶりの人もある。
 私達のスーツケースは下のほうになっていて被害が少なかったのかな。時には下積みがいいこともある。   (続く)