空の山通信11空の山通信11そらのやま「通信」     Yukito Shimizu


No.370  長尾岬

 9月自然観察
 台風のため中止になっていた長尾岬の自然観察だったが,清末先生の計らいで9月に実施されることになった。せめて下見でもしておこうかと当日午前出かけてみる。もっと早く行きたかったが,天気が悪かったのだ。展望台,長尾の鼻駐車場,夏泊からの遊歩道などを歩いて見る。今日は釣り人が多く,駐車場にはかなりの車があったが,まあこのくらいなら大丈夫だろう。

「因幡っ子」の駐車場で分乗して,岬に向かう。今日はいい天気だ。
 駐車場の看板を見ながら,清末先生の全般的な話を聞いて,急坂を下って岩場へ向かう。私は何度も来ているが,自然観察と言う目で見たことはなかったから,今回どんな発見が(私にとっての)できるか楽しみであった。

 さっそく飛んでいる蝶の説明が始まった。
「この蝶はヤマトシジミです。この蝶がいる所にはカタバミがあります。葉の裏に卵を生んでいるかもしれません。」
「これはハイメドハギです。これで筮竹ができます。筮竹で占って人生にめどをつけるところからハイメドハギ。」
「トベラは海岸地方にある樹木です。ヒイラギがない海岸近くの人たちは,節分の行事にこれを代わりに使います。これはとても臭いので,鬼を寄せつけないというわけです。」

 岩場には何人もの釣人が見えた。
「ここでは時々亡くなる人がありますね。」
と私に尋ねる人もある。県下でもよく知られた釣り場だが,それだけに転落事故も毎年のように耳にする。
 伝説のある「血止めが池」(「地染めの池」という説もある)で話を聞いた。伝わっている話には多少の違いはあるようだが(たとえば登場人物がちょっと違っているなど),その場所で話を聞くとまた面白い。
「池は真水ですか。」
と聞く人もある。
「波も入りますから,真水というわけにはいきません。嵐のときなど岩場どころか灯台の高さまでも波が上がりますから。」
 西の岩場にも下りて写真を取る。このあたりは溶岩が流れたということで,岩に穴があいたり,赤っぽい泥のような岩で覆われたところも見られる。やはり伝説の「毒龍(悪龍とも)の痕だろうか。

 岩場での観察を終えて休憩所まで上がると,風は涼しく眺めはすばらしい。お茶でのどを潤し,会員持参のおやつをいただく。と,岩場から上がってきたのは浜江さんだった。私もいっしょに勤めたことのある彼の趣味は,知らない人はないくらいの海釣り。そう言えば駐車場で車を見かけた。午後釣りに来て,あまり釣果もないから帰るところだという。見せてもらうと25cmくらいのハマチが二匹。「もう少し大きくならないとうまくないです。」と言いながら駐車場の方に去った。

 まだ少し夏の余韻が残る長尾岬で,眼下に広がる景色を満喫した自然観察会であった。