空の山通信11

No.559  ジャガイモ

 ジャガイモ植えの時期になった。我が家の小さな菜園に,毎年作っているもののひとつである。
例年は3月中下旬に植えていた。学校では4年生の教材になっていることが多く,4月になってからでないと植えられなかったから,3月でも早いほうかなと思っていたくらいだ。ところが,3月も中ごろになると種芋が売り切れになってしまうのだ。よく知られている品種「ダンシャク」,「メイクイーン」などが去年は店頭からなくなっていた。
 植えたことのない「デジマ」というのを何とか手に入れた。それでも結構よくできて,味もよかった。そんな話を同窓会のときに話すと,
「あれはあまりうまくなかった。」
という。そこにいた人の中でも賛否両論だった。

「ジャガイモは根か茎か」という話はよく聞く。答えはもちろん茎。ジャガイモはナス科の植物である。その証拠に花はナスによく似ている。同じナス科の植物にトマトがあり,これをバイオテクノロジーによって細胞を融合させて雑種をつくることができる。地下にジャガイモ,地上にトマトという夢の雑種である。しかし,トマトの実もジャガイモの芋も小さなものしか得られなかった,という(稲垣栄洋著『身近な野菜のなるほど観察記』より要約)。
 接ぎ木という方法を使えば茎と茎がくっついて,やはり地下にジャガイモ,地上にトマトのなる植物が出来上がる。この話は自然観察の会でも聞いた。

 ジャガイモは冷涼な気候ややせた土地でもよく育ち,栄養価も高い。特に北ヨーロッパでは重要な食糧となっている。原産地南アメリカ・アンデスからヨーロッパに伝えられて,ヨーロッパの食文化は大きく変わった。
 それだけに,ジャガイモの出来・不出来によって歴史を変えることもあるという。
「1845年。ジャガイモを主食としていたアイルランドに,ジャガイモの病害が蔓延し,収穫がほぼ皆無となる壊滅的な被害をもたらしたのである。(中略)飢饉による餓死者は百万人以上とも言われ,おびただしい数の人々が国を捨て,新大陸へ移住した。(上記『身近な野菜のなるほど観察記』)」

 さて,我が家に帰る。狭い菜園なので,種芋は20個もあれば余るほどだ。芽のあるところを確認しながら半分に切れば数は2倍になる。その前に畑の準備をしておかなければならない。冬の間放っておいた畑の草取りをして,鍬で打つ。同じところを毎年何度も使っているから,土もだんだんやせてくる。これは肥料を入れてもよくならない。と言っても新しい土を入れることは難しいから,土を元気にするものを入れてやることにする。
 天気を見ながらの作業だが,今週中には植えられそうだ。