空の山通信11

No.564  太閤ヶ平 3月自然観察会

 太閤ヶ平(たいこうがなる)が今回の観察の場所だった。
「鳥取市の久松山の東北に位置する山で,本陣山とも呼ばれる。標高252m。以前は帝釈山と呼んでいたが,羽柴秀吉が鳥取攻めのために,1581年6月から10月にかけてこの山に本陣を置いて以来,太閤ヶ平と呼ぶようになった。秀吉は山頂を平らにし,たくさんの土塁をつくり,空堀を掘り,厳重な包囲網を完成させた。毛利の武将吉川経家が死守する鳥取城の兵糧は百谷方面からこの山を経由して運搬されていたが,秀吉が占拠したため兵糧が尽き10月25日ろう城4ヶ月で落城した。登山道の1つ,百谷からの道には石畳が現在も残っていて,往来の多かったことがうかがわれる。(鳥取県大百科事典)」
 この鳥取城の攻防はよく知られた話で,私もずっと以前絵本にこの部分を担当して書いたことがある。しかし,実際には行ったことがなく,この観察会で初めて入ったのであった。もちろん「歴史探訪」ではないから,視点は全く異なる。

「ウメとサクラはどこが同じで,どこが違いますか。」
 早速清末先生の質問が始まる。みんながいろいろ答える。もっともはっきりしているのは,どちらも蕾が鱗片(りんぺん・うろこ状をした細片)で守られているというのが共通点,ウメには花梗(かこう・花がつく短枝)がなく,サクラにはあるというのが相違点ということだった。同じバラ科の植物でも,このような特色がある。

 この日は,春らしいいろいろな動植物の観察ができた。
 小鳥では,カワラヒワがいる。エナガ,ヤマガラ,シジュウカラもいる。双眼鏡で姿を確かめる。この時期,これらの小鳥は混群といって,読んで字のごとく「混じって群れをなす」そうだ。これは,それぞれの食べ物をとる高さが違っているため,お互い競争することなく,それぞれの範囲を警戒することで結果的に助け合いながら食べ物をとることができるということではないか,ということだった。
 ヘビもトカゲもカエルもカナヘビも顔を出した。ヘビの顔をこの時期に見たというのは,私は経験がない。この日気温が18℃にもなっていたというから,ヘビ君もうっかり顔を出してしまったのかもしれない。明日からまた寒くなるというのに。

 ルリタテハが石の上に留まっている。みんながカメラに収める。撮影も終わったようなので私が近くにそっと近寄ると,蝶はパッと飛び立ってしまった。
「近寄りすぎたか」と言うと,「日の光を羽で受け止めやすいように留まっているのです。それをさえぎると,蝶は別の場所に移ろうと飛び立ちます」と清末先生。しばらくするとルリタテハは,帰ってきて先生の背中に留まった。またまたみんながカメラを近づける。今度は光をさえぎらないように。