空の山通信11

No.571  羽化

  3月の終わりに雪を見て,これはどういうことかと思っていたが,それでも4月に入って穏やかな日が続く。早い早いといわれていたサクラも鳥取でようやく開花宣言,あと1週間くらいで満開になるだろう。

 物置に入れているアゲハチョウの蛹の様子を毎日のように見ているが,変化がない。これは去年の暮れにレンガにぶら下がっていたのを見つけて屋内に入れたものだ(No.533参照)。ところが,いつものように観察に行った4月2日,そのレンガを置いていた棚の下のプラスチック容器の中にアゲハがいるのを見つけた。
「これはどうしたことだ」と,考えて思い出した。去年の秋の初めだった,枝にくっついていたアゲハの蛹を容器の中に入れておいたのだ。小さな蛹で,「これで羽化するかなあ」と観察していたが,冬を迎えるようになっても何の変化もなかった。「やっぱりだめみたいだ」とそのままにしていたのだ。
 
 羽化して少し時間が経っているようだ。あまり動きがない。大きさを測ってみると開張(羽を広げたときの両先端の長さ)が7センチくらい。春の蝶は小さいのが普通だが,アゲハとしては小さい方だといえよう。それにしても何か月も蛹ですごして,こうして成虫として出てくるその生命力に驚く。

 指を出してやるとよたよたと上ってきた。「気がつかなくてすまなかったな」と,近くの花にとまらせてやる。今の時期あまり花がなくて,プリムラやらベルフラワー,レンギョウ,ツバキなどと試してみるがどうも蜜を吸うことができない。
「でも,どうしょうもないな」と,一番多く咲いているレンギョウにとまらせておいた。しばらくしていって見ると,やっぱりレンギョウにとまっていたが,ふわりと別の枝に飛ぶ。「飛ぶ力はあるのだな」と,別の仕事にかかる。

 3時間ほど経って行ってみると蝶の姿はなかった。果たして飛び去ったのか,風に吹き飛ばさたのか,鳥か何かに襲われたのかそれは分からない。もし元気に過ごしているなら,また姿を見せるかもしれない。あの蝶の生まれ育った我が家のサンショウは今年も新しい芽を出しているところだから。
 また私のアゲハの初見の記録が新しくなった(鳥取でキアゲハ所見は4月28日―山陰の気象の暦・統計―)。さてもう1頭(蝶は頭で数えるそうです)はいつかな。