空の山通信11

No.581  シルクロード旅日記3

 北京の町にふわふわと白いものが舞う。
「えっ,雪?」そんなに寒くないと思うのに。
「ちがう。綿のようなものだ。」
「そうだヤナギの綿毛,誰の小説だったか出ていた。『アカシアの大連』そう,清岡卓行の作品だった。」
「清岡卓行?知らない。」と妻は言う。
「詩人で芥川賞をもらった人。」『アカシアの大連』が受賞作品である。
 
 現地ガイドの尹さんによると,これはポプラの綿毛だという。綿毛はふわふわと風に舞って本当に雪のようだ。しかし,北京の人たちはこの季節の現象をあまり歓迎しない。髪の毛や衣服にくっついてしまうちょっとした邪魔物。街路樹としてポプラを選んだのは間違いだったのではないか,という声が出ているそうだ。

 夕食は北京料理。日本では中国の料理はすべて「中華料理」で済ませているが,地方によって内容が違い味も異なり,名前も違う。今回の旅行の食事を見ても,「新疆ウルムチ料理」「トルファン料理」「敦煌料理」「甘粛料理」の他に,「田舎料理」「地方料理」「郷土料理」があり,「餃子宴」もある。西域はイスラム教の盛んな地域なので,「イスラム料理」というのもある。
 ただし,残念ながら私にはそれらの料理の違いを見分け,食べわける力はない。やはりすべて「中華料理」で片付けてしまうことになる。料理は全般に,唐辛子はかなり使ってあるが癖の強い香辛料は控えてあるように思う。日本人好みにしてあるということか。
 海外旅行では,食事中の飲み物はその場で個人の注文になることが多い。ところが今回はテーブルにビール2本と,アルコール以外の飲み物1本がサービスでついた。それ以上の分については個人負担である。サービス分で大体一人グラス一杯はのめるから,なかなかよいサービスである。

 食事が終わってホテルへ。19時15分(北京時間・日本に帰るまで)到着。
 部屋のキーを受け取り,明日の予定を聞いてそれぞれの部屋へ。明日は空路ウルムチへ飛ぶことになる。ウルムチへは4時間,大阪〜北京が3時間なので,それよりも遠いことになる。中国がいかに大きいかということが分かる。
 パスポートを提示しなければならないから,スーツケースに入れないように,という注意が何度もある。国内移動なのにどうしてなのかわからない。また,ペットボトルやビンの飲み物は開けて調べるから,開けられて困るものはスーツケースに入れておくように,との注意も受ける。
 中国には中国のやり方があるということか。