空の山通信11

No.585  シルクロード旅日記7


  天池湖は氷が張っていて遊覧船に乗れないため,代わりに故城を一つ見学することになった。4日目に予定していた交河故城を繰り上げて見学するという。途中砂漠が続く。「砂漠」といっても砂の砂漠ではない。礫の砂漠といったらいいのか,植物はほとんど見られない。たまに水の流れがあってもどこか消えてしまう。それでもそのあたりは僅かに植物が見られる。トルファンへの道はまっすぐに延々と続く。
「こりゃあ車のハンドルは要らないよ」「勝谷街道(鹿野町〜気高町の県道)もまっすぐだけどくらべものにならない」「この道を作るのにコンパスは要らない。点と点を結んだらできる」などと勝手なおしゃべり。

 交河故城はトルファン(吐魯番)市街地の西16km,二つの河が交わる高台にある城跡遺跡。現存する遺跡は唐代以降に建築されたもので,城壁はなく南北1km,東西最大幅300mの長方形をしている。その特徴はもともとあった粘土の山を掘って作った城であるということだ。砂漠の中の粘土の城なのである。粘土だから雨が降れば解けて溶けて流れてしまうだろうが,溶かすほどの雨は降らない。なにしろトルファンの年間降水量は20oしかないのだから。

 ついでにトルファンの気候について書いておこう。
 気候は,高温で乾燥していて風が強い。最高気温の記録は46℃という。まさに酷暑の地。そして,冬は酷寒の地となる(季さんは−40℃にもなるといったが,ガイドブックでは最低気温は−28℃と出ている。いずれにしても恐ろしく寒いには違いない)。内陸性気候であること,海よりも低い盆地であることが影響しているらしい。動植物の生存にはまことに厳しいといえる。

 この激しい気候がよい保存状態のミイラをつくったという。夏に埋葬されたものは急速な乾燥で体の組織が壊れてしまうが,冬に埋葬されたものは冷凍状態なので,ゆっくりと乾燥していく。また,砂(土)中に塩分が含まれているので(近くに塩湖もあるぐらいで,岩石中に塩分がある),腐敗を防止し水分を吸い取る。冷凍の塩漬け状態で,きれいなミイラが出来上がる。エジプトのミイラとの違いは「酷寒のあるなしによる」といえるようだ。
 交河故城へはマスクをして上がったが,この日はそれほどの埃はなかった。川に面して樹木も生え茂り,畑も作られている。城内には井戸も掘られ,砂漠の中に人が生活できる条件がそろっていた。

 夕食後,ウイグル族の民族舞踊を鑑賞。わざわざバスで出かけたが,何のことはないホテルの隣のレストランが会場だった。葡萄棚が道路の上を覆っている。ここは葡萄の名産地で,明日は葡萄農家を訪問するという。