空の山通信11

No.590  シルクロード旅日記12

 鳴沙山,月牙泉は,敦煌の南5kmに位置する。シルクロードといえば砂漠,そこをラクダに乗った隊商が通って行く姿をイメージするだろう。それを体験する格好の観光地となっている。東西40km,南北20kmに渡る広大な砂の山が広がっており,月牙泉はその山の下にできたオアシスである。鳥取砂丘の大すり鉢の様子を思い浮かべると,大体似たようなものだ。もちろん規模は大違いだが。
 バスが駐車場に止まると,数十頭のラクダが腹をつけて休んでいるのが見えた。

 加藤さんは電動カートで,3人はラクダで鳴沙山のふもと近くまで行くことにする。事前の注意。ラクダは後ろ足で立ち上がり,前足から座るので,そのときバランスをとるように,ということだった。また,砂の粒子が小さいのでカメラの扱いには十分注意するように,という。そう言ってもどう注意すればいいの,布に包んでいたら写すこともできやしない。

「ラクダ券」をもらって,それに書いてある「9番」を見せると,ラクダの持ち主(いや,雇われ人かもしれない)が,「これに乗れ」と手で合図する。そう難しくはないが,さて,らくだは楽か? 歩くよりは楽かもしれないが,長時間乗っているとおしりが痛くなるかもしれない。それでも20人くらいのにわか隊商は,
 ♪月の〜 砂漠を〜 はるばると〜 旅の〜 駱駝が〜 行きました〜♪
 ♪金と〜 銀との〜 鞍置いて〜 二つ〜 並んで〜 行きました〜♪
と「月の砂漠(加藤まさを作詞)」を歌いながら進んだ。「金と銀との鞍」ではなく,布の鞍だったが,まあ気分は出る。

 鳴沙山の近くで下りて,見上げると頂上まで登り道がついている。希望者は登る,登らない人は月牙泉のほうに案内するという。鳥取砂丘ではたびたび登った経験があるのでやめることにする。筋肉痛になって今後の旅行に差し支えてはならない。
 月牙泉は東西200m,幅50mの三日月形の泉である。漢の時代から水は枯れたことがなく,近くにいくつかの楼閣があったが文化大革命で壊されてしまったという。

 復興して建てられた楼閣の近くに行って体を休める。木が植えられ,下に月牙泉,高く鳴沙山を臨むよい眺めだ。
 やがて鳴沙山に登った人たちが降りてきだした。飛ぶように降りてくる人,砂に足をとられてもたもたとしている人とさまざまで,全員そろうのに結構時間がかかった。敦煌泊。