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No.598  蝶が出るか蛾が出るか

 気高図書館の花を妻が活けていることはどこかで書いたような気がする。もちろんボランティアである。花瓶(壷と言うより甕と言うほうがいいか)などの道具は我が家のもの,花も我が家のものか山や道端などの草花をとってくる。時々は近所からもらう,たまに買うこともある。つまりお金はほとんどかからないようにしているが,手間ひまは結構かかる。それも花が長持ちしない夏時は,少なくとも週一回は変えなければならないからたいへんだ。

 私は花を活けることはしないが,山に材料をとりに行くときにはつきあわされる。高いところの枝を切りとったり,草むらの中に分け入ったりするのは私の仕事になる。
 花を活けた後も,水を揚げているか,枯れたりしていないか,花が散ってしまっているのではないかなどを見なければならない。私が「図書館に行く」と言うと,
「花を見てきてよ」と頼まれる。頼まれた時は見てきてどんな具合だったか言うのだが,頼まれない時は見ないこともある。つい本のほうに集中して,入口の花のことは頭から消えてしまっている。
「花,どうだった?」「アッ,見なかった」「なんで見んだいな,何を見てきただいな」
 いや,私は花を見に行ったわけではない。などと言い訳はしない。

 6月に入っていい天気が続く。
「勝谷まで花を取りに行く。シシウドのいっぱい咲いているところがあるから」と言うのでついて行く。勝谷から瑞穂に越える峠のトンネルの手前に,なるほど背の高いシシウドがいっぱい咲いている。草を分け入って私が何本かの花を切り取る。
 水を揚げたのを確かめて,翌日図書館に活けに行ったようだ。その後,私も本を借りに行く。シシウドは大きく白くよく目立つから,別に頼まれなくても目に入る。
 よく見ると,花の散った後の種の柄(というのかどうか知らないが)に黒い小さな点が見える。さらによく見ると虫のようだ。何かの幼虫だ。形はアゲハチョウの幼虫に似ている(写真中央)。本で調べるが,よく分からなかった。

 家に帰ってその話をすると,
「セリ科の植物だから,アゲハかな」と言う。「うん,よく似ていた」
さらに調べていくと,キアゲハではなかろうかということになった。
 4日ほどして幼虫は少し大きくなった。花も終わりになったので,司書の高木さんに「もう花を始末してください」とお願いし,「この枝には幼虫がいますから私がもらって帰ります」と言って持ち帰った。それから物置に飼育観察の場所を作って毎日観察している。
 さて,鬼が出るか蛇が出るか,ではなく,蝶が出るか蛾が出るか,楽しみなことである。