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No.600  6月自然観察会

 6月自然観察会は福部町であった。福部町は旧福部村,鳥取市との合併により鳥取市福部町になった。鳥取砂丘,ラッキョウの産地として有名である。観察場所は「南田(ノウダと読むらしい)神社」「蔵見の鶏石」とあった。集合場所の福部町総合支所の近くへは行ったことはあるが,JRを使ってだったので,地図を頼りに車を走らせる。

 総合支所の駐車場の隣の庭の花について先生の話が始まる。
「NHKから『ゲンペイウツギについて教えてほしい』と言って来たのですが,あれですよ。」
 見ると,家の庭でよく見かけるハコネウツギ。白と赤の花が咲く。
「花は白から赤く変わって黄色になって散ります。赤と白が源平を象徴しているのです。ハコネウツギというのは,シーボルトが箱根でこの花を見つけて付けられた名前です」観察会前の観察である。

 さて,観察は総合支所から少し南へ移動して塩見川の支流に沿って始まった。猪の被害が大きいらしく金網,電線が張り巡らされている。
 蝶が舞っている,三匹いっしょに。
「モンキアゲハです。紋の黄色いのが特徴です。」
 えっ,じゃあモンシロチョウはどうなるの。紋は黒いと思うのだけど。モンクロチョウとは言わないよ。名前の付け方もいろいろあるのかもしれない。

 蔵見の鶏石について『岩美郡史』には次のようにあるという。
〜〜「鶏岩」志保美村中村(蔵見の誤か)ニ在リ,三角ニ峙テル巨岩ナリ,里人言フ此ノ岩ノ中ニ金鶏アリ,其ノ声ヲ聞ケバ福利来ル塗ルト……(『福部村誌』より)
 鶏石は特に変哲のない三角形の岩であった。少し離れてそれよりずっと低い岩がある。それが夫婦岩の女性のほうだと言う。もともとはやはり大きな岩だったと。しかし,それが崩れる前の岩の写真もなければ絵もない。本当に大きな岩だったのだろうか。岩よりも話がふくらんだのかもしれない。

 観察中金鶏は鳴かなかったがウグイスはよく鳴いた。郡史にある金鶏の声とはウグイスの鳴き声ではなかったのか。ところで,「ウグイスは息を吸いながら鳴くか吐きながら鳴くか」と,清末先生からの質問。これは難しい。
「どちらでも鳴くのじゃないですか」人間の口笛だってどちらでも音は出るのだから。
でも,それが正しかったらしい。

 ヒメジオンの花について有限花序の勉強,ウツギの花について詳しく観察などして,南田神社へ。
〜〜このむら(南田)で文化財的な価値を有するものとして鎮守の森がある。この森はこんもりとした御陵のような丸い山で椎の古木や歯朶の類や珍しい草花もみられる。……(『福部村誌』より)
 この社叢は「鳥取県のすぐれた自然」にも入っている。急な参道を登る。森の陰になってひんやりと涼しい。神社をバックに写真を撮って下りる。
 ウグイスとホトトギスの鳴き声が響き,早苗が風になびく田にはカエルとオタマジャクシと,それを狙うヘビと,それに驚く人と,初夏らしい風景に囲まれての観察会だった。