ときめき仏遊記 

のぼるがお送りする見仏プラスカミサマ紀行。どんな素敵な出逢いが待っておりますやら…。

 

 2008年4月初旬。うららかな春の陽射し。

 ふと空いた神様のプレゼントの様な一日。天気予報は雨でしたので、何も予定は入れてなかったんですが、家でぼ〜っとしているにはあまりにももったいない好日! ぼくは急遽、お花見をかねて、ご近所にいらっしゃる大好きな仏像さまにお逢いしに行くことにいたしました。


 春の風を感じながら、白い原付バイクのトミーさんで疾走!

 晴天に、浮き立つこころ。しかしぼくは、少し切ない想いを胸に抱えておりました。

 この春から、見仏(仏像鑑賞)の旅を始める予定ではあったんですが、人をいっぱい傷つけてきたぼくなんかに、そんな資格があるのだろうかという自責の念が、どうしても消えずに疼いており、もう半年近くも見仏に行けないままだったのです。


 20度を越す陽気の中、道沿いの桜の白を眺めつつ。

 カーブを曲がって、目指すお寺が右手に見えてびっくり。なんと手前には一面の菜の花畑が広がり、お堂前の広場では花祭りが開催されているようで、大勢の花見客が。こんなに賑わっているなんで予想しておらず、一人でゆっくり観音さまに対面したかったぼくは、少し気を削がれたように感じておりました。


 



 







 バイクを川べりに停めて、菜の花畑をう回してお寺へ。菜の花の香りが心地良く鼻をくすぐります。スピーカーからは琴の音が流されていて、皆さんのお祭り気分を盛り上げているようです。 細い参道両脇の桜並木は、まさに満開! 青空をバックに、薄桃色の花弁がすごく奇麗でした。

 広場では、お弁当や焼そばの販売や、抹茶の野だてなんかも行われていました。どうやら、スタンプラリーの中継地点にもなっているようで、花見客とハイキング姿の人々と半々くらいいらっしゃいました。


 さて、こちら、その名もずばり観音寺ですが、日本で七体しかないという国宝の観音さまがお堂にはいらっしゃるんです。

 お逢いするつもりではあったものの、正直少し、迷ってしまいました。境内は花見客で賑やかしいし、お堂の中も観音さまに逢いに来た訳でもない人たちで一杯……。こんな時に参拝しても、ゆっくり集中できないのではと思ってしまったんです。

 でも、これも、何かの機縁なのかも。

 逡巡を抱えながら、特別無料公開中のお堂の中に、靴を脱いで参内致します。 


 期待は、していなかったんです。しかし、御挨拶の為に正面に正座して、両手を合わせた瞬間、ふんわり、ふんわりと、観音さまの慈しみの波動みたいなものが、厨子の方から確かに感じられたのです。そのあまりの優しさに、まぶたの裏がじんわり熱くなってしまったほどでした。 

 何なんでしょう、この感覚……。それまで、見仏では「かっこ良い!」が基本で、ほとんどスピリチュアルな感覚は受けたことがなかったんですけれど。


 こちらの十一面観音さま、本当に綺麗です。聖林寺の観音さまと兄弟仏らしく、同じ工房で三十年ほど後に創られたということで、どことなく趣きは似ているんですが、こちらの方が若々しく、柔和なお顔をされています。同時に、興福寺の阿修羅に通じる若さ故の哀しみみたいなものも漂わせていて。


 国宝ともなると、ガラスケースの中に入れられて、厳重に管理されていることが多いんですが、こちらは厨子に収められたままで、文字通り手を伸ばせば触れられる位置までにじり寄って観ることができます。

 僕は、少し離れた場所に正座して、飽かずにお顔を拝観しておりました。う〜ん、やっぱりこの観音さま、お優しいです! なんだか、今日は大勢の人にお参りしてもらって、喜んでらっしゃるような気がして、そう想えば想うほど、なにか暖かいものが、どんどん胸の奥から湧いてきてしまうんです。



 よいのですよ。



 不意に、ぼくはそう言って頂けたような気が致しました。

 なにもかも、すべてが、よいのですよ。


 観音さま。どうか、ぼくが好きになった人たち、ぼくを好きになってくれた人たち、そしてぼくを嫌いになってくれた人たちが、幸福になりますように……。ぼくはお祈りします。

 勿論、観音さまはお応えにはなりません。

 ただ、若々しいお顔に永遠の微笑みを浮かべて、優しいお姿でひっそりと佇んでらっしゃるだけでした。




   

 







 お堂を出てからまた、人々に混じってお花見をしましたが、今度はぜんぜん嫌な感じがしませんでした。皆さん笑顔で、今の時間を楽しんでいて、子供達を抱き締めていたわって、お酒を飲んでいる人はいるけれど、不敬なことをする人は一人も居ない……。観音さまはこの人たちのことが大好きなんやろうなあって、ふと思いました。

(ちなみに、こちらの観音さまは、『見仏記』最新作ゴールデンガイド篇で、みうらさんが「かつて恋した三観音の一人」とされている方です(^_^)。)


 自責と、切なさと、胸いっぱいのわくわくを抱えて。

 見仏の旅、スタートです!



 プレ見仏 京都府 観音寺 十一面観音さま

プレ見仏 観音寺

春の那智詣で青岸渡寺





◯  近日アップ予定

春の那智詣で2 那智山

春の那智詣で道成寺

GW特別御開帳見仏  光明寺 知恩院山門

大千手さま開眼!  紀三井寺

山上の仏さま 醍醐寺上醍醐 


《第一番》青岸渡寺

《第一番》紀三井寺


西国三十三カ所巡礼 公式HP