検査裏話

手作り検査用具

 前のページにも記しましたが、検査用具が大変高いです。検査自体は、少しのトレーニングを積むと私のような素人でも、間違いのない評価ができるようになると思います。

 PEP-Rの普及は、この検査器具が安価で手に入れられるかどうかにかかっていると思います。いずれ、私の作ったデータ―をアップするつもりです。パソコンのプリンターがあれば、簡単にいろいろなものが作れます。

 検査用具の中で、一番難しいのが、絵本でしょうか。写真を使うか、シンボル的な絵を使うか、迷うところです。写真を使う場合の欠点は、対象物以外のものが写り込んでいて、対象物の存在がぼやける事です。背景を消すなどの処理が必要かなと思っています。それと生活実感のないものや経験しづらい特殊な物や事象ものは、たとえ能力があったとしても、答えられないケースもあります。ここらあたりは、柔軟に評価してもいいのではないかと思っています。

検査対象者の子供たち

 今回の検査は、学術的な意味合いも含めてありますので、対象者をいいかげんに選ぶことはできません。大学など組織力のあるところでは、対象者数を増やして検査の誤差を減らせるのですが、一開業医ではそうもいきません。幸い、今回対象になる学齢期前の健常な子供たちを得る事は、比較的楽でした。(3歳までは幼児健診の会場で仲良しの保健婦さんから一本釣りしてきてもらえますし、それ以上の場合は、患者さんにお願いしました。)しかし、仕事の合間にしなければならないということで、今回は、各年齢層1名ずつがやっとでした。

検査をスムーズに行うためのコツ

 検査者と対象者が仲良くならなければ(気を許してくれる)なかなかうまくいきません。その点、保母さんなどはこの検査に最適だと思います。本人と検査者との関係がうまくいかない時には、母親などに手助けしてもらうこともありました。

 検査項目が100以上あり、ひとつひとつが、結構大変な作業でした。それは、こどもにとっても同じことで、検査の間、集中力を保たせるのは容易ではありません。本当は、何回かに分けてやればいいのでしょうが、時間的な問題もあり、一回で終えようと無理もしました。

 検査中の様子は必ずビデオに記録しておきましょう!

 大変なのは、言語理解と言語表出の項目検査でしょうか。

 年齢的には3歳前後のこどもは、なかなかいうことを聞いてくれません。

 環境設定も大事です。年齢が低ければ低いほど、周囲のものに気が散りやすくなります。

 検査会場の選択にも十分な注意が必要です。町にある、色々な施設を借りておこないました。一番うまくいったのは、100畳ぐらいの広さの研修ホールでした。ここには、それこそ何も置いていなくて、子供の気が散るものは一切ありません。静かで、レースのカーテンで外界との遮断も適当でした。一度、診療所の待合室でやったことがありましたが、狭い上に玩具や絵本などが置いてあるために、気が散り(というか、嫌になるとそちらに逃げてしまう)とても検査にならなく、大失敗でした。

 飽きてきた時の一服としてジュースやお菓子を用意しておきますが、これは絶対に小出しにしてください。また、検査終了が近くなった時の伝家の宝刀として使ったほうがいいです。たくさん与えると、もう何もしてくれなくなります。

 検査の時間帯も大事です。一番体調が良くて疲れていない時間におこなう事です。眠くなったり、遊び疲れた後などの検査はうまくいきません。

 以上の失敗は、経験してみないとわかりません。

 検査は一回で行おうとしないこと。

 また、検査の省略ができそうな項目を母親からあらかじめ聴取しておく事も大事です。

 例えば、言語表出がない場合など、あらかじめ検査プログラムから省いておくことができ、検査時間の節約に役立ちます。

 身体を動かしたり、絵を書く項目などは、比較的喜んでやってくれます。

 途中にこういった項目を組み込む事によって、こどもを飽きさせることなく、検査できます。

歴年齢と発達年齢の一致

 現在のところ、驚くほどの一致を見ます。ただ、7歳のこどもにおこなった例では、当然ながら、一致は見られませんでした。(全部できても評価は6歳までですから。)

 おもしろいのは、芽生えの得点です。健常児の場合、年齢が低いほど(2歳ぐらいまで)芽生えの得点が高くでます。1歳半の子供でも芽生えの得点を足すと3歳レベルになる項目があることです。ところが、当たり前の事ですが、5歳6歳では、芽生え得点がほとんどでなくなります。

 年少児の場合、将来大きく伸びますよという予測がきちんとでるところが、この検査法のすごいところだと思います。発達障害だけではなく、健常児にも十分使えそうです。

 また、6ヶ月から応用できるとありますが、まだ試していません。でも、できそうな感じがします。興味のあるところです。

歯磨き自立への応用(IEPヘのとりこみ)

 検査結果から、芽生えの項目を中心にして、療育を始めるわけですが、ブラッシング能力の獲得には、模倣や言語理解の項目に芽生えがないと大変難しいといえます。また、空間認知という大変抽象的な能力が獲得されないと自分の口の中が理解できないために、上手にまんべんなく磨くということも難しくなります。(最も健常な大人でも難しいことなのですが)

 歯磨きそのものは、3歳レベルの発達がないと難しいといわれています。ブラッシングの自立は、IEPとのリンクなくしては成し遂げられないということを痛感しています。

 さらに指導を難しく複雑にしているのが、感覚異常です。特に触覚防衛は、他者による仕上げ磨きや、フッ素の塗布などを困難にしています。

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