よくある質問・疑問にお答えします

 


 水分でむせがあるので増粘剤を使っていますが、子供はいやがって口にしません。


 増粘剤を使用すると、さらさらの水分にとろみがつきむせにくくなります。暖かいもの冷たいものを選びません。しかし、独特の味があり、香りもなくなるので、味に敏感な子供はいやがるかもしれません。使い方の誤りもあります。多くの方は、増粘剤を入れすぎます。スプーンですくってぽたぽたたれる程度で十分です。混ぜる前のものを隣において、同時にたらして比べてみると、ゆるいかなと思ったものでも、かなりとろみがついていることがわかります。


のみこみが下手な場合、水分や固形食をゼリーで固めるとよいと聞きましたが、寒天ではだめでしょうか。


 誤嚥をする場合寒天は危険です。ゼリーは体温より低い温度で解け始めますが、寒天の溶解温度は100度です。ゼリーを誤って気管内に誤嚥した場合、すぐに液体になり、吸収されやすい状態になります。しかし寒天は、固体のままですの、吸収されにくく大変危険です。温度管理が大変ですが、ゼリーを使うべきです。市販のゼリーやヨーグルト、プリンなども寒天が使われていることが多いので表示をよく確かめましょう。


脳性まひの子供ですが、食事介助をしているとスプーンを噛んでしまい、うまく食べさせられません。


 唇ではさみとることが出来ないため、スプーンの上の食物を口に取り入れることが出来ないのです。そのため、介助者が、口の奥に食べ物を置こうとしてスプーンを突っ込みすぎるためにスプーン噛みをしていまうのです。脳性まひの子供は、顎や舌等の動きが、うまくコントロールできない(分離運動)ために、咬反射が強く出てしまいます。食事時の姿勢を工夫して緊張を和らげてあげてください。自分から食べ物を取り込もうとする動きを引き出したり、口唇がうまく使えるように口唇訓練を取り入れたらどうでしょう。


食事の時間うとうとしていることが多いのですが、こぼしたりむせこんだりして困ります


 誰でも目覚めの悪いときは口も動きません。目覚めが良いときにむせなどが少なければ問題はありません。ごくんという嚥下反射を起こす部位と目覚めを良くする指令を出す場所はともに延髄にあって、お互いに影響しあっています。生活のリズムを整えて食事時間は目覚めが良く機嫌の良い状態にしてあげてください。逆に、目覚めの良い時間帯に食事をするという発想もあります。服薬している薬によっては、覚醒状態を悪くするものもあります。


歯磨きをしようとするのですが、歯ブラシを噛んでしまい、奥歯がうまく出来ません。


 咬反射が強いと大変ですね。人に歯磨きしてもらうのは意外と不快なものです。痛かったり、おう吐反射が出たり。わたし達も歯医者さんで口の中をさわられるのはあまり気持ちいいものではありません。脳性まひのように反射が不随意で出てしまうのは仕方がありません。開口器やバイトブロックなどを併用するしかありません。歯磨きをしているときに大量の反射唾液がでますが、のどの流れ込むと苦しいものです。吸引機能つきの歯ブラシを使い、唾液がのどにに流れ込まないようにしてあげると反射が少なくなります。嫌がる場所と大丈夫な場所を確認して、嫌がる場所は徐々に慣らしていくようにしましょう。(口腔ケアのページ参照)


 水を飲むとき、ちゅっちゅと音を立てるのですが、問題ありませんか。


 乳児様嚥下が残っているためです。透明なコップで飲んでいるところを観察すると、舌が唇の外に出ているはずです。

 唇をすぼめ、コップのふちをはさむようにし、呼吸をうまくコントロールして、口の中に液体を導くのが正常な飲み方です。乳児様嚥下を成人嚥下に直さなければなりません。固形物の嚥下の練習からはじめます。顎や口唇をきちんと閉じてごっくんできるように、介助してあげる必要があります。こうすれば、舌の前後運動を制限できるので、成人嚥下がしやすくなります。


鼻で呼吸が出来ないのですが、食べる機能に問題はありませんか?


 嚥下と呼吸は大いに関係があります。わたし達は水を飲みながらでも、物をかみながらでも呼吸をすることが出来ます。そうでなければ、いっき飲みはできません。

もぐもく噛み砕きのときも口はあいていませんが呼吸はしています。すべて、鼻から呼吸しているから出来るのです。鼻呼吸が出来ないと食事が大変苦しいものになってしまいます。口呼吸が続くと、出っ歯になるため、唇が閉じづらくなります。食物の処理や水分の摂取が難しくなります。アデノイドがあったり、アレルギーで鼻閉がある場合顕著になります。耳鼻科的問題がない場合は、鼻呼吸訓練をおこないます。


口腔ネラトン法と経鼻経管栄養法とはどのように違うのですか


 経鼻経管栄養法は、鼻からチューブを挿入し、栄養剤や水分を注入します。チューブは、交換の時期まで留置しておきます。欠点として、常に咽頭に異物感がある。チューブ周辺が不潔になりやすい。嚥下運動の妨げになる。などです。口腔ネラトン法は、チューブを口から挿入します。注入後は口からチューブを取り出します。利点として、注入時以外は、取り出すために、管理が楽。口腔咽頭の清潔が保たれる。注入時間が短い。挿入時の刺激で嚥下の練習が出来る。欠点として、咽頭反射が強いと挿入できない。経鼻経管より挿入のコツがいる。アデノイドがあると挿入が困難。などです。


嚥下造影(VF)とはどんなことをするのですか?


  造影剤入りの食物や液体を飲んでもらい、その流れをレントゲンで調べます。結果はビデオテープなどに記録されます。口やのどの動き、あやまって気管に入っていないか、どんな姿勢や食べ物が適切か、などを検討するためにおこないます。誤嚥をしている場合の必須の検査法です。


 水が上手に飲めないので市販のゼリー飲料を使っていますが、代用できるでしょうか?


 水分ではむせやすい場合でも、ゼリー(実際はゼラチン100%ではない)飲料(アイソトニックゼリーなど)では、むせにくくなります。常温でゼリー上になっていますので、携帯などにも便利です。また、食事時に併用することで、食物の咽頭残留の除去にも効果的です。ただ最近、問題が出てきました。それは、「飲料の酸性度が非常に強い」ということです。保存性を良くするために酸を添加してあるのです。

 問題点として、強酸により歯が溶ける(虫歯になる)ことが上げられます。ゼリー飲料を飲んだ後には、口腔洗浄が必須になります。2つ目は、誤嚥したときに組織に与える影響です。胃液に近い酸度ですから、気管や肺に与えるダメージは無視できないものになります。現在、このことについては研究調査がなされています。

 やはり、水分補給だったら、1.6%ゼラチンゼリーが、理想的。混ざり物がない点でも安心です。


かむことが出来るというのはどんなことなのでしょう。


 あごがパクパクと動いているとあたかも咀嚼が出来ているかのよう考えますが、実は、咀嚼しているときのあごの動きは、そんなに単純なものではありません。咀嚼が出来るためには、舌の動きが重要になります。口でとられた食べ物をどろどろにするために奥歯の部分に運ばなければなりません。食べ物を前から横へと移動させるのですが、外から見ているとあごが右か左にずれることと口角が左右非対称になることででわかります。こなれた食品は食塊としてまとめるために、奥歯から舌の中央に運ばれ嚥下をすることになります。いきなり奥歯に食べ物を持っていって、かむ練習をさせようとする例がありますが、舌の動きを無視しても、うまく咀嚼の動きを出すことは難しいです。


経口摂取していなくても口腔ケアやマッサージは必要でしょうか。


 誤嚥が理由で、胃ろうや経管栄養をした場合でも、唾液は常に誤嚥している可能性はあります。唾液とともに口の中で繁殖したばい菌も誤嚥します。唾液そのものの誤嚥はさほど怖くはありませんが、ばい菌は誤嚥性肺炎を起こします。口腔ケアは、口の中のばい菌の数を減らして、肺炎の可能性を低めます。

 口から食べないことで口を使わなくなると、口の機能はどんどん落ちてきます。筋肉は萎縮し、硬くなり、口の外や中の感覚も、鈍くなったり逆に過敏になったりします。たとえ経口摂取の可能性がなくても、外からの感覚刺激に対する反応をマッサージなどをすることによって保ってあげたいものです。


うがいが上手にできないのですが


 ぶくぶくうがいは、本当に高度な技術です。口の中にいったん水をためたまま呼吸を続けられることが基本です。これは言葉の発達とも関係があるようです。意味のある言葉を連続的に発生させるためには、唇や舌、そして呼吸(息を出す量やタイミングを微妙に調節する)が別々にかつ合目的に動かなければならないのです。
 言葉の発達(模倣も含めて)が進む事により自然とブクブクもできるようになるはずです。風船膨らましやへび笛をふくなど、頬に空気をためて、すこしずつ噴出すという練習も役に立ちます。
 これに関連して、コップから水を飲む行為も口唇と呼吸の動きのコンビネーションが必要です。
 ここでのポイントは、口唇でコップの縁を挟み込むことと、上唇に水が触れることです。
 コップをはさむ事により、唇はおちょぼ口になり、空気の吸い込みの量と、水を吸い込む量が調節できるようになります。
 また、上唇に水が触れることにより、口に入る量などを感覚的にコントロールします。(コップをどのくらい傾けたらいいかとか、熱すぎないかなど)手との協調も必要です。
 いずれにしても、口の働きは、非常に繊細で、鋭敏な感覚運動によっているのです。感覚が過敏や逆に鈍感だと上手く働かないんですよね。たとえば、赤ちゃんの時、指しゃぶりや玩具しゃぶりをしなかったり、脳性麻痺のお子さんのようにしたくてもできない場合などです。能動的に獲得できない場合、早期から間接訓練を利用して、感覚刺激に対する反応を正常に近い状態にしてあげる事は、非常に大事です。


唇に麻痺があり食べものがこぼれます


 氷水を入れたビニール袋で耳の付け根から頬の部分をマッサージします。一日に何回もしましょう。テーピングも有効です。麻痺側の唇を、持ち上げるようにテープで止め唇半分を閉鎖してしまいます。


 

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