本州と四国とを結ぶ橋には、3つのルートがある。
1つは、兵庫・徳島ルート。明石海峡大橋〜淡路島〜大鳴門橋とたどる。明石海峡大橋は世界
最長の吊り橋である。
2つは、岡山・香川ルート。瀬戸大橋とは、大小6つの橋を総称したもの。上に高速道路、下に
鉄道という2階建て構造になっている。
そして3つは、広島・愛媛ルート。8つの島に10本の橋がかかるこのルートは、平成11年にす
べての橋が開通し、その総称は「しまなみ海道」と名付けられた。
 しまなみ海道は、他の2つのルートのように直線的ではない。島と島とを結んだ結果としてそ
れがたまたま本州と四国をつなぐことにもなった、というように思えるのだ。だから、他のルート
のような派手さを感じない反面、瀬戸内の島々その土地の匂い、空気を味わえるのではないか
という期待を抱かせる。直線より、曲線の旅のほうが面白い。

 前置きが長くなったが、しまなみ海道を旅するのに、当初はバスを利用する予定でいた。本数もそこそこあるので、起点の尾道から終点の今治まで途中下車しながら行こうと考えていたの
である。
 しかし、このときの旅に同行した先輩の提案で「レンタサイクルで、しまなみ海道を走破!」と
いう、その当時には異常とも思えるプラン(?)を決行することとなった。高速道路ならいざ知らず、
自転車が通れる道は曲がりくねっているため、正確な距離は測定していないが、おそらく60〜
70キロはあるのではないだろうか。日常生活では全くといっていいほど自転車に乗らないし、
1日で着けるのだろうかという不安がよぎったが、各ガイドブックによると、このルートは絶好の
サイクリングコースと紹介されていた。普段から旅行情報誌などほとんど読まないので、単なる
情報の欠如であった。そんなこんなで、東京発の夜行列車に乗り、出発点、尾道を目指したの
である。 
SCENE1 尾道〜因島(いんのしま)大橋
 尾道に到着後、駅で尾道ラーメンの朝食。朝からラーメンというのも案外いけるものだ。
食後、徒歩で駅前港湾駐車場(レンタサイクルターミナル)に向かう。どこまで行くのか知らな
らないが、10名近い人間が自転車に跨ろうとしていた。俗に言う“ママチャリ”風の自転車もあ
れば、マウンテンバイク風(あくまで“・・・風”であるが)のものもある。三段変速ギア付自転車
を借り、広島弁の飛び交うターミナルを出る。ちなみに乗り捨ての場合、料金合計は1500円。
 まずは船で対岸の向島へ渡る。空は曇天ながら、晴れに近い曇といえた。雨さえ降らなけれ
ば、何とかなる。旅先で雨に降られるのは一番辛い。特に今日は自転車だから、その思いは
普段よりも切実なのだ。数分で向島に着くと、いよいよスタート。四国側のゴール地点、今治
には20:00までに着かなければならないプランを立てたので、ノロノロと進める旅ではない。
最初の数キロは海沿いではなく、ごく普通の住宅地のような中を走り、海が見たいなあと思う
頃、ちょうど海岸線に出た。
 右手に岩子島を見ながらのサイクリング。時折、釣り人を見かける程度で、海も陸も静かで
穏やかな雰囲気に満ち満ちている。今日が休日だからであろうか。唯一、残念だったことは、
曇という天気のために島々と空の色にはっきりとした色の差が出なかったことである。気候と
しては暑くも寒くもなくいいのだが、あとは青空だけを待ちながらペダルをこぎ続けた。海沿い
は平坦な道で楽であるが、行く手に大きなつり橋が見えてくると不安が募った。あの橋まで上
がらねばならない・・・。あの橋とは、本日最初の橋、因島大橋である。しかし、橋の高さまで上
がるのにはそれほど苦労しなかった。サイクリング客のためにであろう、急坂ではなく螺旋状
の道が作られていたのだ。だから、時間こそかかるが、ペダルを漕いでいるうちにいつの間に
か橋の入り口まで着けてしまう。橋の高さまで上がるとさすがに眺望が素晴らしい。少し休憩
しがてら、瀬戸内海の180度の眺望に見とれた。
 因島大橋は、瀬戸大橋のような2階建て構造で、2階部分は自動車専用、1階部分は自転
車・歩行者専用となっている。贅沢を言わせて貰うと、1階部分は檻の中のようで、眺めはい
いのだが、フェンス代わりになっている鉄柱が邪魔で写真を撮るには不向きな構造であった。
とはいえ、海の真上を自転車で走るということは簡単にできることではない。しまなみ海道に
かかる橋には歩行者や自転車といえども200円以下の通行料を要するが、これは安いといえ
よう。ゆっくりと進みながら1キロ余りの橋を渡り終え、今日2つ目の島、因島へと入った。
《 海 ・ しまなみ海道走破の旅 》
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