ミステリ友の会−猟犬クラブ−

猟犬クラブ

最終更新日 2000.11.21

猟犬クラブの課題図書の感想文を紹介します。
古いものについては、BakerStreet 221B−2をご覧下さい。



第九回課題図書

『災厄の町』

エラリー・クイーン  1977年  早川書房
 アメリカの田舎町ライツヴィルに、エラリー・スミス(クイーン)氏が降り立った。執筆をするために来たのだが、どこも人であふれ、「災厄の家」と言われている、ライツヴィルの創始者の子孫である、ジョン・F・ライト氏の持ち家をやっと借りることになる。その家はライト氏の娘、ローラとその夫になるはずだったジム・ハイトの結婚のために建てられたものだった。しかし、ジム・ハイトは、結婚式の直前に失踪。ローラは実家に閉じこもってしまっていた。エラリーがこの家に住み始めてまもなく、突然ジム・ハイトが戻ってきて、ローラと結婚することになる。「災厄の家」に住むことになった幸せの戻ったローラが、ジムの荷物を整理していると本の間から、ジムの書いた、妻を毒殺するという三通の手紙が出てきた。これを見ていた、エラリーとローラの妹のパトリシアは、ジムの行動を疑いつつ事件に巻き込まれていく。そして、遊びに訪れていたジムの妹のローズマリー・ハイトが衆人の目の前で毒殺される。ジムは、ローラを殺そうとして誤って妹を殺してしまったのか。
 エラリー・クイーンのライツヴィル・シリーズの最初となる作品。ここに登場するエラリー・クイーンは傍観者として、淡々と事件に関わっていく。他の作品(国名シリーズ)と比べてしまうと、そのエラリーのあまりにもの消極的さにいらだちと共に、あきれてしまった。探偵役として、もっと意欲的に事件を解決する姿が見たかった。どうも、事件の進行を楽しんでいるような印象である。この点は、探偵ものの好きなわたしとしては、残念である。
 ライツヴィルの町の人々の事件との関わりとリアクションは、人間心理の典型なのだろうか。作者のエラリー・クイーンはこの町を、平均的なアメリカの町として設定し、日常的な中での事件を人間の心と関わらせて描こうとしていたようである。こうした試みが、探偵としてのエラリー・クイーンの事件の関わりへの消極性と、冴えない推理につながってしまったのだろうか。ともあれ、推理小説としては面白い作品だった。

評価 ★★★★

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