概略
車検時にキャリパーオーバーホールをやってもらった後,低速時にブレーキの鳴きが気になるようになった.
  ブレーキの鳴きに関しては,パッドの面取りなどの対策もあるが,とりあえず,最も簡単な鳴き止めグリースから試してみようと考えた.
  またディスクブレーキの場合,スポーツカーでは対向ピストンを使っていることもあるが,大衆車では通常,
  ピストンは片側にしかない.そしてピストンが片側のブレーキパッドを押すと,キャリパーには逆向きの反作用力がかかるわけだが,
  これがキャリパーから伸びた爪によって反対側のブレーキパッドを押す力になるのである.作用・反作用の法則により,
  理論的には両方のブレーキパッドには同じ大きさの力がかかるはずなのだが,
  キャリパーを固定しているスライドピンの滑りが渋くなっていると,この反作用力が反対側のブレーキパッドに十分に伝わらなくなる.
  その結果,ブレーキの効きが悪くなるとともに,ピストン側のブレーキパッドだけが早く消耗する(片減り)
  という現象が起こってくる.これを避けるためには,定期的にスライドピンにグリースを塗って,滑りを良くしてやる必要がある.
  ちょうどスタッドレスタイヤからノーマルタイヤに戻すのにタイヤを外すので,ついでにこの作業をやってみることにした.
 
用意する物
まず,修理書のブレーキキャリパーの分解図を確認(フロント,
  リヤ).
  グリースには2種類あって,主にブレーキパッドの鳴き止めとして用いられるブレーキグリースと,
  ゴムと金属の摺動部に塗布するラバーグリースとがある.ブレーキは作動時に高温となるため,グリースは専用品を用いる必要がある.
  今回,用意したのは次のようなものである.
   
  ラバーグリースはトヨタ純正品を使用(540円).ブレーキグリースには,KUREのディスクブレーキクワイエットを使ってみた.
  写真の下に見えているものは,アルミホイールのセンターキャップを外すための道具である.
 
実際の作業
  作業は,タイヤを外す必要があるので,スタッドレスタイヤからノーマルタイヤに戻すときに一緒に行った.
  まず,タイヤを外した状態が次の写真である(写真は右リヤ).
   
  黄色の矢印で示しているのがスライドピンである.これを緩めると,キャリパーが外れる.
  今回はブレーキホースは切り離さないので,キャリパーは作業の邪魔にならないようにサスペンションアームに針金でつるすか,
  うまく載せておける場所があったら載せておくとよい.またキャリパーには,右側であることを示す「R」の文字が刻印してあるのが見える.
  で,キャリパーを外すと,次のようになっている.
   
  青っぽく見えているのがブレーキパッドである.半年前に交換したところなので,ほとんど厚さは変わっておらず,
  内側と外側の減り方の差もほとんどなさそうである.さて,このブレーキパッドのところには,
  おそらく純正のブレーキグリースと思われる黒いグリースが塗ってあったので,ブレークリーンを吹いてきれいに拭き取り,
  そこの上にディスクブレーキクワイエットを塗ってみた.
   
  使ってみて初めて知ったのだが,このディスクブレーキクワイエットって,結構,毒々しい朱色をしている.
  このあたりは好みのわかれるところだろう.写真は外側だけだが,内側のピストンが当たるところにも同じように塗ってある.
  なお,本当はシムを外してシムの裏面にも塗り込む必要があるのだけれど,今回は面倒くさかったので,シムの表面にだけ塗っている.
  
  
  一方,取り外したスライドピンは,次のようになっていた.
   
  ブレーキング時の高熱のためか,ちょっと焼けたようになっているのが気になる.
  これも10年経ったら新品に交換した方がいいのかもしれない.とりあえず今回はそこまでは考えていなかったので,
  ブレークリーンで洗浄して再利用する.上の写真で,赤で示した範囲にラバーグリースを塗布する.ネジ部には塗らないように.
  で,あとキャリパーを戻して,スライドピンで固定するわけである.
  
  
  続いてフロントであるが,フロントの場合は作業したい側にハンドルを切っておくことで,作業がやりやすくなる.
   
  作業自体はリヤと同じなのだが,スライドピンが太いのと(リヤは二面幅12mmだが,フロントは17mm),
  上側のスライドピンが,ブレーキホースのために抜くことができない(上の写真,赤矢頭)ことに注意.
  キャリパーは外すことができるので,キャリパーを外して,その状態でスライドピンにラバーグリースを塗る.
  ブレーキパッドに関しては同じなのだが,こちらはピストンに接している内側のほうが,明らかにパッドが消耗している.
  可能なら内側と外側とを入れ替えればよいのかもしれないが,今回は面倒くさいので,そのまま使用する.
  このブレーキパッドの片減りは,やはりスライドピンの滑りが渋かったのが原因と思われる.
  こちらもリヤと同じようにディスクブレーキクワイエットを塗って,キャリパーを戻し,スライドピンを締めつけた.
 
 ・結果
  作業後,試走してみたところ,ブレーキの鳴きはおさまっており,また走っていても,ブレーキの利きが少しよくなった
  (作業前と同じ感覚でブレーキを踏むと,思ったより少し手前で止まるようになった)ように感じられた.これは,
  スライドピンの滑りがよくなったことで,ピストンと反対側のブレーキパッドにもちゃんとブレーキ圧が伝わるようになり,
  そちら側でもきちんと制動力を発揮するようになったためではないか,と考えられる.  
  もちろん,ブレーキパッドの片減り防止にも効果があると思われる.車をジャッキアップする手間はあるが,
  タイヤ交換時に一緒にやればごくわずかな労力で済むので,冬場,スタッドレスタイヤに交換する人なら,
  そのときに一緒にやっておいて損はないと思う.(作業日:2002年3月3日)
 
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