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インジェクター交換


・概要

アイドリング時のミスファイアについて,プラグやプラグコードを交換しても症状に変化がないので, 原因としてインジェクターの問題も考えられる.実際,エンジン回転中に1番のインジェクターをはずしても回転状態には変化がなく, 2番のインジェクターをはずすと明らかにエンジン不調になるので,1番シリンダが(少なくともアイドリング時には) 爆発していないことがわかっている.1番のプラグコードを抜いても同じであり,しかし火花はちゃんと飛んでいる. そうすると,インジェクターの詰まりや作動不良の可能性が出てくる.インジェクターの作動音はちゃんと聞こえるので, 詰まりの可能性が高そうだが,その根元に当たるフューエルデリバリーパイプの問題も考えられる. どちらにせよ,一度,インジェクターとデリバリーパイプを外してみて点検を行い,ついでに内部を清掃しておくのがよいだろう. また,フューエルデリバリーパイプにはプレッシャーレギュレータがついているので, デリバリーパイプを外すついでに,プレッシャーレギュレータも交換しようと考えた. 本当は,燃圧が抜けたついでにフューエルフィルターとパルセーションダンパーも交換しようと思っていたのだが, 今回は時間の関係でできなかった.これに関しては,また次回の予定である.

・準備品

まず,修理書の図の確認.→(こちら
最低限,必要なものは,交換する本数のインジェクター(今回は1本.定価¥12100)と, フューエルパイプのガスケット(IN側とリターン側2枚ずつ)である.どうせなら残りのインジェクターも外して清掃したいので, 残りのインジェクター本数分のOリングとグロメットが要る.またインジェクターは,作動する時に少しカチカチと振動するので, インテークマニホールドにはゴム製のバイブレーションインシュレータを介して取り付けられており, これも10年以上経っているので,ついでに新品に交換しておくとよい.またフューエルデリバリーパイプは, 樹脂製のスペーサーを介してインテークマニホールドに固定されているため,これも新品にしてみた. 外してみた結果では,特に新品にする必要はなかったようだったが,フューエルデリバリーパイプを外す時に落下させてしまいがちなので, なくした時のために予備として用意しておくといいのではないだろうか.あとインジェクターを外すのに, 上に覆い被さっているスロットルボディを動かす必要があるので,スロットルボディとサージタンクの間のガスケットもあるとよい (再使用しても問題ないようだが).それ以外には,こだわりとしてフューエルプレッシャーレギュレータと固定ボルト, フューエルデリバリーパイプの固定ボルトも新品にしてみた.それとフューエルデリバリーパイプやインジェクター内部の清掃のため, 市販のインジェクタークリーナーも用意する.これは本来はガソリンに混ぜて使用するものだが, 今回はインジェクター単体を取り出すので,原液のまま内部に通して洗浄を行うことにした.

準備したもの.今回は 2. と 4. のみを使用した.
1. フューエルフィルター
2. インジェクター
3. ガスフィルター
4. プレッシャーレギュレータ
5. パルセーションダンパー

インジェクターの詳細写真
A. インジェクターバイブレーションインシュレータ
B. グロメット
C. Oリング
今回の交換部品
品名品番個数価格
フューエルインジェクターASSY23209-460101¥12,100
 ↑Oリング90301-070015¥190
 ↑グロメット90480-130055¥120
 ↑インシュレータ23291-410105¥170
プレッシャーレギュレータASSY23280-460101¥5,600
 ↑ガスケット90430-100122¥80
ガスケット(フューエルメインホース側)90430-120262¥80

・インジェクターのテスト方法と清掃

インジェクターは,電流が流れると内部の弁が開き,先端から燃料が噴射されるようになっている. 従ってテストや内部の清掃には電流を流さないといけないので,電源装置,スイッチなどが必要になる. 作業前に,新品のインジェクターを使って,インジェクターのテスト装置の予行演習をしておく. またインジェクターはポンプではなく単なるスイッチとして動作するため,噴射のための圧力は外部から加えてやる必要がある. 本当はフューエルポンプやプレッシャーレギュレータを使用するのが正しいやり方だが,そこまでの設備がないので, 今回は医療用の注射器(使用済みのものを洗浄して使用)にインジェクタークリーナーを吸って, インジェクターのお尻に差し込み,手で圧力をかけるようにした.やってみると,接続部からの液漏れもなく, 意外といい感じだ.その状態でインジェクターに通電すると,見事にインジェクターから液が噴射された(下の写真右側). もちろんこれは手で押しているので,圧力が一定というわけにはいかないから,噴射量の定量評価はできないが, だいたいの噴射状態は知ることができたし,内部の清掃も十分に可能だろう.
写真左:実験装置全景    写真右:噴射したところ

・作業の実際

 (1)燃料流出防止作業

燃料系の作業をする時は,最初に燃料流出防止作業をする必要がある.これは, 簡単に言うと燃料ポンプを止めた状態でエンジンを回し,燃圧が抜けてエンジンが自然に止まるのを待つわけである. 燃料ポンプを止めておくには,トランクルーム床下にある燃料ポンプのコネクタをはずしてやればよい. トランクのカーペットをめくると,下の写真のようになっている.

ここで黒いプラスチックでできた配線保護カバーを留めているクリップ(橙色の円)と, サービスホールカバーを留めているビス3本(赤色の円)をはずしてやると,燃料ポンプのコネクタが現れる(下の写真).

橙色の円で囲んだ部分が燃料ポンプのコネクタである(左下に見えるコネクタは,燃料の残量を伝えるためのもの). これを抜いてやると,エンジンをかけても燃料ポンプは作動しなくなるわけだが, 実際にはずしてエンジンをかけてみると,エンジンがかからない.エンジンのかかった状態で抜いても, あっという間にエンストしてしまう.結果からいうと,やってもやらなくても変わりがないような・・・. というわけで,この日より後に行った作業では,この燃料流出防止作業は特に実施しなかったのだが, はっきりいって別に不都合はなかった.むむむ

 (2)スロットルボディを動かす

燃圧がある程度,抜けたら,それからエンジンルームの作業に移る. インジェクターはスロットルボディの下にあるので,スロットルボディを動かさないといけない. 冷却水を抜いてスロットルボディを完全に取り外すと作業はやりやすくなるが,あとが大変なので, 今回は温水配管をつないだままでスロットルボディーを少しだけ動かし,インジェクターを取り外すことにした. エアフィルターからのエアダクトを取り外し,スロットルボディについているコネクタやエアホースを全部抜いてしまう. そしてスロットルボディを固定しているボルトとナットを緩めると,スロットルボディが少し動かせるようになる.

サブスロットルアクチュエータ,スロットルポジションセンサー,ISCV等のコネクタ(緑の円)を抜き, スロットルボディを固定しているブラケットの下側のナット(赤の円)を緩める. ブラケット上側のナット(黄色の矢印)は,無理に緩めなくてもよい(緩めてブラケットを外してしまってもよいが).

スロットルボディをサージタンクに固定しているボルトとナット(右側の赤矢印)を緩めると, このようにスロットルボディが動かせるようになる.緑円内は取り外したISCV(普通は外す必要はない).
ここで,スロットルボディが動いたので,ISCVをチェックしてみることにした.(スロットルボディを少しずらさないと, ヘッドカバーの出っ張りが邪魔で固定のビスを緩めるのが難しい).太めのビスで止まっているのだが, 少し固着しているのでドライバーでは無理で,ソケットレンチ用のドライバービットを用いてハンドルで回してやる必要がある. さすがにこれは緩んだので,ISCVを取り外そうとするが,これがまたなかなか動かない. マイナスドライバー2本をてこのようにして,なんとかこんなで外すことができた.見たところ, この前のエンジンコンディショナーのためか少し下に汚れがたまってたが,全体的には綺麗で, ゴミの付着等もなく,特に問題がないような感じであった.さて本題に戻り,スロットルボディを, ウォーターバイパスホースの様子を見ながら,動かせるだけ動かして,サージタンクステーを取り外す. これでインジェクターの上が空くので,インジェクターのカプラを全部,抜き,続いて燃料配管の切り離しを行う.

 (3)燃料配管の切り離し

エンジンが止まったとはいえ,まだ少し燃圧が残っているため,いきなり配管結合用のユニオンボルトを緩めると, そこからガソリンが噴き出してくるから,まわりをウェス(今回はキッチン用のペーパータオルを使用) などで覆ってガソリンが周囲や自分自身に飛び散らないようにしてから緩める. 修理書では奥のIN側から外すようになっていたが,作業を簡単にするため,手前のリターン側から緩めることにした. ボルトを抜いたら,次にフューエルプレッシャーレギュレータも今回は交換予定なので取り外す. ここからも結構,ガソリンがあふれ出てくるため,要注意である.それから,奥のIN側のフューエルパイプを切り離す. このとき,周囲のエアホースは全部,抜いてしまわないと作業がしずらい.また,こちらからもガソリンが出てくるから, ウェスなどで周囲をちゃんと覆っておくこと(まぁ,こぼれてもすぐに蒸発してしまうが).

 (4)フューエルデリバリーパイプ取り外し

いよいよインジェクターのくっついている,フューエルデリバリーパイプの取り外しにかかる. このとき,サージタンク中央にある可変吸気のアクチュエータと, サージタンクに沿って走っているワイヤハーネスが邪魔になるので,固定ボルト・ナットを外して,少し動かしておいてやる. 可変吸気のアクチュエータは,ボルト2本で留まっているので,これは普通に緩めて抜けばよい. ワイヤハーネスは,インテークマニホールド上面にナット2個と,サージタンク後面にボルト1本で留まっており, 後ろのボルトが外しにくそうに思ったので,今回は前寄りのナット2個だけ外して行ってみた.これでもできなくはなかったが, 次にフューエルデリバリーパイプを外すときに,いちばん後ろ寄りの固定ボルトが抜きにくい. 後日,インテークマニホールドガスケットの交換の時にはサージタンク後面のボルトも抜いたのだが, 意外と簡単に外せたので,これからするときにはサージタンク後面のボルトも外しておく方がよいだろう. ともかく,これでやっとフューエルデリバリーパイプを固定しているボルトを抜くことができ, それからインジェクターがついた状態のフューエルデリバリーパイプをはずすことができた (下の写真.前よりのところに横たわっているのが,フューエルデリバリーパイプ).
このとき,インジェクターの刺さっている位置にあるゴムのクッション(インジェクターバイブレーションインシュレータ) がインテークマニホールド側に残っていることがあるので,インジェクターと一緒に取り外す. 再使用も可能であるが,今回はおそらく11年間無交換であったことを考えて,全部,新品に交換することにしている.

 (5)インジェクター単体点検と清掃

インジェクターのついたフューエルデリバリーパイプは,家の中に持ち込んで,インジェクター単体でのテストにかける (方法は,前述のテスト方法と清掃の項を参照). 全部のインジェクターを抜いて順番に並べ,1個ずつインジェクタークリーナーを通しながら通電して, 詰まりがないか確認するとともに内部の洗浄を行った.1番シリンダのインジェクターは新品に交換したが, 他のものは再使用した.再使用時には,インジェクター根元のグロメットとOリングを新品に交換しておく. テストの結果は,意外にも,1番シリンダのものを含めてどれもまったく問題がなく, またフューエルデリバリーパイプも内部にはスラッジなどまったくない状態で,内側をインジェクタークリーナー, 外側をブレークリーンで洗浄して再使用している.ということは,エンジンの失火の原因は, インジェクターなどの燃料系ではない,ということなのだろうか.そう考えながら, 全部のインジェクターを元通り,フューエルデリバリーパイプに差し込んで, 新品のフューエルプレッシャーレギュレータを取り付け,車のところに持って帰った.
番号抵抗値(Ω)噴射
NEW13.7
113.2
213.2
313.3
413.4
513.3
613.3

 (6)再取り付け

取り付けは取り外しと逆の手順を踏むだけであるが,最初のインジェクターとデリバリーパイプの取り付けが少し面倒だった. もともとインテークマニホールドとフューエルデリバリーパイプの間には少し距離があり, スペーサーをはさんでボルトで締め付けるようになっているのと,差し込み部分にゴムのクッションがあるから, なかなか位置が定まらない.なんとか入ったので,ワイヤハーネスや可変吸気のアクチュエータ, インジェクターのカプラ,サージタンクステーを取り付けた.ここで,ふとインジェクターを見ると, いくつかのインジェクター根元のクッションが,うまくはまっていないのに気づいた.あららら,またやり直しだ. またワイヤハーネスや可変吸気のアクチュエータを動かし,フューエルデリバリーパイプの固定ボルトを緩めて, ゴムのクッションがいい形になるように調整して,やっとOKとなった.燃料パイプを新品のボルトとガスケットで締め付け, スロットルボディを戻す.このとき,ISCVも新品のOリングに付け替えて取り付けている. スロットルボディとサージタンクの結合面にはガスケットが使われているが,これが, もともとついていたものは,新型車解説書によるとステンレス板3枚をシリコンゴムでコーティングしたものだったのが, 新品は黒い1枚のガスケットになっている.これもコストダウンの結果だろうか.まぁ,ちゃんと空気が漏れなきゃそれでいいんだけど. あとで見たところ,新品はインテークマニホールドガスケットと同じ材質のようだ. これは新型車解説書ではメタルコーティングと書かれており,ベースの材質はちょっとわからない.それはおいておいて, スロットルセンサーなどのコネクタ類と,バキュームホースなどを元通りに差し込み,ボルトとナットを締めて, スロットルボディが元通りに戻った.あとエアクリーナボックスを取り付けると,作業は完了となる. なお,インジェクターを取り付ける前に,サージタンクやインテークマニホールド内にエンジンコンディショナーを吹き込んでおいたので, EFIヒューズを抜いて10秒ほどクランキングし,片づけ作業中,そのまま放置しておいた.

・交換後の結果

片づけ終了後,いよいよちゃんとエンジンをかけてみる.キーを回してみると・・・なかなか回り出さない. これはインジェクターを取り外したため,フューエルデリバリーパイプ内に燃料が入っていなかったからと思われ, 数秒してインジェクターに燃料が回るとエンジンが回り出した.でも,ちょっと変・・? どうも振動が大きいような気がする.とりあえず走ってみると,走るのは走るが,おかしな振動がある. 停車時,ギヤをニュートラルにすると,エンジンが脈動する.アイドリング時の負圧を見ると,-330mmHgほどしかない. これは,どこかのバキュームホースの差し込み忘れで,エアを吸ってしまってるな,と思い, エンジンルームを探ってみると,たしかにECUのバキュームセンサーのホースがはずれていた. それを戻すとエンジン回転も落ち着いた.しかし,振動は前と変わらずだな・・・. インジェクターのカプラーを抜いてみても,1番と4番は抜いても回転状態が変わらず,2番と6番だと著明な不調になる (3番と5番は手が入りにくかったため試していない).1番と4番が具合悪い,ということは, これはECUの同じ端子から出てくるはずなので,ECU側の問題なのだろうか. 一度,他の車から外してきたECUに交換してみる必要がありそうだ.(作業日:2002年1月20日)

最終更新日:2003年2月16日

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