・概要
X80系でもツインターボ搭載車は,標準でフロントストラットタワーバーが装着されている.
通常の社外品タワーバーと違うのは,「く」の字形をしていて,中央部がバルクヘッドにも固定されていることである.
・準備品
まずタワーバー本体
の他に,最低限,バルクヘッドに取り付けるためのブラケットとボルト3本が必要である.
また,ブラケットを取り付けた時に,そのままだとブレーキブースターに向かうバキュームチューブとブラケットが干渉してしまう.
このため,GT用のバキュームチューブは,ブラケットの部分が曲げてある.
いちばん上が1G-GTE車用,まん中が1JZ-GE車用,下が1JZ-GTE車用である.
実際に取り付けると,下の写真のようにブラケットをうまく避けていることがわかる.
1JZ-GE車の場合,1G-GT用,1JZ-GT用のどちらを使っても取り付けられるが,ホースの引き回しの関係で,
1G-GT車用の方が自然な感じでつく,ということだったので1G-GT車用を使用することにした.
ただし,1G-GT車用の場合は,ブレーキブースタ側にチェックバルブが必要なので,新品だと少し高くなってしまう.
あと,バキュームチューブを交換するついでに,ホースも新品にすることにした.これは1JZ-GE車用のままで問題ない.
さて,このブラケットがつく部分のカウルトップが,そのままでも取り付けはできるのだが,実はGTと非GTで違いがある.
上の写真で,上がGT用,下がGrande用であるが,ボルト穴の大きさが違っている.
この写真のように,ブラケットの裏側のボルト穴周囲が丸く盛り上がっているのだが,GT用のカウルトップは,
この丸い盛り上がりと同じ大きさの穴があいているのである.このため,ブラケットはバルクヘッドと密着することになる.
これが非GT用のままだと,ブラケットは樹脂部分をはさんでバルクヘッドに付くことになるので,
若干,取り付け剛性が下がってしまう.よって,タワーバーの効果を完全に引き出したい場合は,
このカウルトップも交換する必要がある.
今回の交換部品
品名 | 品番 | 個数 | 価格
| タワーバー本体 | 53607-22010 | 1 | ---
| ブラケット | 53692-22010 | 1 | ---
| ボルト | 90119-10476 | 3 | ¥80
| カウルトップベンチレータルーバセンタ | 55783-22100 | 1 | ¥460
| バキュームチューブ(1G-GT用) | 44763-22130 | 1 | ¥1,790
| チェックバルブ(1G-GT用) | 44730-22120 | 1 | ¥1,260
| バキュームホース | 44772-22210 | 1 | ¥660
| バキュームホース | 44774-22160 | 1 | ¥870
| バキュームホース・クリップ | 90467-16002 | 4 | ¥100
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・作業の実際
(1)下準備
最初に,もともとのブレーキチューブを取り外す.ホースを交換する場合は,ホースも外してしまう.
チューブ両端のホース(▲)を抜いて,チューブを固定しているボルト
(▲)を外すと,チューブが外れる.
次に,カウルトップベンチレータルーバセンタの,ブラケット取り付けボルトを塞いでいるクリップを取り外す.
左下写真のように,クリップの中央部を押し込んでしまうと,全体を引き抜くことができる.
そうすると,下の写真のようにネジ穴が出現する.
このネジ穴に,タワーバーのブラケットをボルトで固定するわけである.
最初に書いたように,GTと同じ取り付け状態にするためには,このカウルトップセンタを交換する必要があるわけだが,
このままでもブラケットを取り付けることは可能であるので,その場合は (3)ブラケット取り付け に進む.
(2)カウルトップベンチレータルーバセンタ交換
まず,上面のゴム(ボンネット ツウ カウルトップ シール)を取り外す.
上の写真のように,ゴムをめくってT字形のクリップから離してやる.これは,中央部から助手席側の端まで全部,取り外す.
次に,残っているクリップも取り外す.クリップの一部はボディに直接,留まっているため,
クリップを抜いてやらないとカウルトップが外れない.クリップは,根元の部分をはさんで狭めてやれば抜けるようになっている.
専用の工具もあるが,なければマイナスドライバー2本を両側から差し込んで握ることで抜くこともできる.
さらに,助手席側のワイパーアームを取り外す.
上の写真▼のナットを緩め,ワイパーアームを取り外す.
次に○のビスを緩め,その根元にあるクリップも抜き取る
(車齢10年ともなるとプラスチックが硬化していて,かなり手間取る可能性が高い).
さらに外側のビスも抜いておく(下の写真○).
これにより,助手席側のカウルトップが動かせるようになる.そうすると,カウルトップセンタを固定しているクリップが見えるので
(下の写真○),中央部のネジを緩め(強く押さえつけると緩まないので,軽く回すようにする),
クリップを抜き取るとカウルトップセンタを取り外すことができる.
あとは,用意してあるGT用のカウルトップセンタと交換して,これまでと逆の手順により取り付ければよい.
なお,カウルトップ上面のゴムシールの取り付け時には,最初にクリップをゴムシールにはめておいてから取り付けること.
こうして,取り付けが完了した状態が次の写真である.
(3)ブラケット取り付け
ブラケットは,用意したボルト2本で締め付けるだけである.
(4)ブレーキチューブ取り付け
ブレーキチューブは2本のボルトで固定されているが,ボディの歪みなどを考慮して,
助手席側(向かって右)のボルト穴が長円形になっており,少々のズレがあってもきちんと取り付けられるようになっている.
このため,固定する時はまず運転席側(向かって左側)のボルトから締めるようにする.
1G-GT用のチューブを使用する時は,チューブを車体に固定したあと,チェックバルブを取り付ける.
これには24mmのスパナかモンキーレンチが必要である.
運転席側
助手席側
(5)タワーバー取り付け
最初に,ストラット上部にあるTEMSのカバーを取り外す.これは3カ所のナットを緩めるだけだが,
初めてだと少し固着しているかもしれない.カバーをこじ開けると,下の写真のようになっている.
次に,その下のナット3カ所のうち内側の2個(上の写真○)を取り外す.
サスペンションを支えるナットなので,かなり固く締まっている.
これでタワーバーが取り付けられるはず・・・と思いきや,このまま取り付けようとすると,
アクセルワイヤーを支えているクランプに当たってしまう(下の写真▼).
このクランプは,ブレーキマスターシリンダーをバネで挟み込んでいるだけなので,引っ張れば簡単に取り外せる.
これでタワーバーを取り付けできるようになるが,そうすると今度は,アクセルワイヤーとタワーバーが接触してしまう
(下の写真↓).
このようにアクセルワイヤーとタワーバーが接触したままだと,エンジンやボディの振動がアクセルワイヤーを伝わってキャビン内に入り,
アクセルペダルが振動するのが足で感じられたり,音として聞き取れたりするようになる.
これを防ぐには,アクセルワイヤーがタワーバーと接触する位置に,ウレタンシートを巻いて振動が伝わらないようにしておいた.
写真では2本まとめて(注:2本あるのは,1本はスロットルボディへのケーブル,もう1本がオートドライブのケーブルであり,
オートドライブ非装着車では1本しかない)巻いてしまっているが,1本ずつ巻くほうが効果的なようである.
また,巻く位置ももう少しアクセルペダル寄りの位置がよい(どちらかというとタワーバーの外側よりの位置に当たるので).
この処理が終われば,いよいよタワーバーの固定である.固定時の注意としては,できるだけストレスなく自然な位置で固定する,
ということがあげられる.タワーバーのネジ穴には若干の遊びがあるので,取り付け時に2〜3mm程度なら動かせるのだが,
タワーバーに力をかけた状態でボルトを締めると,タワーバーは元の形に戻ろうとするので,
ボディに常にひずみの力がかかることになり,あまりよくないように思う(といっても,体感できる違いはないかもしれないが).
というわけで,まずボルトに通しただけの状態で位置決めし,最初に中央のボルトを締め,
それから左右のナットを締めるようにするとよいだろう.
タワーバーのナットは,サスペンションのアッパーサポートを固定するためのものでもあるから,しっかり締めること.
それが締まれば,次はTEMSのカバーを取り付ける.カバーの裏にパッキンがあるので,ちゃんとストラットタワーの穴におさめること.
なお,タワーバーの位置によっては,TEMSのカバーがタワーバーと干渉することがある(しないこともある).
上の写真(↓)のところで,タワーバーとカバーが当たっている.
側面から見たものが,下の左側の写真である.なお,これは左側(助手席側)だが,右側(運転席側)は大丈夫だった.
対策としては,カバーの干渉する部分をペンチで曲げてやるとよい(下の写真右).カバーは薄い金属板なので簡単に曲がる.
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側面から見ると,▲のところでタワーバーとカバーが干渉しており,
このためカバーが奥までちゃんとはまらない(ボルトのネジ山(▲)に注目).
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| カバーの干渉する部分を曲げたところ(上写真▲).
今回はボルトのネジ山の奥まで入っている(▲).
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カバーがはまれば,あとはナットを締めつけるだけである.カバーは単なるダストカバーであるから,
あまり強く締める必要はない.ナットが薄いので,強く締めつけすぎるとネジ山をなめる可能性がある.
以上で,タワーバー取り付け作業はすべて完成となる.
・交換後の結果
今回のタワーバーは2.5GTから取ってきた物だが,どうも事故車だったようで,表面はわりあい綺麗なのだが,
裏面がずいぶん凸凹になってしまっている.そのせいか,取り付けてみてもあまり車の挙動の変化は感じないのであるが・・・.
単に私が鈍いだけだろうか? 次は,もうちょっと程度のいい物を探してこようと思っている.
(作業日:2003年1月18日,2003年2月23日)
・番外編
ブレーキのバキュームホースであるが,使用済みホースと新品を比較したのが下の写真である.
上が新品,下が使用済みであるが,断面を見てもそれほどホースは劣化していないようである.
しかし,新品はゴムの中にワイヤーが入っているようで,より強度が増しているように見える.
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