・概略
これは,エンジンの吸気圧(スロットルバルブを通った後の圧力.通常,サージタンクの圧力を言う)
を表示するためのもので,ターボ車の場合,ブースト計の増設はわりあいメジャーな改造である.
一方,筆者の車のようなNAエンジン車についても,スロットル全閉時の真空度はエンジンの状態をよく反映するため,
取り付けてみたいと思っていた.ただ,ブースト計はたくさん売られているのだが,真空計はなかなか売っていない.
取り付け自体はエンジンルーム内の後ろ寄りで助手席のすぐ前にエンジンコントロール用のバキュームセンサーがあるため,
そこからチューブを分岐させて圧力を測定し,電線をメータまで引けばよいはずである.なおメータであるが,
大津のロードスターに,アナログ式の真空計と,Defi BOOST V.S.D.の両方があるのを見つけた.どっちにしようかな?
値段的には,アナログメータは¥7500くらい,BOOST V.S.D.は定価¥25000だが実売は¥19800くらいだろうか.
配線については,アナログメータだとバキュームチューブを室内に引き込まないといけないかも?
V.S.D.はエンジンルームにバキュームセンサーを設置し,そこから信号線を引き込んでくる形になるだろう.
V.S.D.では電源やイルミネーションの信号線も必要だが,これは室内で簡単に見つかるから問題ない.やっぱりV.S.D.かな・・・.
そう思いつつ,なかなか購入に踏み切れずにいたのだが,ある日,八幡の近くのオートバックスで,
BOOST V.S.D.が¥16200で売っているのを見つけた.展示品だったが,展示といっても箱から出してケース内に並べてあっただけで,
実際には未使用品である.しばらく悩んでいたが,金銭的にちょっと余裕ができたので,購入を決意した.
・取り付け
この作業で難しいのは,エンジンルーム内にセンサー部分を設置して,そこからコードを室内に引き込んでくるところである.
まずエンジンルーム内でセンサー部分を取り付けるわけだが,説明書を見ると,
フューエルプレッシャーレギュレータの配管から分岐させることが推奨されている.
しかし1JZ-GEの場合は,プレッシャーレギュレータはバルクヘッドと反対側にあって室内から遠くなることと,
もともとD-ジェトロで,バルクヘッドにECU用のバキュームセンサーが存在することから,
このECU用のバキュームセンサーの配管から分岐させてくる方が,ECUの動作を知る上でも有用と思われ,
また,このバキュームセンサーへの配管はエアフィルターを通っていて,センサーのメンテナンスの点でも有利と思われたので,
ここから分岐することにした.分岐は,極力,サージタンク側で,ということで,
エアフィルターの出口に密着するような形で真空計に付属していた分岐コネクターを取り付け,バキュームセンサーのホースを接続する.
次に真空計側のセンサーを接続するのだが,その前にセンサーを固定する場所を決めないといけない.
バルクヘッドの付近を観察していると,取り付けできそうな金具が見つかった.ただ,固定するのに,
ビスとナットを使うとしっかり固定できるのだが,センサー側の取り付け穴がせいぜい4mmくらいまでのビスしか通らなさそうである.
手元にあるボルトは6mmと8mmしかなく,しかも真空計に付属しているビスはタッピングのみなので,今回の取り付けには適さない.
まぁ,センサー自体は軽いものなので,今回はタイラップでくくりつけておくだけにして,後日,
ビスで固定し直すことにした.仮固定後,ホースを接続しておく.ホースも,今回は真空計に付属していた黒いホースを使用している.
▼:純正バキュームセンサー
○:VSDのバキュームセンサー
○:バキューム配管の分岐部
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次は,おそらく最大の難関になりそうな,車内へのコードの引き通し作業である.引き通しには,
カーナビ取り付け時にも使用した,クラッチペダル取り付け用の穴を使用する.穴を塞いでいるゴム栓を抜かないといけないのだが,
これがなかなか抜けない.金属製の内装リムーバを用いながらしばらく格闘して,なんとかゴム栓が抜けた.
続いてゴム栓にセンサーのコードを通す穴をあけないといけないのだが,ゴム栓の中に,
すでにカーナビ用の電源ケーブルが通っているので,あまり移動することができず,ほとんどその位置で作業しないといけない.
細いマイナスドライバーでゴムを削って,コードが通るくらいの穴をあけた.ここにコードを通すわけだが,
その前にコードのエンジンルーム内を通る部分に保護用の蛇腹を被せておく.で,ゴム栓を戻すのだが,
これも中にコードが通っているので,なかなかはまらない.内装リムーバの先などを使って少しずつ押し込んでいき,
最終的には全周,元の場所にはめ込むことができた.
クラッチペダルの穴に配線を通したところ.
そうすると,次は室内の作業になる.まずスイッチ部を設置するわけだが,これはすでにあるHUDスピードメータのスイッチ部に並べて設置する.
取り付け自体は両面テープで貼り付けるだけである.で,くっついたらセンサーのコネクタを差し込んでおく.
その次は,表示部の設置である.これもすでにあるHUDスピードメータの表示部に並べて取り付ける.
取り外し・移動が可能なようにマジックテープを貼って,そこにくっつける形である.
あとはコードをインパネの右横を通し,下側はインパネのアンダーカバーを外してその中に通るようにして,
運転席足元左側まで引っ張ってくる.そして長さが合っているか確認して,スイッチ部のコネクタに接続した.
本来なら,あと電源を接続しないといけないのだが,今日は時間的にそこまでする余裕がないので,
今日のところはここで中断することにした.
(作業日:2001年12月24日)
ユニットを設置.上がV.S.D.II,下がBoostV.S.D.
数日後に,電源の配線を行うことにした.この近くでIGNラインの取れるものとして,リモコンエンジンスタータのハーネスがある.
これなら車体側ハーネスには損傷を与えることなく配線できるので,好都合である.この作業のついでに,
リモコンエンジンスタータのエアコン作動アダプタの設置作業も併せて行った(別項).
配線は,V.S.D.IIの時と同じように,エンジンスタータ用ハーネスの電線の被覆を剥いてV.S.D.の配線を巻きつけ,
ハーネステープで締め上げるようにした.分岐の部分には,腐食防止のためシリコンシーラントを流し込んでいる.
マイナス側は,エンジンスタータのアースポイントと同じ場所に配線した.ここまでで,まず作動チェックを行う.
リモコンエンジンスタータを使ってエンジンをかけると・・・うん,ちゃんと光った.ほぼまともな数字が出ているようだ.
電源はOKだったので,最後にイルミの配線を行うことにした.運転席側インパネ下部を探ってみたが・・・
適当なイルミの線が見当たらない.オーディオの裏には間違いなくイルミの配線があるのだが,今回はそこまで開ける余裕がないので,
なんとかこの付近で見つけないといけない.いろいろ考えて,最後にTEMSスイッチのイルミを使うことにした.
テスターを使ってイルミの配線を探し出し,保護チューブを剥いて長めに電線を引き出し切断.
両側の被覆を剥き,V.S.D.側のイルミ線と一緒に巻きつけ,熱収縮チューブでくっつけた.
ちょっと頼りなさげだったが,テストしてみると,スモールランプ点灯でちゃんと減光しており,動作は問題なさそうだ.
で,あとインパネのパネルを戻して,取り付け作業は完了となった.
(作業日:2001年12月27日)
・初期設定
まず設定するのは,エンジンの種別である.ターボ車とNA車とでフルスケールが違うので,
正しくガソリンNA車に設定してやる.次にワーニングの設定である.はっきりいってNA車ではワーニングを表示する意味はないのであるが,
せっかくあるので設定しておこう.ここでは注意が-100mmHg,警告が-50mmHgに設定してみた.
あと数字の表示がピークホールドかリアルタイムかが選べるが,NA車ではピークホールドにする意味がないので,
リアルタイムにしておく.これで設定は終わりである.またV.S.D.IIのときと同じく,コンバイナフィルムは使用していない.
・使用した感想
表示の見やすさは,まぁまぁであろうか.隣のV.S.D.IIと比べると,少し暗いかな?
昼間はあまり気にならないが,減光時はかなり暗くなるので,夕方の薄明時にはほとんど表示が見えなくなってしまう.
狭い山道で昼間も点灯して走ることもあるから,デジタルメータの最高輝度ロックに連動して明るくなるように回路を考えよう.
数字は,やはりV.S.D.IIに比べると少し小さめである.もう少し大きいと見やすいだろう.
数値であるが,アイドリング時は-430mmHgくらいなのだが,整備書の基準値は-500mmHg以上.やっぱりエンジンの調子が悪いのだろうか.
1500rpmくらいに回すと-500mmHg程度に上がる.走行中は-200〜-300mmHgくらい,エンジンブレーキをかけると-500mmHg以上,
最高で-620mmHgくらいになる.高速からの加速時は,しばしば-20〜0mmHgになって,エンジンに余力がないことを教えてくれる.
もちろん,この状態では,いくらアクセルを踏んでもそれ以上には加速しないので,シフトダウンする必要がある.
そういうことが目に見える数値でわかるので,タコメータと同じく,なくても走ること自体に支障はないのであるが,
あると,より車の状態を考えた運転ができるようになるので,これはお勧めである.
なお,後日,シリンダーヘッド載せ替えを行ったところ,
暖機後のアイドリング中の負圧が-490〜-520mmHgと,ほぼ正常範囲内になった.
あとワーニング機能なのだが,どうも注意のレベルになったところで,黄色と赤のLEDが両方,点灯してしまう.
本来は注意レベルで黄色のみ,警告レベルで黄色と赤の両方が点灯するはずなのだが・・・.
試しに注意と警告のレベルを逆(注意を-20mmHg,警告を-100mmHg)にしてみたところ,
-100mmHgで赤のみ点灯,-20mmHgで黄色と赤の両方が点灯になった.こんなものなのだろうか.
まぁ,気になるなら,赤と黄色のLEDを入れ替えるという技もある.
・より使いやすく
BOOST V.S.D.はイルミ連動で表示を減光するようになっている.しかし昼間でも,
山間部の細い道を走るときや濃い霧が出ている時など,ライトを点灯する必要のある状況も考えられる.
純正デジタルメーターもイルミに連動して暗くなるのだが,上のような状況を想定してか,
レオスタットのつまみを最も右側まで回すことで,イルミを点灯しても暗くならないようにすることができる.
BOOST V.S.D.でも,これに連動して暗くしないようにすることができないだろうか,考えてみた.
修理書と新型車解説書のレオスタット周りの配線図をじっと見ていると・・・もしかして?
イルミの配線は,レオスタットには入っているけれど,デジパネ本体には入っておらず,
レオスタットからデジパネには2本の線が出ているだけである.新型車解説書によると,
一方の線は単なるスイッチを経由しているだけらしいのだが.修理書の各端子の点検基準と照らし合わせてみたところ,
どうやらイルミの配線はレオスタット内部のスイッチを経由してデジパネに入っており,
これは単なるスイッチであって特別な回路はついていないようだ,ということがわかった.
すなわちデジパネはイルミ点灯の電圧によりデジパネの明るさを変えており,レオスタットの減光キャンセル機能というのは,
そのスイッチを切ることでデジパネにイルミの電圧が行かないようにしているだけだ,ということである.
そうすると,BOOST V.S.D.で減光キャンセル機能を有効にするためには,現在,イルミにつながっている線を,
レオスタットから出てきたイルミの配線につなぎかえるだけでいい,ということになる.
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