「のぞみの日記・夏休み」

第2回



引越しが済んで1週間が過ぎ、荷物の整理も終わってやっと落ち着いてきました。
学校から帰って来ると、お店の方に鏡が4面とオレンジ色の綺麗な椅子が4つ置い
てありました。一番奥の壁にも鏡が1面付いていて、引き出し式のシャンプー台と
椅子があります。他にも移動式のシャンプーユニットというのもありました。
ママが床ユニットに接続、離脱の練習をしています。の〜のも面白そうなので見て
いました。
「ママ〜、椅子に座ったままでシャンプー出来るん?」の〜のが聞くとママは嬉し
そうに説明してくれました。これからいろんな物が運ばれてくるそうです。お家を
建ててママがお店を開く事が決まった時、京都の岡島のお姉ちゃんの旦那さんが理
容機器のメーカーに勤めているので、安く買えるとママに話していたのを覚えてい
ます。ハサミは有希モデルを出した堺の方のメーカーが提供してくれるそうです。
シャンプーやトリートメント等の小物は、大阪のお店のマスターが取引している業
者さんが納めてくれるそうです。

お店のドアはガラス張りで『カットハウス・サロン・ド・ユキ』と、お店の名前が
書いてあります。右の壁側にはお客さん用のソファーとテーブルがあり、奥の方に
トイレとロッカー室があります。表の通りに面した大きなガラス窓にはロールカー
テンがついています。天井の照明と壁の上の方には間接照明が点いていて明るい感
じがします。
パパとママの話では、6月3日の日曜日と4日の月曜日に大勢呼んで開店祝いをす
るそうです。翌日の6月5日の火曜日から開店だと言っていました。ママは6月5
日という日を凄く喜んでいたけど、の〜のには何故だか理由が分かりません。翌日
から毎日のように道具が増えてきました。
「ママ〜、これはな〜に?」の〜のは今まで見た事もない物を見て聞いてみました。
これはパーマ用の機器で遠赤外線プロセッサーだと教えてくれたけどの〜のにはよ
く分かりませんでした。他にもアイロン用の機器、ワゴンやドライヤー、いろんな
小物にお姉ちゃんたちが着替えるロッカー、ユニフォームも出来てきました。5月
の終りには全ての道具が揃い、市の保健所からの検査も無事に終わってあとは開店
を待つだけです。

「お兄ちゃん、ありがとう。かんぱ〜い」ママが嬉しそうにパパとグラスを合わせ
ています。
「ママ〜、おめでとう」の〜のと翔もジュースのグラスを合わせ、おばあちゃんも
少しだけビールの入ったグラスを合わせるとママは本当に嬉しそうです。嬉し過ぎ
たのか少し涙ぐんでいました。6月2日の土曜日で今日は家族だけで開店の前祝い
です。の〜のは繭子や繭パパ、繭ママ達も一緒にお祝いするのかと思っていたけど、
明日の日曜日にみんなを呼んでお祝いをして、月曜日にも大阪のお店のマスターや
麻衣姉ちゃん、美咲姉ちゃんや美香姉ちゃん達を呼ぶから、今日は家族だけでのお
祝いだよってパパが言いました。
テーブルには大っきな尾頭付きの鯛が乗っています。ママは嬉しそうにお魚を食べ
ています。の〜のと翔もパパが骨を除けてくれたお魚を食べました。今日はお祝い
だからママの大好きな赤飯も炊いていました。

「有希、いよいよやな。けどあんまり無理するなよ」パパがママのグラスにビール
を注ぎながら笑うと、ママは嬉しそうな顔で頷き、パパをおばあちゃんを、の〜の
と翔を見つめて美味しそうにビールを飲んでいます。
「ママ〜、ゆっくりでいいから頑張ってね」の〜のがママにビールを注ぐと、ママ
は嬉しそうな顔でありがとうと笑っています。翔も真似をしてママにビールを注い
でいます。
「希、翔、ママがお店を始めたら一緒にご飯を食べる機会が減るけど我慢してな。
香織と奈央には話して時間を作るようにするけど、食べられない時はパパとおばあ
ちゃんと食べてな」ママはの〜のと翔を見つめて申し訳なさそうな顔をしました。
「ママ〜、大丈夫だよ。パパとおばあちゃんが居るし、ママもお家のお店に居るん
やもん。寂しくないよ。なぁ翔」の〜のがママに言って翔を見ると、翔もパパ、お
ばあちゃんを見て頷くとママにビールをついでいます。
「ありがとう、翔」ママが優しく言って翔をひざに抱くと、翔は嬉しそうな顔をし
ました。

「ねぇママ〜。典子姉ちゃんもおめでとうって言ってくれと良いね。最近逢いに来
てくれないけどまた来てくれるよね」
「うん、典子姉ちゃんはきっと来てくれるよ。希がお姉ちゃんと約束して良い子で
いるから、翔も希の真似をして良い子にしてるやん。お姉ちゃんは希に逢いにきっ
と来てくれるよ。ママにもおめでとうって言いにきっと来てくれるからね」ママは
の〜のを見つめて優しく言いました。パパとおばあちゃんも頷いています。
「パパ〜、お風呂〜」ご飯の後パパの手を引っ張ると、翔も笑ってパパの手を引っ
張っています。パパが笑いながら立ち上がるとママとおばあちゃんも笑っていまし
た。新しいお家のお風呂は前のお家のお風呂より大っきくて、パパや翔と一緒に入
ってもゆっくり入れます。の〜のがパパの背中を洗い、翔がの〜のの背中を洗うと
こうた〜いと言ってパパがの〜のの背中を洗い、の〜のが翔の背中を洗うと、翔は
何時も嬉しそうに笑います。
「希、翔、ママがお店で働くようになったら、時々ママと一緒に入って洗いっこす
るんやで。ママも希や翔と入ったら喜ぶからな」パパが2人にシャワーをかけなが
ら言うと
「うん、翔はママと入って洗ってあげるよ」と嬉しそうな顔をしています。

          *

翌日、繭ママや香織姉ちゃん、奈央姉ちゃんが早くから来て忙しそうに動き回って
います。ママとおばあちゃん、桂子おばちゃんも忙しそうです。の〜のは繭子や翔、
菜々美と一緒に邪魔にならないように見ていました。パパと繭パパも忙しそうです。
「真弓姉ちゃん、弘美姉ちゃん」の〜のは2人を見つけると走り寄って抱きつきま
した。
「の〜の、おめでとう。いよいよママのお店が開店やな。翔ちゃんと一緒にママを
手伝って良い子で居るんやで」弘美姉ちゃんはの〜のを抱きしめると優しく言いま
した。
「うん、の〜のは良い子で居るよ。翔も良い子で居るって言ってたよ。なぁ翔」の
〜のが翔を見ると真弓姉ちゃんに抱かれて嬉しそうに笑っています。
「啓一さん、有希ちゃん、おめでとう」2人がパパとママに声を掛けると、パパと
ママはありがとうございますと言いながら嬉しそうな顔をしています。
京都の由香里姉ちゃんとお姉ちゃん。喫茶店の祐子姉ちゃん、岡島のお姉ちゃんと
旦那さん、深雪姉ちゃんに広島の玲華姉ちゃんも来てくれています。カメラマンの
広瀬さん、テレビ局の宮下さんもカメラを持った人達と来ています。久保田のお兄
ちゃんや島田のお兄ちゃん、広岡のおじさんも来てくれています。

尚美姉ちゃんと加藤のお姉ちゃんも来ています。お店の前には沢山のお花が並べら
れています。こんなに沢山のお花を見たのは初めてです。お花には名前が書いてあ
り、ママが説明してくれました。写真集を出した出版社、ママが卒業した理容学校、
の〜のがモデルをしている子供服の会社やハサミの会社、テレビのコマーシャルを
したお茶の会社、他にも沢山のお花が並んでいます。お花の他にも祝電というもの
も沢山来ています。祝電って何 ? とママに聞いたら、遠くの人やお仕事が忙しく
て来られない人が、お祝いにくれたお手紙の一種だよって話してくれました。でも、
の〜のにはよく分かりません。11時にお店の前にテープが張られ、パパとママ、
の〜のと翔がテープカットをするとみんなから拍手が沸きました。宮下さんのテレ
ビ局のカメラが回ってママにインタビューをしています。ママはお店の中を案内し
ながら説明しています。ママがお店を開く事は宮下さんのテレビ局のニュースで流
れていたから、大勢の人が見物に来てお店の前は人でいっぱいです。久保田のお兄
ちゃんと島田のお兄ちゃんが汗だくで整理をしていました。

夕方にはみんなが帰り、繭子の家族と桂子おばちゃん、香織姉ちゃんに奈央姉ちゃ
ん、尚美姉ちゃん、深雪姉ちゃんとの〜のの家族が2階のリビングに集まりました。
「有希ちゃん、いよいよやね。おめでとう」尚美姉ちゃんがグラスを合わせるとみ
んながおめでとうとグラスを合わせました。の〜のと翔、繭子もジュースでおめで
とうと言ってグラスを合わせました。ママはみんなを見ながらありがとうと本当に
嬉しそうな顔をしています。
「有希、とうとうお店を持ったんやな。おめでとう」香織姉ちゃんがママの手を握
ると、奈央姉ちゃんも涙を浮かべておめでとうとママの手を握っています。
「奈央、奈央はほんまに泣き虫なんやからぁ」と笑いながら、ママも奈央姉ちゃん
の手をしっかり握りしめました。の〜のがパパの足の間に座ると、翔がの〜のの足
の間に座って嬉しそうに笑っています。菜々美は繭ママに抱かれて眠っています。
「明日は藤岡サロンのみんなが来てくれるけど、人数は少ないから下で間に合うね。
今日はお母さんに智姉ちゃん、浩史ちゃん、桂子おばちゃんには朝から忙しく手伝
ってもらってありがとうございました。香織に奈央、深雪もありがとう」ママがみ
んなに頭を下げると
「何言うてんの。あの日から今日まで啓ちゃんと頑張って来たからやない。それに
こういう忙しさやったら疲れなんて感じへんわ。まだまだ若い人には負けへんわよ」
桂子おばちゃんが笑うとおばあちゃんも一緒に笑っています。

          *

「ただいま〜」月曜日にの〜のが学校から帰って来ると
「の〜の、お帰り〜」と麻衣姉ちゃんが出迎えてくれました。
「麻衣姉ちゃん、こんにちは〜」の〜のが嬉しそうに抱きつくと、美咲姉ちゃんや
美沙姉ちゃんがお帰り〜と笑っています。ママの姿が見えなかったのでママは〜と
聞くと
「お店の方だよ。マスターや美香ちゃんを案内してるわ」と麻衣姉ちゃんが笑いな
がら言いました。
「お姉ちゃん、お帰り〜」翔がロッカールームの方から出てきました。お店からロ
ッカールームを抜けてリビングに入れるようになっていて、みんなはここで休憩す
るんだとママが言っていました。おばあちゃんもお帰りと言ってジュースの用意を
しています。の〜のがランドセルを置いて降りるとマスターと美香姉ちゃん、香織
姉ちゃん、奈央姉ちゃんも戻っていました。
「の〜の、おめでとう。明日からママはお店で大変やけど、パパや翔ちゃんと一緒
にママを助けてやるんやで」マスターはの〜のを抱きしめて優しく笑いかけました。
「うん、翔とね、一緒に頑張るってパパにも約束したよ。なぁ翔」と翔に振り向く
と翔も嬉しそうに頷き、おばあちゃんの出してくれたケーキとジュースを見て笑っ
ています。

「パパ〜、お帰り〜」夕方パパが帰って来ました。の〜のが玄関に迎えて抱きつく
と、希、ただいま〜と笑いながら抱いてくれます。の〜のは小っちゃい時からパパ
に抱かれるのが好きで何時も抱きついています。パパは希も大きくなったから抱く
のも重たいなぁと笑っています。翔もパパ〜と玄関まで出て来てパパと手を繋いで
います。
「お兄ちゃん、お帰り。今日は藤岡サロンのみんなが来てくれやってん。マスター
も良い店やって喜んでくれやったわ」ママは嬉しそうに言いながらお茶を出すと、
の〜のと翔もパパと一緒にお茶を飲みました。
晩御飯を食べながらパパとママの話を聞いていました。ママのお店は朝の9時から
夜の8時までだけど、香織姉ちゃんと奈央姉ちゃんの提案で、よほど混んでいない
限り、ママは7時くらいに終わって家族でご飯を食べるようにと言ってくれたそう
です。お店の休みは月曜日だけど、毎月第2と第3は日曜と月曜の連休にするそう
です。ご飯の後、リビングのソファーに座ってテレビを見ていると、ママがお茶を
持って来ました。

「ママ〜、もう終わったん?」後片付けがあんまり早かったので驚いて聞きました。
「システムキッチンで全自動食器洗い乾燥機も付いているから直ぐだよ」と、ママ
はパパの横に座って嬉しそうに笑っています。リビングには3人掛けのソファーが
2つあり、楕円形のテーブルもあります。このソファーとテーブルは新しく買った
ものです。おばあちゃんも座ると、翔はおばあちゃんに抱かれて嬉しそうな顔をし
ています。壁の時計を見ると8時半になっていました。
「翔、お風呂に入ろうか」の〜のが声を掛けるとニコニコしながらママ〜とママの
手を引っ張っています。ママがパパを見るとパパは笑いながら頷きました。
「じゃあ一緒に入ろうか」ママが頷くと翔は嬉しそうな顔で風呂場へ走って行きま
した。の〜のと翔がママの背中を洗うとママは嬉しそうな顔をしています。
こうた〜いと言ってママがの〜のの背中を洗い、の〜のが翔の背中を洗うと、翔は
嬉しそうに声を出して笑っています。



        
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