「のぞみの日記・夏休み」

第4回



夏休みに入って直ぐの第3日曜日、ママのお店はお休みです。パパとママ、翔、尚
美姉ちゃんと一緒に村瀬さんのスタジオに行きました。秋物の広告用と冬物のカタ
ログ用の撮影です。幼稚園の頃から始めた子供服のファッションモデルも、今は何
種類かのメーカーのモデルをしているけど、最初に始めた「キャットハウス」の洋
服が一番好きです。撮影の後マスターのお店に寄りました。
「こんにちは〜」の〜のがドアを開けると、マスターや麻衣姉ちゃん、美香姉ちゃ
んや美咲姉ちゃんが笑顔で迎えてくれました。
「の〜の、久しぶりやなぁ」ママが2日前に撮影の後に寄るからと言っていたらし
く大勢の人が来ていました。の〜のが弘美姉ちゃんの横に座ると肩を抱いてくれま
した。

「今、夏休みやろ。よう焼けたなぁ。相変わらずプールで遊んでるんか?」弘美姉
ちゃんが笑いながら聞くと
「あのね、翔も一緒にプールで遊ぶんだよ」と翔も嬉しそうに笑っています。ママ
はマスターや麻衣姉ちゃんたちと笑いながらお話をしています。
「の〜の、久しぶりにケーキを食べに行こうか」麻衣姉ちゃんが声を掛けると翔も
嬉しそうな顔をしました。ママはマスターたちとお話をしているからと言って、パ
パと一緒に下のお店に行くと
「の〜の、翔ちゃん、久しぶりやね〜。お兄さん、久しぶりです」祐子姉ちゃんが
嬉しそうな顔で迎えてくれました。ママも嬉しそうな顔をしていました。

「祐子ね〜ね、ケーキ」の〜のと翔がせ〜ので声を合わせると
「いや〜、祐子ね〜ねって久しぶりに聞くわ。いつものイチゴのケーキやね」祐子
姉ちゃんは嬉しそうに言って奥へ行くと、パパと麻衣姉ちゃんが笑っていました。
「啓一さん、お店の方流行ってるらしいね。家を建てて有希ちゃんのお店を開いて、
大変やったやろ。の〜のと翔ちゃんもパパとママを助けて良い子で居るし、有希ち
ゃんもすごく喜んでいたよ」ママが横に座ってパパに話しかけました。
「何時かは店を持たせてやれたらって思っていたけど、有希が頑張ったお陰で思っ
たより早く持つ事が出来ました。みんな有希の力ですよ」パパも嬉しそうな顔でマ
マとお話しをしています。

「ううん、有希ちゃんね、ウチが頑張れるのはお兄ちゃんのお陰だって何時も言っ
てたんよ。お兄ちゃんがウチを大事にしてくれるし、子供たちも可愛がってくれる
から頑張れるんだってね。ただ、体だけは気をつけてね。前みたいなことにならな
いようにね」ママが笑いながら話すと、パパは有難うございますと言いながらの〜
のと翔を優しく見つめました。
「はい、お待たせ〜」祐子姉ちゃんがイチゴのケーキとジュース、アイスコーヒー
を持って来ると、の〜のと翔は顔を見合わせてケーキを食べました。

          *

7月終わりの月曜日。昨日の日曜日は海水浴に行きました。ママはお店が有るので
パパと翔、繭パパ、繭ママ、繭子と菜々美で日帰りだったけど凄く楽しかったよ。
翔と菜々美も幼稚園のプールで泳げるようになっていたから、2人とも楽しそうに
泳いでいました。若狭湾の海はお水がきれいなのでの〜のは大好きです。
朝のお勉強が終わって下に降りると繭ママが来ていて、ママやおばあちゃんと何か
話をしていました。翔はテレビを見ています。
「の〜の、お勉強は終わったんか。じゃあ行ってみようか」繭ママが声を掛けると、
ママとおばあちゃんは頷いて
「希、翔、パパがお仕事をしている所に行くで」と言いました。
「パパのお仕事の所に行くん?」
「の〜の、今な、前のお家を壊してんねん。最後やからちょっとだけでも見に行こ
うか」繭ママが言った言葉にの〜のはびっくりしました。

「どうして?どうして壊すん?」の〜のは急に悲しくなって涙が出てきました。
の〜のが生まれて翔が生まれて、ず〜っと住んでいたお家が壊されるという事がす
ごく悲しくて涙が止まりませんでした。
「の〜の、の〜のが悲しいのは分かるけど、おばあちゃんもパパもおばちゃんも悲
しいんやで。の〜のパパは生まれてから40年以上住んでいたお家なんやで。の〜
のや翔ちゃんよりもず〜っとず〜っと悲しい筈やで。だから他の会社の人に頼まん
で、パパは自分の手で壊しているんやで。長年住んでいたお家を自分の手で壊して
るんやで。パパの方がもっともっと悲しいんやで」繭ママはの〜のに言いながら寂
しそうな顔をしていました。おばあちゃんやママも悲しそうな顔をしていました。

「希、ママも悲しいんやで。パパと結婚して希と翔が生まれて、この前まで住んで
いたお家がなくなるのは悲しいけど、パパがこの新しいお家を建ててくれたから、
あのお家は壊してパパが新しい事務所にするんやで。お家はなくなるけどあの場所
はそのままパパが使うんやで」ママはの〜のの手を握って言いました。
「パパの事務所?」の〜のは意味が分からなくて聞きました。
「パパは独立してあそこに事務所を建てるんやで。独立してもお仕事は浩史や久保
田のお兄ちゃん、広岡のおじちゃんたちと一緒にするんやけどな」繭ママが優しく
言って、翔も一緒に前のお家のあった所へ行きました。

お家の周りに幕を張って大きな機械が動いていて、すでに2階はなくなっていまし
た。みんなは邪魔にならないように道路の反対側から見ていました。大きな機械の
先にハサミのような物が付いていて、パパが機械を動かしてお家を壊していました。
の〜のは悲しくて涙が出そうになったけど、繭ママが言ったようにおばあちゃんや
繭ママ、パパの方がもっと悲しいのだと思って必死に我慢しました。翔もおばあち
ゃんと手を繋いで黙って見ています。壊した瓦礫を大きなダンプカーに積んでいま
す。お昼になって機械が止まりました。パパや広岡のおじさん、繭パパに久保田の
お兄ちゃんたちは、ガレージのあったところに張っている屋根だけのテントの下で
お弁当を食べ始めました。の〜のたちもママが作ってきたおにぎりを一緒に食べま
した。

「の〜の、住んでいたお家が壊されるのは悲しいやろ。でも我慢するんやで。パパ
とママが頑張って新しいお家を建ててくれたんやからな。ここのお家は壊してパパ
の会社の事務所になるんやからな。の〜のや翔が何時でも来れるように遊び場も作
るからな」久保田のお兄ちゃんが笑いながら言いました。
「の〜のや翔の遊び場を作るん?まゆ〜や菜々美も遊べるん?」の〜のがパパに聞
くと
「うん、2階建てのプレハブやけどな。2階が事務所で1階が道具や資材の倉庫に
なって、この辺に芝生を植えて屋根付きの東屋みたいなんを作るからな。みんなで
遊びに来てもいいんやで」広岡のおじさんが笑いながら話してくれました。

の〜のは最初悲しかったけど、簡単なお家を建ててパパの事務所とみんなで遊べる
芝生って聞いて少し嬉しくなりました。おにぎりを食べた後、ママと繭ママが近所
の自動販売機でジュースをいっぱい買ってきてみんなに配っています。の〜のと翔
も貰いました。
「の〜の、ちょっと乗ってみるか」久保田のお兄ちゃんが小さい機械を指差して笑
いました。の〜のが頷くと、気ぃつけやとパパが笑って言いました。小さな機械は
ユンボというそうです。久保田のお兄ちゃんと一緒に乗って、お兄ちゃんが一緒に
レバーを動かすと、キリンさんの首みたいなアームが動いて、先についているバケ
ツみたいなものが穴を掘りました。

キリンさんの首みたいなアームが右に左に、上に下に自由に動きます。久保田のお
兄ちゃんが右の方に残っていたブロックにバケツをぶつけると、ブロックはドサッ
と音を立てて崩れました。の〜のがびっくりして久保田のお兄ちゃんを見ると
「の〜の、小さい機械やけどすごい力やろ。機械が動いている時は絶対側に来たら
あかんねんで。あれは要らないブロックやけど人間やったら大怪我をするからな」
久保田のお兄ちゃんは優しく笑いながら言いました。

「パパ〜、の〜のが大きくなったらあれに乗ってお仕事したい」の〜のはパパの横
に行ってユンボを指差すと、広岡のおじさんや繭パパ、おばあちゃんやママも声を
出して笑いました。
「の〜のはママのお店を手伝わなあかんやん。の〜のが大きくなったら理容学校に
行って、ママみたいな世界一の理容師にならなあかんやろ」繭パパがの〜のを見な
がら笑って言いました。の〜のは繭パパに言われて、ママみたいにみんなに好かれ
る理容師になりたいと思いました。でも、パパのようにお家を作るお仕事も良いな
ぁと思いました。

          ☆ 

8月に入って直ぐに登校日があります。夏休みに学校に行くのって嫌だけどお友達
に会えるから楽しみです。ママはお店があるので、おばあちゃんがスクールバス乗
り場まで送ってくれました。スクールバス乗り場には繭子と繭ママ、大輝や遥奈も
居ました。の〜のがおはようと手を振るとみんなもおはようと笑っていました。
みんな日焼けして真っ黒です。バスに乗ると大勢のお友達がの〜のおはようと声を
掛けてくれました。の〜のもおはようと言いながら繭子と並んで座りました。
みんなと会うのは久しぶりだからバスの中は話し声で賑やかです。海水浴に行った
話や遊園地に行った事を大声で話しています。の〜のと繭子も夏休みに入って直ぐ
に海水浴に行った話をしました。

教室に入ると野崎先生が来て2人休んでいると言いました。1人は耕一でもう1人
は梨花という子です。先生の話では耕一はお父さんの田舎へ帰っていて、梨花は家
族でハワイへ旅行に行っているそうです。の〜のはハワイがどこにあるのか知りま
せん。
野崎先生もママのお店にカットに来ています。帰りはアルバイトで来ている慶子お
姉ちゃんがバス降り場に迎えに来てくれました。お家に帰ると翔がお帰り〜と嬉し
そうです。冷蔵庫からアイスを2つ出して2階に行こ、と言うと嬉しそうな顔でつ
いて来ました。

「翔、お部屋のお掃除はしてくれたんか?」アイスを食べながら聞くと、翔は食べ
る手を止めてごめ〜んと首を振りました。
「翔、パパとママはお仕事しているから、お部屋の掃除は2人でするってパパとマ
マに約束したやろ。今日はお姉ちゃんは学校やったから翔がするって言ってたやん。
じゃぁアイスを食べたら一緒にしようか」の〜のが笑いながら言うと翔も笑いなが
ら頷きました。アイスを食べてからお部屋のお掃除を2人でしました。タオルケッ
トはおばあちゃんが干していてくれたので、の〜のが掃除機をかけ翔が笑いながら
モップで拭いています。
「よし、出来た〜」の〜のが掃除機を止め、翔もモップを置くとタッチして笑って
います。

「希ちゃ〜ん、翔ちゃ〜ん、お昼にしようか」下からおばあちゃんの呼ぶ声が聞こ
えました。一緒に降りて行くとテーブルにおにぎりとざる蕎麦が置いてありました。
直ぐにママも来て一緒にお昼ご飯を食べました。
「ママ〜、お昼からパパの所を見に行っていい?」
「気をつけて行きや。暑いから帽子はちゃんと被って行きや」ママが言っての〜の
が頷くと
「翔も一緒に行っていい?」とママとの〜のの顔を見ました。ママが笑いながら頷
くと翔も嬉しそうな顔をしています。翔と一緒に自転車で前のお家があった所に行
きました。お家はなくなっていて、パパたちはコンクリートを塗っていました。パ
パ〜、の〜のと翔が声を掛けると、パパは笑いながらテントを指差しました。

の〜のと翔はテントの下でパパや久保田のお兄ちゃんたちが働いているのを見てい
ました。真夏の暑いカンカン照りの下で汗を流しながら働いているのを見ていると、
お仕事って大変なんだと思いました。
「休憩しようか」1時間くらいするとパパが声を掛けてみんながテントの下に来ま
した。パパと久保田のお兄ちゃん、他に知らないお兄ちゃんが二人居て、繭パパや
広岡のおじちゃんたちは居ませんでした。パパに聞くと他の現場で仕事をしている
のだと言いました。久保田のお兄ちゃんがジュースを買って来てみんなに配ってい
ます。の〜のと翔にもくれました。

「の〜の、今コンクリートを塗ってたやろ。あそこに簡単なお家を建てて事務所に
するんやで。ここに芝生を敷いて屋根だけの東屋っていうのを建ててベンチも作る
からな。事務所が出来たらパパは社長やで〜」久保田のお兄ちゃんが笑いながら言
うと、パパも久保田〜と言いながら笑っています。久保田のお兄ちゃんとあと2人
のお兄ちゃんがパパと一緒に働くそうです。パパを入れて4人だけの小さな会社だ
けど、繭パパや広岡のおじちゃんたちと組んでお仕事をするんだと久保田のお兄ち
ゃんが話してくれました。パパは新しいお家を建ててママのためにお店も作って、
パパは本当に凄いと思います。の〜のはパパが大好きでパパの子供で良かったと思
いました。3日後に組み立て式のプレハブのお家が建つそうです。その後に芝生を
植えたり東屋を作ったりするそうです。お盆前には出来るそうで、出来たらここで
みんなを呼んで焼肉をするんだと笑っていました。



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