「のぞみの日記・夏休み」

第6回



「わ〜っ、新幹線だ〜」新大阪駅のプラットホームで翔は大喜びしています。今日
から2泊3日で旅行です。8月に入って直ぐに
「お盆休みに旅行に行くからな。ほんまやったらお盆を外した方が空いているんや
けど、ママがお店を始めたからお盆か正月以外には連休が取れんやろ。ちょっと混
むけど我慢してな」とパパがの〜のと翔に話してくれました。
「うん、良いよ。みんなで行くん?」
「そうやで。おばあちゃんと桂子おばちゃんも行くからな」ママが笑いながら言う
と翔も嬉しそうな顔をしていました。
「希、この新幹線はのぞみって言うんやで」パパが笑いながら言うとママも一緒に
笑っています。

「のぞみって言うん?じゃぁ、の〜のと一緒の名前なん?」の〜のがびっくりして
聞くと、おばあちゃんと桂子おばちゃんも笑っていました。の〜のがパパとママと
一緒に座り、翔はおばあちゃんと桂子おばちゃんと一緒に座っています。の〜のも
翔も新幹線に乗るのは2回目です。初めて新幹線に乗ったのは2年前の秋で、東京
に行った時に乗りました。その時は「ひかり・レールスター」で「のぞみ」に乗る
のは初めてです。東京に行ったのは、ロンドンで知り合ったモデルさんが『東京コ
レクション』というファッションショーで来た時に会いに行きました。その時は通
訳を兼ねて尚美姉ちゃんの会社の加藤のお姉ちゃんも一緒に行ったんだよ。

「お姉ちゃん、写真撮って」翔が言っての〜のがカメラを構えると嬉しそうな顔を
しています。の〜ののカメラは、今年の誕生日にパパがプレゼントに買ってくれた
デジタルカメラです。最初は使い方が分かりにくかったけど、パパが使い方を教え
てくれて、何度か撮っていると分かるようになりました。翔は撮った写真を液晶画
面で見て嬉しそうに笑っています。
「わ〜っ、速いな〜」の〜のと翔は、窓にかじり付くようにして外の景色を見てい
ました。1時間くらいで名古屋に着くと「しなの」という特急列車に乗り換えまし
た。「しなの」は2人掛けなのでの〜のは翔と一緒に座り、ママとパパ、おばあち
ゃんは桂子おばちゃんと座りました。松本で降りて駅の近くでお蕎麦を食べた後タ
クシーで松本城に行きました。

お城を見るのはの〜のも初めてです。お城の中に入って天守閣まで上がってみまし
た。遠くに高い山が見えています。
「ほら、高い山が見えるやろ。あれは常念岳っていうんやで」パパが山を指差して
説明してくれました。
「あれが常念岳なん?何年か前に登ったね」ママも横から懐かしそうに見ています。
「パパ〜、あの山に登ったん?」の〜のがびっくりして聞くと
「うん、希が生まれる前やけどな。あの時は繭ママと奈央も登ったんやで」ママが
笑いながら話すと、の〜のは繭ママや奈央姉ちゃんも登ったって聞いてびっくりし
ました。

「ねぇパパ〜、の〜のもあんな高い山に登れるようになるん?」の〜のは六甲山に
は何度も連れて行ってもらったけど、あんなに高い山には登った事がありません。
「うん、もう少し大きくなったら登れるようになるで。でも、もう少し六甲山で練
習してからやな」パパが笑いながら言うと翔も行く〜と笑っています。
お城を出ると松本の町を少し歩きました。その後タクシーで松本駅に行って再び電
車に乗りました。今度の電車は各駅停車でのんびり走っています。翔との〜のは窓
から見える山を見ていました。信濃大町という駅で降りるとタクシーで旅館に行き
ました。4時を少し過ぎていました。

「温泉だ〜」嬉しくてつい大声を出すと翔もおんせ〜んと嬉しそうに笑っています。
「お風呂に行こうよ」お部屋でお茶を飲んだ後ママが笑いながら言い、翔との〜の
がタオルを持ってパパの手を引っ張るとおばあちゃんたちは笑っています。エレベ
ーターで一階に降りるとお風呂がありました。
「わ〜っ、大っきいお風呂〜」翔は嬉しそうに言うと浴槽に飛び込みました。まだ
時間が早い所為かおじさんが3人入っているだけです。
「翔、こっちに来ぃ」おじさんたちに邪魔にならないように、少し離れて翔を呼ぶ
と嬉しそうに泳いで来ました。他の人の邪魔にならないように潜ったりして嬉しそ
うです。の〜のも小っちゃい時は泳いだけど今は泳ぎません。

「洗おうか」パパが声を掛けると、パパ、の〜の、翔と並んで座り、翔がの〜のの
背中を洗い、の〜のがパパの背中を洗うと、こうた〜いと言ってパパがの〜のを洗
い、の〜のが翔を洗ってやると嬉しそうな声で笑っています。翔はお家のお風呂で
もの〜のが洗ってやると何時も笑っています。洗った後、洗い場の横から外に出て
露天風呂に入りました。
「パパ〜、お庭を見ながら入るのって気持ち良いね〜」の〜のが言うとパパは笑い
ながら頷いています。翔もパパの横で嬉しそうです。お部屋に戻って暫くすると夕
食が運ばれてきました。大っきなテーブルに乗りきれないほどのお料理が並んでい
ます。パパとママはビールを、おばあちゃんと桂子おばちゃんはお酒が飲めないの
でウーロン茶で、の〜のと翔はジュースで乾杯しました。

「お疲れさ〜ん、かんぱ〜い」の〜のがみんなとグラスを合わせると、翔も嬉しそ
うにかんぱ〜いとグラスを合わせています。
「啓ちゃん、有希ちゃん、ありがとう」桂子おばちゃんがパパとママにお礼を言い
ました。
「何言うてんの、おばちゃんには色々お世話になってるのに。それにウチの身内は
おばちゃんしか居てへんのやから、年に1回だけやけどこうしてみんなで温泉に来
るのも良いやん」ママが桂子おばちゃんに言ってパパとおばあちゃんを見ると、パ
パもおばあちゃんも頷いていました。

          *

次の日も朝早く起きて温泉に入りました。早めに朝御飯を食べて旅館を出たのは7
時半です。頼んでいた2台のタクシーに乗り、山の中をくねくねと走って扇沢とい
う所に着きました。ここからトロリーバスというのに乗って、トンネルの中を15
分くらい走りました。
「パパ〜、ず〜っとトンネルだね」の〜のはこんな所は初めてなのでびっくりして
パパに聞きました。
「うん、ず〜っとトンネルやけど、トンネルを出たら大っきなダムが有るんやで。
他にもケーブルカーやロープウェイ、もう1回トンネルのバスに乗るからな。ここ
はアルペンルートっていうんやで」パパが笑いながらの〜のに言うと翔も嬉しそう
に聞いています。

バスを降りるとダムへの出口と展望台への長い階段の出口がありました。おばあち
ゃんと桂子おばちゃんは、階段はしんどいからダムで待ってるわ、と言ってダムの
出口の方に行きました。パパとママ、の〜のと翔は展望台への階段を登りました。
「走ったら危ないからゆっくり登りや」翔が走るように階段を登り始めたのでママ
が注意をすると、は〜いと言いながらそれでも嬉しそうに階段を登っています。長
〜い階段を登って外に出ると、目の前に大っきなダムが水をいっぱい貯えています。
ダムから放水されていて凄い迫力です。
「パパ〜、ママ〜、虹が出てるよ」の〜のが指差すと
「わ〜っ、ほんまや、虹が出てるよ」翔も嬉しそうに言って虹を見ています。パパ
が大っきなカメラで写真を撮ると、翔も写真撮って〜との〜のに言いました。

の〜のがカメラを向けるとパパと並んで笑っています。の〜のもカメラをママに渡
してパパと一緒に撮りました。外の階段をダムまで降りて行くとおばあちゃんと桂
子おばちゃんが待っていました。ダムの上をのんびり歩いて反対側のトンネルに入
るとケーブルカーに乗りました。5分くらいで黒部平っていう駅に着くと外に出て
みました。正面に高い山があって、さっき歩いたダムが下の方に見えました。
「パパ〜、ジュース買っていい?」の〜のは喉が渇いたのでパパに聞くと、翔もジ
ュース〜とパパを見ています。パパが頷くとママと一緒に自動販売機でジュースを
買いました。ここで10分くらい休憩して写真を撮りました。パパはベンチでタバ
コを吸っています。ジュースを半分くらい飲んでパパに渡すと、ありがとうと言っ
て美味しそうに飲んでいます。

「希、翔、あれに乗るんやで」パパが山の方を指差すと、山の上の方からロープウ
ェイのゴンドラが降りて来るのが見えました。
「パパ〜、あれに乗るん?すご〜い、翔、あれに乗るんやで〜」の〜のが小さく見
えるゴンドラを指差すと、翔もわ〜っと言いながら嬉しそうな顔をしています。
ロープウェイ乗り場で少し待って乗り込むと直ぐに動き出しました。の〜のは翔と
前の窓の所から外を見ていると、どんどん高くなって地面が遥か下の方に見えます。
「翔、凄く高いなぁ。怖いくらいやな」の〜のが翔に話しかけると、翔も窓から覗
き込むように見ながら頷いています。やがて大観峰という駅につくとロープウェイ
を降りて外に出てみました。さっき歩いたダムが凄く小さく見えます。大観峰から
またトンネルバスに乗りました。暫く走って室堂というターミナルに着き、バスを
降りると大勢の観光客がいました。

「希、翔、ちょっと寒いから長袖のシャツを着ぃや」ママが言って、脱いでいたシ
ャツを着ると階段を登ってターミナルの外に出ました。正面に高い山がずら〜っと
聳えています。
「うわ〜っ、凄いね〜。パパ〜、ママ〜、雪があるよ。夏やのに〜」の〜のはあま
りの景色に感激しました。翔は雪を触って嬉しそうに笑っています。
「お兄ちゃん、ここに来るのは久しぶりだね〜」とママも嬉しそうにパパに話して
います。
「希、翔、前に来た時はあの山に登ったんやで」ママがバッグからポケットアルバ
ムに入れた写真を出して見せてくれました。正面に見える山をバックに撮った写真
で、パパとママ、繭ママも写っていました。

「ママ〜、あの山にも登ったん?」の〜のが写真を見ながら聞くと
「そうやで。パパと繭ママと3人で登ったんやで。まだ希が生まれるず〜っと前や
けどな」ママは嬉しそうに言いながら写真を見ています。大きなリュックを背負っ
て雪の中を歩いている写真や雪の上に立っている写真、テントの前でコーヒーを飲
んでいる写真などが数枚ありました。翔も横から見ています。
「パパ〜、翔もあそこに登れるん?」翔がパパに聞くと
「そうやな。翔がもう少し大きくなったら、ママやお姉ちゃんと一緒に登ろうか」
パパが笑いながら翔に言うと、翔は嬉しそうな顔でパパを見て正面の山を見つめて
います。

「お兄ちゃん、あそこで写真を撮ろうよ」ママが側にある大きな石碑を指差しまし
た。何人かの観光客が写真を撮っています。その石碑はママが持って来た写真にも
写っていました。パパが大っきなカメラを構えると、の〜の、ママ、翔、おばあち
ゃんと桂子おばちゃんが石碑の前に並びました。今度はママがカメラを構えてパパ
と一緒に撮りました。時計を見ると10時半を少し過ぎています。次にみくりが池
というところに行きました。ターミナルの前に延命水という水場があって、観光客
が大勢並んで飲んでいます。
「希、並んで飲んでみるか?あのお水は美味しいんやで」パパが言うと、ママがバ
ッグから空のペットボトルを出し、笑いながら並んでいます。ママと一緒に翔との
〜のが並ぶと、おばあちゃんと桂子おばちゃんも並んでいます。

「ほんま、美味しい水やねぇ」順番が来ておばあちゃん、桂子おばちゃんは美味し
そうに飲んでいます。翔も冷た〜いと言いながら嬉しそうに飲んでいます。
あっちこっちに雪がいっぱい残っています。真夏に雪を見るのは初めてで、翔は嬉
しそうに雪を踏みしめて喜んでいます。遊歩道の周りには色んなお花が咲いていま
した。左の方に坂道を降りるとみくりが池の直ぐ側まで行けます。ベンチがあって
何人かの観光客が座っていました。綺麗な池で水が青々としています。
「ママ〜、いっぱい雪があるね〜」池には氷が浮かんでいて、岸の周りにはいっぱ
い雪が残っています。翔は冷た〜いと言いながら雪を丸めて喜んでいます。ここで
みんなで写真を撮りました。みくりが池温泉の前を通って少し登るとエンマ台とい
う展望台です。ここからは更に山が大きく見えます。ここでも写真を撮りました。

エンマ台の端の方に行くと、下の方に青や茶色のテントが沢山見えました。
「希、ほら、あそこにテントがいっぱいあるやろ。あそこでキャンプしたんやで」
ママがテントの方を指差しての〜のに言いました。翔もママが持って来た写真を見
ながら
「パパ〜、翔もキャンプした〜い」とパパに言っています。
「そうやな、翔がもう少し大きくなったらみんなでキャンプに来ような」パパが翔
に言うと、翔はの〜のやママを見てキャンプや〜と喜んでいます。おばあちゃんと
桂子おばちゃんが笑っています。ここからみどりが池の方を回ってターミナルの方
へ戻り、ターミナルの中にあるレストランでお昼ごはんを食べました。
「今日もう1日温泉に泊まって、明日はトロッコに乗るからな」お昼ごはんを食べ
ながらパパがの〜のに言うと、翔も嬉しそうな顔でパパを見ています。

「今日も温泉に入るん?ほんで明日はトロッコにも乗るん?」の〜のも嬉しくてパ
パに聞くとパパは笑いながら頷きました。トロッコは前に京都に行った時に乗った
事があります。翔は小っちゃかったから覚えていないようで、明日のトロッコが嬉
しそうです。
お昼ごはんの後少し休憩してからバスに乗りました。いよいよ山の景色ともお別れ
です。今度はパパやママ、翔と一緒にキャンプに来たいと思いました。バスは草原
の中をくねくね曲がりながら下っていきます。1時間くらい走って美女平という所
でバスを降りるとまたケーブルカーに乗りました。ケーブルカーを降りて立山とい
う駅から電車に乗りました。



 バック
 7回