のぞみの日記・4年生になって






6回


          *

「パパ〜、六甲に行こうよ」2月中旬の金曜日に雪が降ると翔がパパに言いま
した。の〜のも行きたいと思って行こうよと言うと笑ってママを見ています。
「じゃあ日曜日にみんなで行こうか」パパが言うと翔は嬉しそうな顔をしまし
た。今度の日曜日は第3日曜でママのお店はお休みです。

「またテントでカニ雑炊しような」翔がパパに言うとママが笑っています。翔
は去年初めて雪が降った六甲山に行き、テントの中でカニ雑炊を食べたのが気
に入ったようです。
「そうやな、またテントを張ってカニ雑炊をしようか」パパが笑いながら言う
とやった〜と喜んでいます。の〜のもテントで食べるカニ雑炊が好きです。
日曜日、5時に起きると翔も起きて山の服に着替えています。

「パパ〜、ママ〜、おはよう」翔と一緒に下に降りるとパパとママも山の服を
着てコーヒーを飲んでいました。の〜のと翔にココアを入れてトーストを焼い
ています。の〜のと翔はデイパックでパパとママは六甲山に行く時のリュック
です。去年と同じようにJRで三田迄行き、乗り換えて有馬温泉に着いたのは
9時を少し過ぎていました。

の〜の達以外にもおばちゃんのグループやおじさんが歩いています。温泉街を
抜けてロープウェイの駅を過ぎ、道が狭くなってくると雪が増えてきました。
翔は嬉しそうに雪を踏みしめて歩いています。砂防堤や小川沿いの道を過ぎ、
登りになる所で休憩して軽アイゼンを付けました。去年もそうだったけど、こ
こからは階段状の登りになって雪が凍っています。

前を歩いていたおばちゃんのグループも休憩して軽アイゼンを付けていました。
休憩の時にパパがホットチョコレートを作ってくれました。パパとママはコー
ヒーです。おばちゃん達が行った後1人だけのおじさんが来てそのまま登って
行きました。おじさんはアイゼンを付けないで靴に縄を巻いていました。
「パパ〜、あのおじさん、アイゼンを付けていないけど滑らんのやろか」翔が
聞くとパパが笑いながら説明しています。氷みたいにツルツルに凍っていたら
駄目だけど、これくらいやったら縄でも滑らないと言っています。

「そろそろ行こうか」ママが声を掛けると翔が元気よく登り始めました。
「翔、ゆっくり登るんやで」パパが注意すると、うん、と言ってパパと一緒に
ゆっくり歩いています。少し行くと傾斜が緩くなってのんびり歩けます。

翔は人の歩いた跡を避けてわざと雪のある所を歩いています。途中少し広くな
った所でもう一度休憩すると最後の登りをゆっくり登りました。登りきった所
が六甲山上の道路です。道路にでる直前に古い小屋があり、何時もここでテン
トを張るけど今年は雪が少なくて下に草が出ています。

「パパ〜、今日もここでするん?」翔が聞くとパパは頷いてブルーシートを出
して広げています。シートの上でテントを広げ、ポールを差し込むとテントが
立ち上がりました。翔は嬉しそうな顔をしています。ここではテントを止める
ペグは打ちません。
「よし、いいで」パパがテントの中にフロアマットを敷くと、翔が真っ先に靴
を脱いでテントに入りました。ママが笑いながら入るとの〜のも入りました。

靴は前室の部分に置いているから雪が降っても濡れません。パパが換気口を開
けて入り口も半分くらい開けてからストーブを出し、クッカーに水を入れて出
汁昆布の小さいのを入れています。ママがリュックからご飯だけのおにぎりと
卵を出すとパパがカニの缶詰を出しました。翔はそれをみて嬉しそうな顔をし
ています。お湯が沸くと出汁昆布を取り出してご飯を入れました。

ご飯がグツグツ煮えてくるとカニの缶詰をいれ、パパがストーブの火を止める
とママが卵を溶いて入れました。ラップに包んだキザミネギを入れ、海苔を細
かく砕いて入れると蓋をしました。
「出来たで〜」ママが言って、の〜のと翔がデイパックから食器を出すとカニ
雑炊を入れてくれました。

「お姉ちゃん、美味しいね。やっぱり寒い時は雑炊が一番いいわ」翔が嬉しそ
うに言って食べるとパパとママが笑っていました。雑炊を食べた後、お茶を飲
みながらママがリンゴを剥いています。片付けをして時計を見ると2時になっ
ていました。少し風が出てきて小雪が舞っています。

六甲山のレストランの前を通り、ゴルフ場の横から別荘の建っている中の道を
歩き、ケーブル駅からケーブルカーに乗りました。去年もケーブルカーに乗る
と翔は喜んでいたけど今年も嬉しそうです。ケーブルカーの下の駅から六甲駅
までバスで行って電車に乗りました。

          ☆

3月に入って直ぐに尚美姉ちゃんが繭ママ、繭子と一緒に来ました。尚美姉ち
ゃんがパパに大きな封筒を渡すと中身を出して見ています。の〜のも横から見
ると予定表やバッグに付けるタグ、チェックインカウンターの場所やバッジが
入っていました。予定表には泊まるホテルの名前や観光する場所等が書かれて
います。

「啓兄ちゃん、一応座席の予約も出来ているからな。2人席を3列でみんな一
緒やからいいやろ。カイロまで直行で14時間くらい掛かるから啓兄ちゃんに
はしんどいかもね。タバコが吸えんやん」尚美姉ちゃんが笑うとパパとママも
笑っています。
「まぁな、けどタバコの本数も減ってるし、ロンドンの時も12時間くらいは
吸えなんだから大丈夫やろ。これはみんなにも行ってるんか?」と封筒を指し
ました。

「由香里ちゃんと麻衣ちゃんには今日送ったからって連絡したから。明日には
届くと思うわ」尚美姉ちゃんが言うとパパとママが頷きました。
「麻衣姉ちゃんも行くん?」
「うん、麻衣ちゃんと由香里ちゃんが一緒に行くからな。麻衣ちゃんはマスタ
ーに相談して休ませてもらえるらしいわ。祐子ちゃんも行きたそうやったけど、
26万はしんどいって言ってたわ」ママがの〜のとパパに説明しました。

「そうやね。26万に燃油サーチャージャーや空港税、ビザ代に空港施設利用
料とか入れたら30万を越えるもんね」尚美姉ちゃんが言うとママが頷きなが
ら予定表を見ています。
「由香里ちゃんと麻衣ちゃんは今度の月曜日に来るって言ってたわ。関空での
待ち合わせ時間や場所の確認したいって言ってたし、持って行くもんも聞きた
いみたいやったで。啓兄ちゃん、2回行ってるから分かってるやろ」尚美姉ち
ゃんが笑いながら言うとパパとママは笑っています。繭ママも笑っていました。

月曜日の夕方に麻衣姉ちゃんが来ました。由香里姉ちゃんは仕事が終わって来
るから少し遅れるそうです。パパが帰って来ると麻衣姉ちゃんも一緒にご飯を
食べました。ご飯を食べ終わった頃由香里姉ちゃんが来ました。
「ご飯は?」
「簡単やけど途中で済ませてきたわ」ママが聞くと笑いながら言ってケーキの
ボックスを渡しました。ママがありがとうと言うと翔も嬉しそうにケーキのボ
ックスを見ています。みんなで2階に上がるとパパがコピーしたものを2人に
渡しました。

「そんなもんでいいと思うけど日数分だけ要るで。まぁ洗濯すればもう少し少
なくて済むけど、下着や靴下、Tシャツくらいやったら洗えるけどジーパンな
んかは無理やからな。それと、生野菜は食べられんからサプリメントみたいな
んを持って行く方がいいかも知れんな。ビタミンや野菜繊維のサプリメント。

それともうひとつ、カメラを持って行くやろうけど、今はカイロ博物館や王家
の谷の墓、アブシンベル大神殿は写真が撮れんようになったからな。まぁ、外
やったら幾ら取ってもいいみたいやし、デジカメやったら保存メディアは余分
に持って行きや」
「え〜、カイロの博物館やアブシンベル神殿、王家の谷も写真撮影が禁止にな
ったんですか」お姉ちゃん達はちょっとがっかりした顔をしたけど、パパが必
要な物や持って行くと便利な物を言うとメモ用紙に書いています。

ママとおばあちゃんがケーキを切り分け、お茶と一緒に持って来ると翔がニコ
ニコしています。ケーキを食べながらパパと由香里姉ちゃん、麻衣姉ちゃんが
関空での待ち合わせ場所と時間を相談しています。パパが12時半でチェック
インカウンターの入り口の所でいいやろ、と言うと2人は頷いていました。

「の〜の、体に気をつけていっぱい楽しもうな」麻衣姉ちゃんが笑うとの〜の
も笑いながら頷きました。あと2週間でいよいよ典子姉ちゃんの居るエジプト
に行きます。



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