のぞみの日記・4年生になって
冬
5回
「啓兄ちゃん、翔ちゃんを4、5枚撮らしてくれへん?」休憩の時に尚美姉ち ゃんがパパに言いました。 「翔って、女もんと違うんか」パパが言うと、男の子用のカーゴパンツの半ズ ボンとシャツ、Tシャツを数枚だけ、春物の広告用だと言っています。 「翔、どうや、ちょっとお姉ちゃんみたいにやってみるか」ママが翔に言うと、 翔は嬉しそうな顔での〜のを見て頷きました。
「慣れてないからちゃんとポージングできるか分からんで」パパが言うと、パ パ〜、大丈夫だよ、と翔が笑っています。佐藤さんが携帯で誰かと話し、暫く すると女の人が大きな紙袋を持って来ました。再び撮影が始まると翔はじ〜っ と見ています。村瀬さんのモータードライブの音が響いています。
「オーケーだよ。希ちゃん、お疲れさん」村瀬さんが声を掛けると、の〜のも お疲れさ〜んと言ってパパの所へ行きました。翔がパーテーションで着替えて 出てきました。半ズボンのカーゴパンツにボーダー柄のTシャツを着ています。 「翔、お姉ちゃんがしてたみたいにするんやで。ゆっくりでいいからな」の〜 のが言うと笑いながらVサインを出してブルースクリーンの前に立ちました。 村瀬さんが横を向いてみようか、手を上げて、と言うとそれらしくポーズを取 っています。
「いいですね〜。初めてとは思えませんね」広報部の佐藤さんが驚いたように 翔を見ています。の〜のの撮影の時、何時も一緒に来て見ていたから自然と覚 えたのかも知れません。の〜のが笑いながら手を振ると嬉しそうに笑いました。 4、5回着替え、村瀬さんの言うように元気にポーズを取っています。 「翔ちゃん、オーケーだよ。お疲れさ〜ん」村瀬さんが笑って声を掛けると、 翔もお疲れさ〜んと言って嬉しそうにの〜のの所へ来ました。
「翔、良かったで。これから男の子の洋服の時に頼まれるかもな」の〜のが褒 めると翔は嬉しそうな顔で頷きました。 「有難うございました。今までの男の子がこの春から中学生になるので、新た にモデルを探さなくてはいけないんですが、もし、良ければこれから翔ちゃん にお願い出来ないでしょうか」広報部の佐藤さんが言うと、ママとパパは驚い たように顔を見合わせています。
「啓兄ちゃん、有希ちゃん、うちからもお願いするわ。の〜のの時と同じよう に決して無理はさせんから。年に数回の撮影だけやから」尚美姉ちゃんが言う とパパは翔の顔を見ています。 「パパ〜、翔は大丈夫だよ」 「尚美、お前に任せるけど無理はさせるなよ」翔がパパに言うとパパは尚美姉 ちゃんに言いながら頷きました。
「翔、良かったな。これからはお姉ちゃんと一緒やな」の〜のが笑うと嬉しそ うに笑いました。スタイリストさんがの〜のと翔が着た春物と夏物を袋に入れ て持って来ました。毎回撮影した新しいものを貰って発売前に着ます。 「の〜の、春物や夏物はエジプトに行く時に持って行けるな。向こうはかなり 暑いから、フード付きのパーカーなんか便利やで」尚美姉ちゃんが言うとみん なが驚いています。
「エジプトに行かれるんですか?」広報部の佐藤さんが聞くとパパとママが頷 きました。村瀬さんも驚いた顔をしています。 「春休みに希だけやけどね」パパが言うと村瀬さんは黙って頷いています。村 瀬さんはの〜のが典子姉ちゃんの生まれ変わりらしいという事は知っています。 パパが死にそうになった時も病院にお見舞いに来てくれました。典子姉ちゃん が現れてパパを助けた話もママに聞いて知っています。
パパが典子姉ちゃんのお骨をエジプトに持って行った話も藤岡サロンで聞いて 知っています。だからの〜のだけを連れて行くと聞いて理由を察したようです。 「そうですか。エジプトへ行かれるんですか。希ちゃん、良かったね」村瀬さ んはそれだけを言って頷きました。
「大原さん、ご迷惑でなければ、希ちゃんがTシャツやパーカーを着ている写 真を撮ってもらえないでしょうか。ピラミッドやスフィンクス、ナイル川など で、キャットハウスの製品を着ている希ちゃんの写真を数枚お願い出来ません か?春物は無理としても、夏物のカタログには間に合いそうですし。普通の記 念写真程度のもので結構ですので何とかお願い出来ませんか?」広報部の佐藤 んが言うとパパは驚いています。
「まぁ普通の記念写真程度の物でいいんやったら何とかなるけど・・・」パパ が言うと、佐藤さんがよろしくお願いしますと頭を下げました。 「大原さん、少しだけど」と村瀬さんが封筒を渡しました。 「村瀬さん、そんな・・・」パパが言いかけると村瀬さんが笑いながら制しま した。 「有難うございます。希、お礼を言うんやで」パパが封筒をの〜のに渡して中 を見るとお金が入っていました。 「ありがとうございます」の〜のがお礼を言うと村瀬さんは優しく笑いました。
*
「希、今からパスポートを貰いに行くか」月曜日に学校から帰って来るとママが 言って時計を見ると2時半を少し過ぎています。 「うん、行く〜。ちょっと着替えてくるから」2階に上がると翔も行く〜と上が ってきました。ジーパンとセーターに着替え、コートを持って降りると翔もジー パンとブルゾンで降りてきました。
ママが繭ママに電話をしたらしくて繭子と一緒に来ました。バスで塚口まで行き、 パスポートセンターでママが切手みたいな物を買い、用紙に貼って出すと顔を見 ながら写真と確認してパスポートをくれました。繭子も繭ママと一緒に貰うと嬉 しそうな顔をしています。
「パパ〜、パスポートを貰ってきたよ」夕方パパが帰って来るとパスポートを 見せました。 「ここに名前を書いとくんやで」ママが持って来たお茶を飲みながら、裏表紙 に名前を書くように言われて自分で書きました。 「お兄ちゃん、ご飯にしようか」ママが声を掛けました。
「パパ〜、ごは〜ん。今日は湯豆腐だよ」と言いながら翔がパパの手を引っ張 ると、パパが笑いながら翔を横抱えにしています。翔がパパ〜と笑いながら手 足をバタバタさせると、ママとおばあちゃんが大声で笑っています。の〜のも 翔が手足をバタバタさせているのがおかしくて笑ってしまいました。
ご飯を食べ終わった頃繭子と繭ママ、菜々美、尚美姉ちゃんが来ました。みん なで2階に上がるとパパがアルバムを持って来ました。パパが最初にエジプト に行った時のアルバムとママと一緒に行ったアルバムです。 「わ〜、すごいなぁ」繭子がピラミッドやスフィンクスの写真を見ながら言う と繭ママも横から一緒に見ています。パパが1人で行った時の写真には絵里姉 ちゃんや岡島のお姉ちゃんと一緒の写真が有りました。繭ママがどんな物を持 って行ったらいいかパパに聞いています。
「服は春もんと夏もんでいいけど、半袖より薄地の長袖の方がいいわ。パジャ マは春もんの方がいいで。けっこう冷房が効いているからな。暑かったらTシ ャツにすればいいやん。帽子やサングラス、靴は履きなれたスニーカーがいい わ。のど飴みたいなんも持って行ったらいいわ。ポットと鍋は俺が持って行く けど、カップ麺や山用の食料なんかも持って行った方がいいやろ。向こうの食 事は脂っこいから、食欲が落ちた時や体調を崩した時に食べやすいからな。
それと、生野菜が食えんからハイシーみたいなビタミンの入ってるもんを持っ て行くといいかもな」パパが言う物を繭ママがメモしています。他にも持って 行くと便利な物などを聞いてメモしていました。
「啓兄ちゃん、由香里ちゃんと麻衣ちゃんが一緒に行くって電話があったわ。 2人やったらタクシーを使うらしいけど、6人になるからワゴン車での観光に なるみたいやで。人数が増えた分少しだけ安くなるみたいやったわ。ほんでも エコノミーでいいん?」尚美姉ちゃんがパパに言うとパパは笑っています。
「エコノミーでいいわ。子供の時からビジネスなんて贅沢を覚えさせたら先が 大変やん。それより現地係員は日本語が喋れるんやろな。英語の係員なんかや ったら困るで。初日のカイロから最終日のカイロまで、同じ係員が同行するよ うにしといてくれよ」パパが尚美姉ちゃんに言うと笑いながら頷いていました。
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