「のぞみの日記・冬休み」
第12回
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「パパ〜、六甲山に行こうよ」晩ご飯を食べながらの〜のが言うと翔も行きた〜いと 笑っています。学校と幼稚園が始まって1週間が過ぎていました。去年も雪が降った 後に連れて行ってもらって楽しかった事を覚えています。翔は風邪を引いていて行け なかったから今年は行きたがっていました。 「じゃぁ、今度の日曜日に行ってみるか。早起きせなあかんけど翔は大丈夫か?」パ パが笑いながら言うと、うん、ちゃんと起きるよ、と笑っています。 「ただ、上手いこと雪が降るかなぁ」パパが言うと翔がテレビを点けて天気予報のチ ャンネルに合わせました。普段はご飯の時はテレビを点けないけど、大きなニュース などがあった時にはテレビを点ける時があります。どうやら週末にかけて雪模様みた いです。 「パパ〜、雪って言ってるよ」翔が嬉しそうな顔をしました。 「そうみたいやな。電車やバスが止まるほど降ったらあかんけど、そんなに大雪じゃ なさそうやしな」パパが天気予報を見ながら言うと、の〜のと翔はやった〜と叫びま した。
「気ぃつけて行きや。凍ってる所もあるからミニアイゼンを持って行くんやで。パパ の言う事をちゃんと聞くんやで」ママがみんなを見ながら翔に言うとニコニコしなが ら頷いていました。土曜日にパパが帰って来るとリュックを用意しています。の〜の と翔もパパに聞きながらリュックに荷物を入れました。ご飯を食べ終わった頃にお姉 ちゃん達がロッカールームの方から出て来ました。 「お姉ちゃん、明日ね、六甲に行くんだよ」翔が嬉しそうに言っています。 「そうか、六甲に行くんか。昨日雪が降ってたから凍っているかもしれんから気をつ けや。パパの言うことを聞いて怪我せんようにしいや」香織姉ちゃんがの〜のと翔に 言うと、おやすみなさいと挨拶して帰りました。
朝5時に目覚まし時計で起きると翔を起し、用意していた服を着ました。の〜のはロ コの山用の服があるけど翔は持っていません。パパが言ったようにタイツを穿いてス ウェットを穿き、オーバーズボンを穿いています。上はウールのシャツにフリースと ウィンドブレーカーを用意していました。下に降りるとパパがパンを食べながらコー ヒーを飲んでいました。の〜のと翔には牛乳を温めてくれました。 「啓一、気ぃつけや。希ちゃんと翔ちゃんも気をつけてね」おばあちゃんが玄関まで 送ってくれました。5時半を少し過ぎたばかりなのでママは起きて来ませんでした。 通りかかったタクシーでJRの伊丹駅まで行きました。朝早いから電車はガラガラで す。福知山線の三田まで行って神戸電鉄という電車に乗り換えました。その電車で有 馬口という所まで行って有馬行きの電車に乗り換え、有馬温泉の駅に着いたのは9時 を少し過ぎていました。
「希、翔、途中にトイレはないから駅のトイレで済ませるんやで」パパが言って電車 が駅に着くと、改札を出る前におトイレに行きました。駅を出て歩き出すとリュック を背負っている人が何人か歩いていました。同じ電車で来た人達です。温泉街を抜け て少し登るとロープウェー乗り場がありました。 「パパ〜、ここからロープウェーに乗れるん?」翔はこっちの方に来たのは初めてだ からロープウェーが有るのを知りません。この有馬温泉からのコースは紅葉谷(もみじ だに)コースというそうで、何度かパパに連れて来てもらっています。 「うん、乗れるけど乗らへんで。歩いて登るんやで」パパが言うと翔は笑いながらV サインを出しました。広い道を歩いて行くと小さな橋を渡りました。ここまでは車も 通れるくらいの道だけど、この橋からは人が歩けるだけの細い道になります。この辺 から雪が増えてきたけどまだ凍っていません。
砂防堤の上を歩き、小さな川沿いの道をゆっくり歩きました。途中で暑くなって来た ので上着を脱ぎました。翔もウィンドブレーカーを脱いでいます。少し坂を上った所 で3人のおばちゃんが休憩していました。 「よし、ここでちょっと休憩しょうか」パパが言っておばちゃん達の横の方で休憩し ました。パパが水筒を出してお茶を飲むとの〜のと翔もお茶を飲みました。パパがチ ョコレートを出すと翔が嬉しそうな顔をしています。 ここから少し急な階段の所が凍っていたのでミニアイゼンを付けました。おばちゃん 達も付けています。の〜のは去年付けたから付け方は知っていたけど、翔は初めてな のでパパに付けてもらっています。 お先に〜と言っておばちゃん達が階段を登り始めました。パパが翔にアイゼンを付け た時の歩き方を教えています。翔は真剣な顔で聞くと少し歩いています。滅多に見な い翔の真剣な顔がおかしくて思わず笑ってしまいました。
行こうか、とパパが言って階段を登りました。 「ゆっくりでいいからな。滑らんように気ぃつけや」パパが翔の手を握ってゆっくり 登っています。の〜のも2人の後ろからゆっくり登りました。少し登ると階段が終わ って傾斜も緩くなって来ました。雪がなくて土が出でいる所もあります。でも、もう 少し行くとまた急な所があるのでアイゼンは付けたままです。この辺から少し雪が降 ってきました。翔は雪の中を歩きながら嬉しそうです。途中でもう一度休憩して最後 の坂を登ると六甲山の道路に出ます。道路に出る直前に古い小屋があります。 「パパ〜、ここで食べるん?」去年来た時もこの古い小屋の裏の方で食べたので、今 回もここで食べるのかなぁと思って聞きました。 「そうやな、ここで食べようか」パパが時計を見て言いました。の〜のも時計を見る と11時半を少し過ぎていました。去年と同じようにリュックを下ろして雪を踏み固 めました。3人が手を繋いでワッショイワッショイと言いながら雪を踏み固めると、 翔は楽しそうに笑っています。
「これくらいでいいやろ」パパが言ってリュックからブルーシートを出しました。工 事現場などで使うようなシートだけど、少し小さくて畳2枚分くらいの大きさです。 シートを敷くとテントを広げ、ポールを差し込むとテントが立ち上がりました。翔は テントを見て嬉しそうな顔をしています。このテントは小さいテントで、の〜のが初 めてパパと魚釣りに行った時に寝たテントです。ここでは寝ないで中でご飯を食べま す。 「靴を脱いで入るんやで」パパが言って入り口で靴を脱いで入りました。入り口のと ころに前室といって少しスペースが有るので靴は濡れません。テントに入ると2ミリ くらいのフロアマットを敷き、百均で買った折りたたみ式の小さい座布団を敷きまし た。換気口と入り口のファスナーを少し開け、ストーブを点けると大きなクッカーで お湯を沸かしています。 「パパ〜、ご飯は何作るん?」 「カニ雑炊やで〜」パパが笑いながら小さな出汁昆布を入れています。翔はカニ雑炊 と聞いてやった〜と喜んでいます。お湯が沸くとご飯だけの大きなおにぎりを5つ入 れました。
外は雪が降っているけどテントの中は暖かいです。ご飯がグツグツ煮えてくるとカニ の缶詰を開けて入れ、卵を溶いて入れるとラップに包んでいたキザミネギを入れまし た。 「出来たで〜」パパがクッカーをストーブから下ろしてから山用の食器に入れて渡し ました。の〜のと翔はリュックからスプーンを出すとふ〜ふ〜しながら雑炊を食べま した。 「翔、熱くて美味しいなぁ」の〜のが食べながら翔を見ると、翔もふ〜ふ〜しながら 美味しそうに食べています。パパも食べながらもう1つの小さいクッカーでお湯を沸 かしています。の〜のと翔は3杯お代わりをしました。 他の人たちは六甲山の食堂で食べたり冷たいおにぎりを食べているようだけど、パパ はいろんな道具を持って来て寒い時でも暖かい雑炊が食べられます。雑炊を食べた後 パパが熱いお茶を作ってくれました。翔はテントの中で食べるのが初めてなので嬉し そうです。お茶を飲んでからミカンを出して食べました。
「お姉ちゃん、パパ〜、カニ雑炊美味しかったね。前も雑炊したん?」翔がミカンを 食べながら聞きました。 「パパ〜、また来ようね」の〜のが頷くと翔はパパに言いました。 「そうやな、翔がいい子にしてたらまた来ような」パパが笑いながら言うと、翔はい い子でいるよ、と笑っています。テントでご飯を食べてお茶を飲み、暫くらしてから パパがコーヒーを、の〜のと翔はココアを飲みました。 テントでゆっくりしたので歩き出したのは2時を少し過ぎていました。このまま歩い て降りると時間が掛かって暗くなるので、ケーブルカーの駅まで歩いてケーブルカー に乗りました。ケーブルカーに乗ると翔は嬉しそうな顔をしていました。ケーブルカ ーの駅からバスで六甲駅まで行き、電車とバスに乗ってお家に帰ったのは6時前にな っていました。 「ただいま〜」翔が大きな声で玄関を開けるとおばあちゃんとママが出て来ました。 「どうやった?楽しかったか?」ママが聞くと翔は嬉しそうな顔で頷きました。 「うん、いっぱ〜い歩いてね、テントでカニ雑炊を食べたよ。帰りにケーブルカーに も乗ったよ。また行くんだよ」翔は弾んだ声で喋っていました。
終り
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