「のぞみの日記・冬休み」
第11回
(四)
11月中旬の木曜日、パパはお仕事に行かずに小さなカバンを持って出かけました。 「パパ〜、何処に行くん?」翔が朝ご飯を食べながら変な顔をしています。 「人間ドックだよ」ママが笑いながら言うと、翔は人間ドックの意味が分からずに不 思議そうな顔をしました。 「今日から病院に入院して体の悪い所を調べてもらうんだよ」おばあちゃんが分かり やすく話すと、翔は病院と聞いて心配そうな顔をしました。 「翔、心配せんでも大丈夫やで。パパは病気やなくて、病気になる前にどこか悪いと ころがないか検査してもらうねん。悪いところが見つかったら酷くなる前に治しても らうんやで。パパはママや希、翔に心配かけないように検査に行くんやで」ママが話 すと翔は安心したのかパパを玄関まで送りました。翔はあの時、まだ小っちゃかった からはっきり覚えていません。典子姉ちゃんがパパを助けてくれた時、体が光ったの はぼんやり覚えているみたいだけど、詳しい出来事はママやおばあちゃん、繭ママと の〜の、病院の先生しか知りません。
それからパパは毎年秋になると検査をしてもらっています。でもあれ以来何処も悪い 所はないそうです。そういえば煙草も止(や)めてはいないけど本数が減っています。 の〜のは時々パパの煙草に火を点けてやるのが好きだったけど、最近は火を点ける回 数も減っています。晩ご飯の時間になってもパパは帰って来ませんでした。の〜のは 2泊3日と聞いていたけど翔は聞いていなかったみたいでパパは〜と心配そうです。 「パパは2日間病院に泊まって検査するんやで。土曜の昼頃には帰ってくるわ」ママ が笑いながら言うと翔は安心したようにご飯を食べています。 土曜日の昼前にパパが帰って来ると、翔が玄関に走って行って心配そうな顔でパパを 見ています。の〜のもパパを迎えに玄関に出ました。パパは笑いながら翔を抱き上げ るとの〜のの手を握って笑いながら頷きました。の〜のはパパの笑い顔を見て安心し ました。おばあちゃんがお茶を出すと美味しそうに飲んでいます。
「詳しい結果は1週間くらいしたら郵送で送ってくるけど、どこも悪い所はないみた いやったわ」パパがおばあちゃん、の〜のと翔に言うと、おばあちゃんは頷いてお昼 ご飯の用意を始めました。翔も悪い所はなかったと聞いて安心しています。お昼の焼 き飯を食べているとママが来ました。 「お兄ちゃん、どうやったん?」ママはパパの横に座って聞いています。パパが詳し い結果は1週間後やけど、悪い所はないみたいやわって言うと安心したようです。 「良かったね。来週の島本のお姉ちゃんの結婚式でも安心して飲めるやん」おばあち ゃんが出してくれた焼き飯を食べながら笑っています。 「車で行くのに飲まれへんやん。最初の乾杯の1杯くらいは飲んでも大丈夫やろうけ ど、あとはウーロン茶でも飲んでるわ。帰りも運転せなあかんしな」パパがママに話 しているのを聞いて、来週の日曜日は由香里姉ちゃんのお姉ちゃんの結婚式だった事 を思い出しました。夏休みが終わった頃に来て話していたのを覚えています。最初は パパとママだけが行くのかと思っていたけど、の〜のと翔も出席出来るそうです。
*
11月最後の日曜日、京都の結婚式場にパパの車で行きました。今日は由香里姉ちゃ んのお姉ちゃんの結婚式です。パパは黒の礼服でママは着物を着ています。の〜のは ベルベットのワンピース風のドレスで翔は幼稚園のグリーンの制服を着ています。 「お兄さん、有希ちゃん、の〜の、翔ちゃん」パパが受付で名前を書いていると由香 里姉ちゃんが声を掛けました。由香里姉ちゃんは濃紺のロングドレスを着て笑ってい ました。パパとママが挨拶すると控え室に案内されました。 「この度はおめでとうございます」パパとママが控え室に居たお姉ちゃんの両親に挨 拶すると、の〜のと翔もおめでとうございますと挨拶しました。 「ありがとうございます。希ちゃんと翔ちゃんもありがとう」お父さんが言うとお母 さんもありがとうと嬉しそうな顔をしています。女の人が案内に来て式場内の教会に 行きました。
真ん中に赤い絨毯が敷かれて両側に椅子が沢山並んでいます。由香里姉ちゃん達と前 の方に座っていると神父さんが来ました。みんなが立つと横の方で女の人がオルガン を弾きました。みんながドアの方を見ると、由香里姉ちゃんのお姉ちゃんがお父さん と腕を組んで入って来ました。ゆっくり歩いて来ると中ほどに居た男の人がお姉ちゃ んと腕を組んで歩きました。神父さんの前に来ると神父さんが2人に言葉を掛けてい ます。色々儀式をして指輪の交換、誓いのキスをしました。その後みんなが歌を歌い ました。の〜のには知らない歌だったので歌えませんでしたが結婚式は無事に終わり ました。披露宴までには時間があったのでみんなで写真を撮っています。由香里姉ち ゃんや両親がウェディングドレスのお姉ちゃんと一緒に撮っていました。の〜のと翔 も一緒に撮ってもらいました。ママとパパも一緒に撮っています。暫くすると係りの 人が来てみんなが披露宴会場に移ると、の〜の達は岡島のお姉ちゃん達と一緒のテー ブルです。
パパとママが2人に挨拶するとの〜のと翔も挨拶しました。テーブルにはお料理が並 んでいます。 「その節はありがとうございました」ママがお店を開く時、理容機器を安く買えたお 礼を言いました。 「いえ、大した事じゃないです。それより凄く流行っているそうですね。有希さんの 名前は今でも理容業界では有名ですからね。新郎は私の後輩で同じ会社の人間なんで すよ。有希さんのお店に機器を搬入した時一緒に行ったから覚えているかも知れませ んね」岡島のお姉ちゃんの旦那さんが笑いながら言いました。 「あっ、あの時来はった人?何か会ったような気がして何処で会ったか思い出せんや ったけど、あの時に来はった人やったん」ママが思い出したように言うと、岡島のお 姉ちゃんも笑いながら頷いていました。
会場が暗くなるとスポットライトが入り口を照らしました。音楽が鳴ってドアが開く と、由香里姉ちゃんのお姉ちゃんが真っ白のウェディングドレス姿で現れました。旦 那さんになった人はシルバーのタキシードを着ています。みんなが拍手をするとの〜 のと翔も拍手をしました。乾杯の時にはパパもビールの入ったグラスで乾杯していま す。の〜のと翔はジュースで乾杯しました。乾杯のあとパパはウーロン茶を飲みなが らお料理を食べています。 「パパ〜、今日からは由香里姉ちゃんのお姉ちゃんって言ったら駄目なん?」の〜の が聞くとパパは笑いながら 「結婚しても由香里ちゃんのお姉ちゃんやからかまへんで。でも、これからは絵里姉 ちゃんか矢島姉ちゃんって言う方がいいやろな」と言うと岡島の姉ちゃん達も頷いて いました。
☆
お正月が終わって6日からママがお仕事を始めました。でも日曜日なので明日の月曜 日はお休みです。の〜のと翔は今度の水曜日まで休みで木曜日から3学期が始まりま す。冬休みは夏休みより短いのであっという間に終わります。 お正月に貰ったお年玉はママに預けました。ママが銀行に貯金してくれています。翔 もママに預けて銀行で貯金しています。銀行以外にお部屋の貯金箱にも貰ったお小遣 いが入っています。の〜のも翔も欲しいものがあったら買ってもらえるのでお金はほ とんど使いません。翔の貯金箱はウルトラマンの貯金箱での〜のの貯金箱はピカチュ ーの貯金箱です。お部屋の貯金箱はほとんどが硬貨なのでちょっと貯まると重くなり ます。おばあちゃんのお手伝いやママのお手伝いをしてお小遣いを貰ったら翔にも分 けてやります。 「翔、翔にも半分やるからな」と言って貯金箱に入れてやるとありがとうと嬉しそう な顔をします。の〜のはそんな翔が可愛くていつも可愛がっています。
「お姉ちゃん、雪が降ってきたよ」の〜のがお勉強をしていると翔が部屋に入ってき ました。窓の外を見ると真っ暗になってすごく降っていました。お向かいの屋根は真 っ白になってガレージの上のベランダにも積もっています。暫く見ていると小降りに なってきました。 「雪ダルマ作ろうか」の〜のが言うと翔は嬉しそうに頷きました。下に降りるとパパ とおばあちゃんがお話をしていました。 「パパ〜、凄い雪だよ。雪ダルマ作っていい?」の〜のが言うとパパは笑いながら頷 き、の〜のと翔はフード付きのコートを着てパパと一緒に3階に上がりました。3階 のお部屋からテラスに出ると雪で真っ白です。少し明るくなって来て雪が止んでいま した。パパがお掃除用のデッキブラシを出すと翔と交代で雪を集めました。集めた雪 をパパが丸めるとの〜のと翔も小さいのを作りました。パパが作った丸い雪の上にの 〜のと翔が作った小さいのを置くと雪ダルマになります。パパが物置から炭の小さい のを持って来て目と口を作りました。おばあちゃんも窓から見ながら笑っています。
「お姉ちゃん、写真撮って〜」翔が嬉しそうに雪ダルマを見ています。の〜のがデジ カメを持って来ると、パパと一緒に雪ダルマの横に並びました。の〜のが撮ってデジ カメをパパに渡して翔と一緒に撮りました。今度はパパと一緒に並んでおばあちゃん に撮ってもらいました。 「そろそろお昼だよ。何を食べようか」おばあちゃんが聞いての〜のと翔がたこ焼き 〜と言うとパパが笑いました。 「たこ焼きだけでは足らんやろ。ママの分も作らなあかんし、カレーうどんを作ろう か」おばあちゃんが笑いながら言うとの〜のと翔もカレーうど〜んと言いました。 おばあちゃんがたこ焼きの生地を作るとパパが焼いています。その間にカレーうどん を作っています。 「よし、出来たで」パパが焼けたたこ焼きをお皿にいれ、ソースを塗っておかかと青 ノリを振りかけました。の〜のと翔がたこ焼きを食べるとパパも一緒に食べました。
「出来たよ〜」おばあちゃんがカレーうどんを持ってくると、の〜のと翔はタオルを 巻いてカレーうどんを食べました。タオルを巻いていないとカレーの汁が洋服に付く からです。カレーうどんを食べているとママと奈央姉ちゃんがご飯に来ました。奈央 姉ちゃんはお弁当だけど、カレールーをお椀に入れて出しています。ママはカレーう どんを食べました。奈央姉ちゃんはお弁当を食べるとママと一緒にたこ焼きを食べて います。 「あのね、パパに雪ダルマを作ってもらったよ」翔が嬉しそうに言うと、ママと奈央 姉ちゃんは一緒に見に行きました。 「いや〜、可愛いやん」奈央姉ちゃんが雪ダルマを見て言うと、翔は嬉しそうな顔で ママの手を引っ張り、雪ダルマと一緒に写真を撮りました。 午後から繭パパと繭ママが繭子、菜々美と一緒に来ました。繭パパはパパとお仕事の お話をしています。翔と菜々美はディズニーのアニメを見ています。の〜のと繭子は 少しだけお勉強をしました。繭子は翔の机を使っています。繭子が分からないって言 ってた所を教えてあげました。の〜のが2年生の時に習った所だったので知っていた からです。の〜のが分からない所はママやお姉ちゃん達に教えてもらいます。
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