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ちょーこのたてる物音に混じって、風の音がする。
自由で、何事にも捕らわれない旋律が。
時折、鳥もそれに参加する。
特別な、絶妙なハーモニー。
・・・・・・・・・・・・うん、知ってる。
多分、魂が覚えている。
――――――tu――――――
軽く、自分の声も上乗せしてみた。
―――――――――hu―――――
主旋である風を邪魔せずに。
息に近い音をそっと添える。
―――la―――――――――
―――――――ru ru―――――――
うん、いい具合かも。
楽しくなって続けていると、突然音を立てて障子が開かれた。
音に吃驚して硬直している僕には気付かずに、黒い髪した誰か―――――誰なのかは明らかだが―――――は、ちょーこの方に向き直る。
じっと見詰める視線をものともせずに、ちょーこはニコニコと御機嫌だ。
・・・・・・・・・ちょーこが人見知りじゃなくて良かった。
僕はこっそり胸を撫で下ろす。
さすがに初対面で泣かれたりしたら、その後ツライだろうし。
うん、第一印象は大事だよね。
グッジョブちょーこ。
僕がそんな事を考えている間にも、まだじーっと見詰めている。
僕と同じく、ちょーこの事が一番重要でなければいけないのだから、邪魔しちゃいけないだろう、多分。
ちょっとだけ、第一声に何言えばいいのかわかんなかったってのもあるけど。
やだな、ちょっとだけだって、ホントに。
まぁとにかくちょーこだろう。うん。
ちょーこの事を知らなければいけない訳で・・・・・・・・・
あれ?
はたと思い至る。
名前を教えなきゃ。
僕は今、この二人の名を知っているから落ち着いていられるけど、彼にとってはそうじゃない。
自分の名すら知らない状況での心理は、さっき経験したばかりなのだから。
よし、第一声は決まった。
まだその瞳の色を知らない、その背に向けて口を開く。
「その子は、ちょーこ」
覚えておいで?
大事な娘だから。
僕の名はその後でかまわない。
一緒に、守っていこうね。
よろしく―――――――――飛鳥。
「じゃ、自己紹介も済んだところで、お昼ご飯みたいだし行こっか」
この寺の構造はわからないけど、さっきからいい香りが漂ってきているので、そっちに向かえば間違いないだろう。
「ああ」
言わずとも、ちょーこを抱え上げている姿に笑みが洩れる。
どうやらかなり律儀な性格のようだ。
微笑ましくてクスクス笑っていると、怪訝そうな顔をされたけど、それも笑って誤魔化した。
「さっき・・・・・・・・・」
「ん?」
不可解な表情のまま、何か言う。
「さっき、歌ってたか?」
「えー?あぁ、うん」
それが何か?
問い返すとふいと顔を背けられてしまった。
「何でもない」
「ふぅん?」
その返しは本来気に障るものなのかもしれないけど、全然腹は立たなかった。
本来あまり気は合わなさそうなタイプだろうに、何だかとても好きになれそうな予感。
これも一種の刷り込みかなぁ?
楽しい毎日になりそうだと、僕は鴉さん曰くの愛想の良さで、ニッコリ笑って見せた。
私は惚れたキャラには問答無用で歌わせるようです(笑)
どのジャンルでも大体そう。
何ででしょう、私が毎日歌ってる人種だからでしょうか?