葦

 

 

 

 駄目押しのようなそれは、じわじわと俺に理解を強要する。

「お前は、ずっとそのままなのか。ハルヒの沸いた頭を冷ませる方法は」

 問えば、これは異な事をと言わんばかりに茶色い瞳が瞬いた。

「あなたに振られでもしない限りは。別れる事になれば、涼宮さんは僕への連結を止めることでしょう」

 彼女に振られたという感覚が残ってはいけませんから。現実味を伴わない、ほわほわとした微笑と口調。

「僕から切り出す事は不可能ですから、あなたの頭が冷えるまでですね」

 そうか、お前からしたら頭が沸いているのは俺の方なのか。

「そうしたら、お前はどうなる?」

「繰り糸の切れた神の人形は、ただの罪人に戻ります」

 あなたを愛する事は僕の咎なんです。脳内で再生される過去の古泉の声に、現在の能天気とも言える声が被さる。

「神のものに手を伸ばした、重罪人に、ね」

 ふわふわと、違う次元から見下ろしているような古泉を、俺は睨む様に見据える。

 

 

 だったら、俺の採るべき道は決まっているのだ。

 

 

 

「古泉」

「はい」

「俺が何も言わなければ、お前は本当にずっとこのままなんだな」

「ええ」

 軽く即答する古泉を睨みつけながら、俺はゆっくりと口を開いた。

 

 

それこそ、願ったりだ

 

 

 古泉の子供の瞳が、罅割れる様を幻視した。

 

 

俺が飽きるまで、ずっと俺の人形なんだろう?

 

 

 

 

 

 

 

 

アシ,あし(葦)
花言葉は

「音楽」「従順」「神の信頼」「後悔」

 

カッコ内の台詞は反転アリ。解釈は任せます。

後書き