Wind Climbing X
そりゃあね、確かに言ったのはオレだ。
『手を組むのはアンタの腕が治る、もしくはターゲットのプレートが手に入るまでの間』
って。
だから当然のこと。当然のことなのに―――
「私と組まないか?」
オレ以外の者に向けられたその言葉に、
裏切られたような気がした。
ターゲットであるトンパがどっちに逃げてもいいように、クラピカと2手に分かれて見張った。
結果、クラピカの方に向かったようだから、キルアの役目は無い。
驚いたのはレオリオだ。
クラピカが突然現れたかと思えば、彼とあまり仲が良ろしくないキルアまで別方向から出てきたのだ。
「キルア、猿使いの方は?」
「別にターゲットでもないし、放っといた」
「何だ、レオリオのプレートを持っているのだし、捕まえてくれれば良かったのに」
「そんなの契約外。何気に人使い荒いよな、アンタ」
どうやら組んでいるらしい。
「なんか、意外な取り合わせだな」
それが正直な感想。
「どーせ、これまでだしな」
どこか不機嫌そうにキルアがこたえる。
「アンタの腕も完治とはいかなくてももう支障なさそうだし、プレートも手に入れた。
これで契約終了。あとは勝手にオッサンとでも組んでろよ」
怪我したのかとクラピカに聞けば、まあなと返事が返る。
それよりも一気にまくしたてたキルアは、不機嫌というよりどうやら不貞腐れてるようで、何となく心情がわかってしまうオレとしては吹き出すのを堪えるのに苦労した。
「じゃあな」
「あ、キルア」
さっさと背を向けたキルアをクラピカが呼び止める。
「どうせだから残り4日、このまま組まないか?」
「え………」
しばらく沈黙。
「な、何で」
どもってるぞ、キルア。
「何故って、お前の戦闘力は役に立つ。お前になら安心して背を預けられるからな」
またもや沈黙。
「そ、そりゃアンタにとっては有益かもしんないけど、オレにとっては別にどっちだっていいことだし。
えっと、だから、その……」
おーおー、動揺しとる。このガキにしては珍しく。
断じて、悪い手応えじゃない。
オレにも覚えのある見栄の張り方だ。
なのに。
「そうだな。引き止めて悪かった」
クラピカはそれだけ言って、キルアとは逆方向に歩き出してしまった。
「えっ……………?」
キルアはしばし唖然と見送って、フイと顔をそむけて、オレに言った。
「オッサン、アイツと組むんなら言っといてやるけど、
森の中でそいつに蜘蛛見せないようにするのは結構しんどいからな。
さもなきゃ見境無く森林破壊するから」
割と大きな声で言うところからして、クラピカに対する嫌味なんだろうな。
無論しっかり聞こえてたクラピカも黙っちゃいない。
「私からも他人の動作の機微を伺うのに自信を持っている若君に忠告させてもらおう。
私は『両利き』だ。」
「なっ…………つまり、もう完治してるってことか?」
「ほぼ、な」
しれっとして言うクラピカに、キルアは二の句が告げられない。
「お…………お前なんか嫌いだ!」
言う事が浮かばなかったのか、ガキ全開な捨て台詞でキルアは消えた。
「……なあ、騙すのは悪いんじゃなかったのか」
「騙してなどいない。人聞きの悪い」
「おい……おいって!」
オレに組もうと言った事など更々忘れたかのごとくに歩を進めるクラピカがやっと止まった。
「何だ」
「さっきの、もう1回誘えば来たと思うぞあいつ。ちょっとばかし意地張ってただけで」
「だろうな」
「だろうなって、だったらなんで―――」
「私にだって察する事はできる。できるが何故、役立たずと言われてまであっちを立てなければならない?」
台詞には怒気が混じってて。
ああコイツもガキなんだ、と実感。本当にプライドが高い。
「なあクラピカ」
「まだ何か?」
やっぱ忘れてんな。
「オレはお前からみて役に立つ人間じゃねえだろうけど、オレはお前に手を貸してもらえると助かる。
オレと手を組まないか?」
「…………………」
「おいクラピカ?」
「………………初めて、本当に初めてお前が年上らしく見えた」
「何でそんなに初めてを強調すんだよ…………。馬鹿にしてんのかテメエ」
クラピカは、微かに笑みをもらす。
「それで?」
「ああ?」
「お前のターゲットは何番だと訊いている。
ああ、それよりもお前のプレートを取り戻す方が先か」
「残り4日、よろしく頼む」
ま、こんなもんかな。突発的に入れた話としては。
珍しくレオリオにナレーターお願いしました。
レオリオイイ男!単品もしくはコンビとしてなら大好きなんだけどなぁ。
今回キルアが情けない。書きながら某コ○ルト文庫の某軍隊モノ小説、ラファエ○君を思い出してしまった。そうすると○ャッスルがクラピカ?それよかシ○ーの方がいいなぁ。(何の話だ)
次はクラピカ視点の予定。